二十二、柴田 公平(46) 刑事 1
二十二、柴田 公平(46) 刑事
家族と街を歩くのは久し振り。こんな平穏を感じるのも久し振りだ。ずっとこうやって生きて行くのが幸せなんだ。わかってはいるけれど、そんな生活は今更無理だ。俺は刺激がないと生きていけない。今でもそうだ。懐の拳銃がないのは落ち着かない。こんな職業を選んだ俺はどうかしている。
彼は子供の頃、なんだかちょっと危ない刑事が活躍するドラマに夢中だった。やたらと拳銃を発砲し、拳銃を片手によく走るサングラスの二人組。撮影現場が家から近かったこともあり、その走りをよく実際の撮影場所で真似していた。
小学生の娘は彼にはあまりなついていない。実際の子供なのに、微妙な距離が埋まらない。
娘が生まれたとき、彼は仕事だった。入院中にも一度も顔を出さない。忙しいから仕方が無い。彼はいつもそう自分を納得させてきた。もちろん本音は別にある。一人娘の行事には一切参加したことがない。これからもきっと、結婚式にさえ出れないんだろうと感じている。
決まった休みはあっても、きっちり休むことができない。急な呼び出しは日常化。娘との約束を果たせたことはない。五歳の頃まで、娘は彼を父親と認識してはいなかった。たまに遊びに来るおじさんだと思っていたようだ。幼稚園でお父さんの絵を書きましょうと言われ、うちにはお父さんがいませんと言ったそうだ。幼稚園の先生は事前に園児の家庭環境を調べていたので驚いた。そのクラスに両親の揃っていない家庭はなかった。彼はその現実を後で聞き、ショックを受けた。それでも仕事を優先してきたのは、この仕事が天職だと信じていたからだ。娘との関係は時間が解決してくれると考えていた。しかし、今になってもまだ、その距離は遠い。
妻が彼の手を握っている。妻との関係は良好のようだ。




