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二十一、長谷川 今日子(26) 主婦 1


 二十一、長谷川 今日子(26) 主婦


 パパが買ってくれた高級車は、この街では運転し辛い。けれど、みんなの視線が気持ちいい。

 彼女の生まれはフィリピン共和国。十代で結婚をして日本国籍を取得したのは二年前。子供は四人いる。七歳の長男と六歳の長女は家でお手伝いさんと留守番をしている。今は四歳と三歳の娘を保育園に送りに行った帰り途中。これから車を駅の駐車場に停めて電車でアルバイト先のホテルに向かう。

 駐車場に停める理由はいくつかある。娘を迎えに行くときに必要だから。ホテルの駐車場は高くつくから。アルバイトに高級車は似合わない。日本の電車は居眠りができる。

 彼女の旦那は六十歳を超えている。出会ったときにすでに定年間近の年齢だった。もっとも自分の会社を経営しているので定年なんてないのだけれど。

 そんな旦那に彼女は買われた。女好きの金持ちが集まる嫁探しのツアーに参加をし、若くて整った顔立ちの彼女を選んだ。彼女に選択の自由はない。親が勝手に決めてしまう。それでもいい。お金がもらえればなんでもいい。結婚なんてそんなものだと感じていた。

 私は幸せ。本気でそう思う。パパとの出会いはお金だけど、そんなの関係ない。愛を感じるきっかけは色々。私の場合はお金だったけど、今は本気で愛している。パパだってそうだ。お金を出していたときにはなかった愛を、今では確かに感じられる。

 彼女はアルバイト代の全てを実家に送金している。大勢の家族が今では大きな家で裕福に暮らしている。旦那からは毎月小遣いをもらい、そこからも送金の足しにしている。毎月貰っている生活費も、余れば送金する。自分のためにはほとんどお金を使っていない。しかし、旦那には毎月ブランドものの洋服やバッグをおねだりする。

 周りからなにを言われてもかまわない。どうせお金で買われたんでしょう? そんな声を聞いたことがある。それって、当たり前のこと。共働きをして完全に給料をわけている夫婦もいるかも知れないけれど、それって家族とは呼び難い。全てを共有できるのが家族。損得を考えず、悲しみも喜びも、怒りさえも分かち合う。私の家はそう。パパとだって、今はそう。

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