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 俺には一人の妹がいる。今年二歳になったばかりだ。親父もお袋もいい歳をして、って最初は思ったけれど、産まれた赤ん坊は最高に可愛い。

愛してるの意味を、妹から教わった。純粋にキスがしたい。抱き締めたい。そう感じたのは初めてだった。そこには当然、性的感情なんて微塵もない。純粋な愛の意味を知ったんだ。愛はいつだって、そこかしこに浮かんでいる。

 奈緒子に対してもそれは似ている。当然、奈緒子には性的な部分も感じるけれど、それ以外がとても大きい。奈緒子への愛は、不純と清純が入り混じっている。こんな感覚は初めてだ。俺は今まで、家族以外には不純な愛しか感じたことがなかった。

 奈緒子との出会いは覚えていない。保育園からの付き合いで、誕生日が三日違い。産まれた病院が同じだったからそこでもきっと顔を合わせていたはずだよ。親同士の付き合いがないからそれを知ったのはつい最近なんだけどね。俺たちはきっと、生まれる前から同じ空気を吸っていたってことなんだ。

 俺が初めて奈緒子を意識したのは、小学二年生の春だ。クラス替えで同じクラスになり、真ん前の席に奈緒子が座っていた。隣の女の子と話をしている奈緒子の横顔に惚れた。その瞬間、ドキッとしたのを忘れられない。こんなに可愛い顔を見るのは初めてだと思った。その日から俺は、奈緒子の横顔見たさに鉛筆や消しゴムを借りたりした。ちょっとしたことで肩を叩いては呼んだりしたんだ。テストの時間も好きだった。前から順番に配られるプリント。後ろから回収するときもまた横顔が見える。最高に幸せな時間だったよ。

 席替えは月に一回。寂しかったけれど、新たな発見に喜んだ。奈緒子は正面からも可愛かったと気がついたんだ。それだけじゃない。話し声も、歩き方も、笑っても怒っても可愛い。これが恋だって知ったよ。

 その一年間は幸せだった。俺の感情は、だだ漏れで、クラス中からからかわれた。けれどそんなの、どうでもいいと思えるくらい好きだった。奈緒子の方はそうではなかったようだけど、それはそれで仕方がない。恥ずかしい気持ちは誰にでもある。けれどそれは、嬉しいという気持ちに似てもいる。奈緒子は少なからずは喜んでいたんだ。

俺の幸せは、次の年に儚くも崩れ去った。クラス替えによって離れただけでも涙が出た。けれど同じ学校にいればいつでも会える。一日一回でも顔を見れれば満足できた。それでよかったんだ。なのに運命は残酷で、奈緒子は一週間後に引っ越した。突然の別れ。俺にはなんの連絡もなかった。三日後に手紙が届くまでは。

 手紙の内容は今でも丸暗記している。俺への感情と奈緒子の本音が記されていた。俺は一度返事を書いたが、それきりだった。奈緒子からの返事はない。どうして返事がこないのか、俺は奈緒子と再会をしてデートをするまで知らずにいた。そしてそのとき、俺って最悪の馬鹿野郎だったことに気がついたよ。

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