十九、米村 仁(19) 大学生 アルバイト 1
十九、米村 仁(19) 大学生 アルバイト
親父の車でアルバイト先のガソリンスタンドに向かう。夜には彼女と三度目のデートを約束している。今夜こそはとの気持ちが高鳴る。
車の中ではいかしたロックンロールが流れている。純粋に楽しい音楽が好きだ。踊れて笑える音楽。それがロックンロールだ。
彼はアルバイトをしながらバンド活動をしている。売れないバンドマンだ。高校生の頃に始めて、今では週に一度はライヴショウをしている。客はほとんど入らない。来るのは身内ばかり。それでも続けられている理由は一つ。メンバーの一人が経営しているライヴハウスを使用しているからだ。チケットノルマはなし。ちょっと名の売れたアマチュアが集まるイヴェントの前座。ファンを奪い取ろうと意気込んではいるが、前座の時間に集まる客は少なく、ちっともファンが増えていかない。
俺は絶対売れてやる。俺の作る歌に間違いはないんだ。音楽って、感情だと思う。俺の感情を吐き出す。受け入れられなくてもいいんだ。こんなバカがいることを、少しでも多くの誰かに楽しんで欲しいだけ。
彼のバンドは三人組。ギターとベースとドラム。みんなが歌を歌う。曲作りは主に彼が担当する。作詞も彼の感情を優先する。
思いは吐き続ければきっと現実になる。今日だってそうだ。ずっとずっと大好きだったあの子と結ばれる。
あの子も十九歳。大学の同級生で、去年の春に十年振りの再会を果たした幼馴染みだ。彼にとっては初恋の相手でもある。
俺はずっと奈緒子が好きだった。あいつだってそうだと言っていた。それなのに、やっと漕ぎ着けた初デート。奈緒子はキスさへ拒んだんだ。二度目のデートもそうだ。今夜こそはとそんな壁を飛び越えてエッチがしたい。不純な気持ちからじゃなく、清純にそう感じている。愛の表現としてのエッチがしたいんだ。他の女とする自慰行為とはまるで違う。俺は思うんだよ。どんないい女とエッチをしても、愛がなければ自慰と同じだ。二人組で自慰をしているだけなんだ。自己満足のスポーツとよく似ている。技や耐久、表現や感度を競い合う。俺がしたいのは、感情を剥き出しにしたエッチだ。この愛を、感じて欲しい。奈緒子の愛を、感じたい。




