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数分間のマラソンの後、恐怖が薄れていくの感じる。ゆっくりと歩調を緩め、街に溶け込む速度で歩いていく。ここがどこだかわからない。なにから逃げていたのかもわからない。意味もなく走るのは気持ちがいい。しかし今、その足が止まる。恐怖が消えると、走る意味がわからなくなる。なんだか無意識に振り返り、そこに誰もいないのを確認して安心する。なんだこの感覚は? 以前にも味わったことがある。何度も味わっている。これが俺の仕事? そんな言葉が頭に浮かぶ。妄想を振り払い、行くあてもなく真っ直ぐに歩いていると、相変わらずの視線を感じるが、なんだか心地がよい。以前から自分はこの視線の中で生きていた。そんなことを感じながら、気分よく鼻唄を奏でながら歩き出す。
街のざわめき。背後から近づく騒音に彼は気がつかない。恐怖もなにも感じない。今の彼は、視線を感じる自分に酔っている。
ドンッ! の衝撃に車道へと突き飛ばされた。痛みを感じる前に、周りからの悲鳴で耳が痛くなる。あれ? どうして俺がここに? 彼の記憶が戻った瞬間、グチャっと頭が潰れて即死だった。事態を把握したトラックが、慌てて急ブレーキをキィーキィーいわせながらも突っ込んでしまった。悲鳴とざわめきが街を包み込む。




