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 産まれたときも彼は特別じゃなかった。彼には兄と姉がいて、三人目の彼に対する両親からの喜びは薄かった。普通の感動はもちろんあったが、長男長女に対する感動には及ばない。兄と姉は年子だったが、彼とは六つも離れている。両親は彼を愛する気持ちと同様に、彼の面倒を見ている兄と姉に強い愛情と誇りを感じていた。それに加え、後に問題はなかったものの、検診で兄は関節の硬さを指摘され歩くことができなくなると脅され一年間も特別な病院に通っていた。姉は小学校の尿検査で腎臓に問題が見つかりこれもまた一年間通院した。その他にも上の二人には様々な問題があったが、彼には一切の問題がなかった。それはとてもいいことだけれど、どうしても印象が薄まってしまう。

 保育園でも彼は普通でなんの問題もなく卒園した。呼び出しの多かった兄、人見知りが激しく心配された姉のように先生たちへの記憶にも薄い。

普通でいることが悪いわけではない。ただ、彼の説明をすると、普通という言葉しか見つからない。ここで記すエピソードは昨日の彼女との想い出しか見つからない。今日という日が過ぎ去れば、彼の物語も大きく盛り上がっていくかもしれない。彼女とのこれからを考えればきっとそうなっていることだろう。休み明けの彼の反応と行動が楽しみだった。その後の展開もまた、なにかが起こりそうな予感でいっぱいだった。

 しかし、背後からやってくる騒音がそれらを全て掻き消した。歩道を歩いていた彼と母親は暴走するパトカーを横目でやり過ごす。

 危ないわね。なにか事件かしら? そんな想いで彼の腕を掴む母親。

 彼はそんな騒動には無関心で、母親の気遣いにも無視をして腕を大きく振り動かす。

そのとき背後から近づいてくる暴走音に二人は気づかなかった。

 あっと思う間が彼にはなかった。痛みを感じず、彼はバイクに轢き殺された。

 あっと思ったときにはすでに背後からやってきた暴走バイクに彼は轢き殺されていた。母親の悲鳴は、そのまま走り去るバイクの背中には届かない。

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