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十一、河合 元気(9) 小学生 1

   十一、河合 元気(9) 小学生


 休みの日は必ずしも全ての人にとって嬉しいものではないようだ。母親に連れ立って買い物に来たけれど、彼の気持ちは何処か別に向いている。

彼は小学生。浮かない顔をして母親と手をつないで歩いている。学校に行きたい。会いたい子がいる。学校は休みでも春休みの今日はキッズクラブが開いている。あの子はきっと、今日もいるはずだ。母親の仕事の都合らしいけれど、そんなことは子供達には関係がない。そこに彼女がいるのなら、ただ会いたいだけだ。

 とはいうものの、彼は彼女とまともに話したことなんて一度もなかった。いじめというほどではないけれど、たまにちょっかいをだしては嫌われる。そういう関係だった。そう、昨日まではだが。

 春休みの今、キッズクラブに通う子供は少ない。普段の半分程度だ。彼も本当は行きたくなんてなかった。家にいるか、公園で自由に遊んでいたかった。彼女はいつも本ばかり読んでいるし、他の友達は誰もいない。休みの日のキッズクラブなんて退屈しかないと感じていた。

 けれど今日は違う。どうしても行きたい理由がある。彼女に会いたいんだ。一緒に遊びたいからとか好きだからとかそんな理由じゃない。昨日のキッズクラブで二人は初めて仲良くなった。そして彼は、一日でも長く彼女と一緒にいたい理由を見つけてしまったんだ。

 昨日は雨降り。いつもの彼は外で暴れる。彼女はいつも通り部屋の中で読書する。彼女とは一度も同じクラスになったことがない。三クラスしかないのに、毎年のクラス変えなのに、三年間別の教室で過ごしてきた。四年目もまた、同じクラスにならないことが決定していた。それは彼女だけが知っていたことで、彼は昨日になるまでは想像すらしていなかったことではあるのだけれど。彼にとって、昨日までは、彼女と同じクラスにならないことはどうでもいいことだった。いつも本ばかり読んでいて暗い彼女に興味なんてわかなかった。たまのいじめといっても、好意の裏返しなんかではなく、単純に地味な彼女への無意味で少し残酷なちょっかいに過ぎなかった。それは彼にとっての身勝手な言い分ではあるが、彼女もあまり気にしてはいなかった。嫌いではあっても、甘固いニンジンを毛嫌いする程度だった。お互いに、ほんの少しでも意識をする存在ではなかったというわけだ。

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