十、大山 登(19) 無職 1
十、大山 登(19) 無職
暇な人間はどこにでもいるもので、そういう人間がほんの少しの出来心で悪さを始め、抜け出せなくってしまう。よくいる中途半端な悪者。それが彼だ。中途半端な彼は、一人ではなにもできない。いつも相棒と一緒になって悪さを重ねてきた。
彼の中途半端さは、幼い頃から変わっていない。なにを始めても途中で投げ出し、家庭でも学校でも除け者扱いされてきた。中学の同級生に、彼を覚えている者は少ない。街ですれ違っても、彼だけが気づき、向こうからは決して声をかけてはもらえない。一度彼の方から声をかけたことがあるが、はぁ? 誰だよ? なんて返され、それ以後は気がついても声をかけたりはしていない。それでもいいんだと彼は思っている。自分には相棒がいる。こうして毎日を楽しんでいるんだと、心から思い込むようにしていた。
友達からだけではなく、家族からも相手にされていない。当然だが、生まれたときから今のような関係だったわけではない。生まれたときの彼は、とても可愛かった。街を歩けば誰もが振り返り、中にはこんなに可愛い子は見たことがないと一度通り過ぎてから走り寄ってくることもあった。家族にとっても自慢の息子だった。三世帯で暮らしていて、彼は唯一の存在だ。甘やかされ過ぎた結果が、今に至る。特に一緒に暮らしていた母親方の祖父母の甘やかし方が異常だった。彼が欲しがる物なら、食べ物やおもちゃだけでなく、お金でさえも与えてしまっていた。そんな彼だったが、学校では根暗で友達がいない。理由はわからないが、そんなことは気にしていなかった。彼自身は気がついていなかったが、その容姿と、家庭環境が原因だった。小学生の頃の彼は、芸能事務所に声をかけられるほどに成長していた。祖父母からの資金援助もあり、同級生たちが手に入れられないカードやゲームをいっぱい持っていた。少し前の時代なら、人気者になれたかもしれないが、彼の時代は違っていた。生徒からチヤホヤされることはあっても、その日限り。保護者や先生からの圧力が強く、彼は半分いじめ状態だった。しかし、祖父母が元気だった頃は良かった。家に帰れば十分に甘えられたからだ。まず始めに祖父が死に、翌月には祖母も死んでしまった。二人ともが同じ箇所の癌だった。ちょうどその頃から、彼の顔が変化を始めた。歯が抜け始め、大人の歯と入れ替わる度に顔が不細工になっていく。その度に学校でも家でも存在感が薄くなる。祖父母がいないので自由なお金も与えられなくなり、見た目も悪くなる一方で、気がつけば、いじめさえされない存在になっていた。学校だけでなく、家でも。その理由は、彼の中途半端さにあるのだが、彼は気づかない。やることなすこと中途半端なのは、子供なら当然のことだ。そうやってなにか一つを探し求める。それでいいと思う。しかし彼は、それをしなかった。ちょっとの挫折で諦める。まぁ、心底の半端人間ってとこだ。高校はなんとか卒業したが、その後はフラフラ。アルバイトはしても、長続きしない。それでも彼は、日々に満足していた。なぜなら、今の相棒と出会えたからだ。




