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俺と彼女の出会いは遠い街。ゆっくりと休みたい日、俺はこの街を出て行く。こんな商売をしていると、当然この街でゆっくりなんてできない。
彼女の方から俺に話しかけてきた。俺のことを全く警戒していない。どこかの刺客でないのは確かだった。話の内容は他愛のない世間話。俺は即、恋に落ちた。
早く家に帰りたい。今日はもともと休みの日だった。妻と出会った記念日だ。けれど今、俺は事務所で気不味い雰囲気の中にいる。ボスと女は睨み合ったまま。俺はどうすればいい?
ボスの携帯電話が鳴る。女はじっと睨み続けている。ボスの口調が荒げる。女から視線を離し、部屋を出て行く。俺は女と二人きり。話す言葉は見つからない。
確かに容姿だけを考えればいい女だ。けれど俺の趣味じゃない。なんていうか、心を感じない女だ。愛も平和も上辺だけ。この女にとっては、金や権力も上辺だけだな。なにを求めて生きているのか? 自分さえよければそれでいい。それって当たり前の感情だが、とてもつまらない。
俺の視線はずっと女に向けられている。しかし、俺の感情はずっと家族に向けられている。
彼の目が遠くを見つめていることに女は気がついた。今がチャンスだと感じたのか? 目の前のテーブルの大袈裟なクリスタルの灰皿に手を伸ばす。勢いをつけて振りかぶり、彼の頭を振り抜いた。大量に流れる血。呻く彼。頭を抱えて床を転げ回る。
女はそんな彼を無視して部屋を出て行く。
のたうちまわる彼の思考は真っ黒だ。痛い。それだけを感じながら、じわじわと力尽きる。不思議だが、彼の思考に家族の姿は浮かばない。親父の姿さえ浮かんでこない。ただただ痛みだけしか感じない。そんな苦しみの中、悶えながら死んでいく。




