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 今日はどこへ行こうか? まだ旅先は決めていない。とりあえず暖かい南方面に向かって走って行こう。

 彼の旅はいつも無計画だ。その日の気分のままに身を任せる。今日の気分は、穏やかな休日。久し振りの旅を楽しんでいる。

 彼がバイクでの旅を始めたのは、一人暮らしを始めてからすぐのことだった。当時勤めていた会社の先輩から二百五十㏄の街乗りバイクを売ってもらい、毎週のように旅に出ていた。基本的には男同士の二人旅、ときには先輩の彼女もついてきた。先輩の彼女が乗っていたバイクは彼の憧れそのものだった。先輩が乗っていたのは、どこでも見かけるつまらない箱型バイクだ。不釣り合いな三台でのバイク旅は、人目を引いて気分がよかった。といってもその中心は先輩の彼女だったのだが。

 そんな楽しい旅が終わってしまったのは、先輩達が結婚をし、子供ができたからだ。赤ん坊を連れてのバイク旅は、この国では難しい。

先輩の子供が生まれてからも、彼は旅をやめなかった。大抵は一人で、ときには別の友達を連れて。

 その友達は年上だけど仕事上は後輩という面倒な関係だった。彼はその友達と喧嘩をし、それが理由で会社を辞めている。

 会社を辞めた際に、お金に困り当時のバイクを手放してしまった。貯金なんてほとんどなく、一ヶ月後には家賃も払えなくなり、借金をするか迷った末にまずは身の回りのものを売ることにした。バイクは意外なほどに安値だったが、CDや本が高く売れ、次の会社が見つかり給料を貰うまでなんとか生き抜くことができた。

 新しい会社はこれまでになくいい会社だった。同世代は一人もいなくて寂しいが、仕事内容が楽で、給料がいい。残業はなく土日も休み。それでもきっちりとボーナスがもらえる。彼にとってこれまでで最高の会社だ。

 取り敢えず南に行くことに決めた彼は、信号を右折しようと交差点の真ん中で停車している。なんだか右側が騒がしいのを感じた彼は、早く信号を右折したく思い前から突っ込んでくる車の距離感を測っていた。タイミングを見つけたらすぐに渡るつもりだった。そこでじっとしていることが危険だと感じていたようだ。だったら右折にこだわらず真っ直ぐ進んでしまえばいいのかもしれないが、後ろから来る車とのタイミングを測るのは意外と難しい。もっとも、彼の頭の中にそんな考えはなかった。一つのことを決めたらそれしかできない。そういう人間は意外と多い。

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