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八、岩村 了(26) 会社員 1


   八、岩村 了(26) 会社員


 大きなアメリカンバイクで世界を旅するのが夢だった。彼は今、その一歩を踏み出している。貯金をはたいて買ったバイクは、彼の夢とは遠い国産バイクだ。旅をしているこの地も、国内だ。それでもこれが、夢へと繋がっていることだけは確かだと信じている。

 バイクの免許は学生時代に取っている。十六歳になってすぐ教習所に通い、翌月には取得していた。しかしまだ、手元にバイクはなかった。高校入学と同時に始めたアルバイトでは、思うようにお金は貯まらない。免許を取るのに二ヶ月分のアルバイト代が消え、友達や彼女との遊びでいつの間にか消えていくお金も多かった。

 高校三年の春、どうしても我慢ができなくなった彼は、中古のアメリカンタイプのバイクをローンを組んで手に入れた。即金で買うのが目標であり、そのためのアルバイトだったはずが、うまくはいかずに諦めることにした。ローンを組んで支払う方が彼には向いていると、自分で言い聞かせていた。つまらないプライドからのつまらない言い訳だ。

 けれど彼は、しっかりと三年間ローンを払い続けた。本当に向いていたのかもしれない。

今乗っているバイクは、そのときのバイクとは違う。当時のバイクは、ローンを払いながら改造をし、自分好みへと近づけていた途中、どこかの誰かに盗まれてしまったのだ。ローンが終わる半月前のことだった。家の玄関に停めていたのに、番犬もいたのに、誰も気がつかずに朝を迎えた。もっとも玄関に門なんてなく、誰でも出入り自由だった。番犬といっても老犬で、以前にも見知らぬ誰かに買収された経験があった。餌づけされ、自ら産んだ赤ん坊を盗まれたんだ。もっとも、一番悪いのは彼だ。鍵は外していたがハンドルロックをせず、他にもなんの対策もしていなかったのだから盗んで下さいといっているようなものだった。しかも近所には悪い連中が多く、彼の知り合いにも平気でそんなことをしでかす奴が多くいた。

 怒りこそ覚え、誰かれ構わず喧嘩を売り歩いた彼だったが、それでもローンを最後まで払い続けたのは立派だった。もっとも盗難保険にも入っていなかったので払わないわけにはいかなかったのだが、親に援助を求めることもなく、見ず知らずの誰かからも援助を求めたりはしなかった。

 彼が今乗っているバイクは、当時と同じ年式の同じアメリカンタイプのバイクで、同じ改造を施している。外装まで当時と同じにしている。彼は自分でバイクの色をピンクに塗装していた。

 どうしてそこまでこだわるのか、その理由は意外と単純だった。たまたま雑誌で同じ年式のバイクを見つけ、そのお店が家から近かった。ボーナスが入ったばかりで余裕もあった。これから暖かくなる季節を考えると、彼にとってはベストのタイミングだった。去年の暮れのことである。改造をして、春に旅をする計画を立てた。そして今、その計画を実行している。

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