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六、柴田 律子(45) 主婦 1

   六、柴田 律子(45) 主婦


 彼女は両手に買い物袋をぶら下げている。重たそうに右へ左へと交互に買い物袋を前に突き出すように歩いている。

 今日は朝から電車に乗って買い物に出かけた。今週末に主人の実家に里帰りする予定になっている。そのためのお土産をデパートで買ってきた。主人の実家はここから車で四時間の田舎町。お土産の中身より、有名デパートの名前の入った紙袋に大喜びをする。親戚へのお土産のついでに、自分の買い物も楽しんだ。洋服、化粧品、アクセサリーなどを買い込んだ。普段は近所のスーパーで済ませる食料品も買った。割高で高級品ばかりだけど、たまにはいいわよねと自分に言い聞かせ、贅沢を楽しんできた。

 彼女には息子が一人いる。今年度から中学二年生になる彼は、反抗期なのかほとんど彼女と口を聞かない。たまにだけど顔に傷やアザをつけて帰ってくることもある。喧嘩をしたの? の問いに答えることもせず、自分の部屋にこもり、そんな日は食事の時間にも出てこない。食卓にラップをしたお皿を並べておくと、夜中に部屋を出て綺麗に平らげている。ついでにお皿も綺麗に洗っている。

 息子の名前は竜兵。背が低くほんの少し太っている。クマのプーさんのようだと彼女には見えているが、当の息子は自分をピーターパンのようだと思っているようだ。細身という意味もあり、永遠の子供という意味も含めているようだ。まだまだ幼い自分に気づいておらず、大人にはなりたくないと感じているようにも見受けられる。

 彼女はそんな息子がいじめを受けていると考えている。本人に聞いてもなにも答えてはくれないが、それが答えだと勝手に思い込んでもいる。田舎でゆっくり、主人と三人で牧場にでもいって牛を眺めながら話をしようかと考えている。

 あの子が小さいときは毎年のように牧場に遊びにいっていた。田舎の家から牧場までは車で十五分程度だ。山の中にある空気も星も綺麗な牧場。牛の乳搾りをしたり馬に乗ったりして楽しんでいた。近くの小川でカニを捕まえたりもした。ヤギに葉っぱを食べさせようとして手を舐められたこともあった。あの子は田舎に行くといつも本当に楽しそうにしていた。それなのに、三年前から急に行きたくないと言い出した。さすがに小学生の子供を何日も一人で留守番させるわけにはいかず、無理やり田舎にまでは連れて行ったけれど、せっかく来たのにずっと家の中。どこに行こうと誘っても首を横に振り、結局は三年間、ついては来たが、田舎の家からは一度も外に出ることがなかった。

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