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瑠菜の初恋

 「社長、お客様です。」

 「はいはい、こんにちは。今回はどう……いった……。」


 手伝いが女を中へと案内するとめんどくさそうに仕事の資料を見ていた上代の表情が変わった。

 目の前にいた人物はもともと自分が誰よりも愛し、隣に立ちたいといつも思っていた人物そっくりで、もう長いこと会えていない人物だった。


 「姉を探してください。」

 「は?」

 「姉のコムを探してください。」







 「瑠菜さん、お客様です。あ、ペットは入り口につないでおいてもらえればありがたいです。」


 サクラは夫人と呼んでもおかしくないようなきれいなおばぁさんを一人招き入れるとソファーへ座るように案内した。

 仕事の途中だった瑠菜はリナに続きをやってほしいと頼み、メモ用紙やペンを持って夫人の前に立ってお辞儀をした。


 「こんにちは。今日はどのようなご用件ですか?」

 「こんにちは。きれいな場所ね。隅々まできれいに掃除がされているわ。」


 おばぁさんはキョロキョロとしながらそう言った。


 (優しそうではあるけど少し厳しい人かしら?お金がありそうに見えて安く出昔売られていた服やアクセサリーを身に着けている。)


 瑠菜はおばぁさんを見て思ったことをそのままメモに書き留めた。


 「お飲み物はコーヒー、緑茶、ジャスミン茶がありますがどういたしますか?」

 「コーヒーでお願いします。」

 「はい。では、嫌いな食べ物やアレルギーはございますか?」

 「あら、そんなことまで聞くの?」

 「お菓子などをお出しするので。もし言いたくなければ大丈夫です。」


 おばぁさんはサクラに聞かれて少しいやそうな反応をした。


 「そうね……ピーナッツはあまり好まないわね。」

 「承知いたしました。」

 「サクラ、ごめん。ちょっとかえにこれ渡して。」


 瑠菜は奥の部屋へ行こうとするサクラを呼び止めると、先ほど書いたメモを楓李に渡すように言った。

 サクラも「はい。」と元気に返事をして三人分の飲み物とおやつを取りに行ってしまった。


 「元気な子ねぇ。妹さん?」

 「まぁ、そんなところです。」


 瑠菜はいつも通りの作り笑いをしながらおばぁさんに言った。


 「お客様はとてもやさしそうで健康そうに見受けられますね。何か健康の秘訣とかってありますか?実は私よく体を壊してしまうので、教えてもらえると嬉しいです。」

 「それは、やっぱりストレス発散をしっかりしてできるだけため込まないことよ。」

 「そうですか。でもストレスってすぐにたまってしまいますよね。そういうときはどうするのですか?」


 瑠菜がそう聞くとおばぁさん今まで見せていた笑顔よりも妖美なものを瑠菜に見せた。


 「残念だけど、私はモノにあたってしまうわ。」


 おばぁさんの表情とその声に少し恐怖を感じる。


 「お待たせいたしました。飲み物、持って来ました。」


 瑠菜はこの時ばかりはサクラに救われたなと思いながらジャスミン茶を飲んだ。


 「それで、どんなご依頼だったんですか?」

 「あぁ、そうそう。実はね、犬を預かってほしいの。」


 あの子よとおばぁさんは外につながれてぐったりと寝転がっている犬を指さした。

 毛並みや毛色、耳の大きさなどからいろいろな犬種が混ざっていることは明確だ。


 「なんて言う名前のワンちゃんですか?」

 「え、あ……パピちゃんよ。」

 「パピちゃん……ですか。」

 「パピちゃんですか。かわいいですね。」

 「昔から買っている犬は全てパピって名前にしているの。死んじゃったら寂しくってね。」


 犬種とは全く合わない名前に瑠菜が疑問を持っていると、おばぁさんはうつむきながらそう言った。


 「旅行にでも行かれるのですか?」

 「えぇ、小さな小屋に置いて行くのもかわいそうだから。少し預かっていてもらいたくって。」

 「いつからいつまでですか?」

 「明日から一週間くらい。早ければ三日で迎えに来るつもりよ。」


 瑠菜の質問に淡々と答えるおばぁさんを見て瑠菜は疑問を持った。


 (一週間か、三日?何でそんなにあいまいな……。)


 瑠菜はとりあえずこのおばぁさんとは関わりたくないと思った。


 「犬を預ける施設ならここら辺多いと思いますが、そちらには?」

 「あんなところ、信用ならないわ。」


 おばぁさんはそう言うとサクラの持ってきたコーヒーを飲んだ。


 「そうですか。それならしょうがないですね。わかりました。明日から預からせていただきます。」


 瑠菜はそう言うとおばぁさんは書類にサインをしてそのまま犬を抱きかかえて帰って行った。

 白くなった髪が風になびくのもお構いなしに歩くおばぁさんの後ろ姿を見て瑠菜は少しため息をついた。


 「キレイな方でしたね。気品があって素敵な人。私もあんな人になりたいですね。」


 サクラと瑠菜ではモノの見方が違うようで、サクラにはすごくいいところの貴婦人にでも見えているのだろうと瑠菜は思った。


 「あの人、来るときもワンちゃんを抱っこしてた?」

 「はい、とても大切にされているのですね。」

 「……そう。」


 瑠菜は黄色のスカートをふわりと広げて部屋の奥へと入っていった。








 「犬を預かる?何でまた。」

 「メモで伝えた人の依頼でね。かえ、犬は大丈夫?」

 「動物全般は大丈夫だけど。ってか、いいのか?」

 「だから、明日はサクラと一緒に事務所に泊まるつもり。」

 「はぁ?」

 「僕も行く!」


 夕飯が終わり、ゆっくりとした時間に瑠菜が楓李に話をしていると、龍子と青龍が割って入ってきた。


 「リナも来るし、一人じゃあんたたちまで見れないわよ。」

 「僕ってそんなに手がかかりますか?」

 「四人はさすがに見れないわよ。」

 「楓李さんもくればいいじゃないですか。ね、行きましょう。楓李さん。」

 「うん、まぁ……。行くか。」


 青龍が楓李に詰め寄りながら頼み込んだ結果、楓李も一緒に行くことになった。


 「よっしゃ!サクラちゃんに報告してこよ。」

 「あ、おいこら!」


 ウキウキでサクラの部屋へと向かう青龍とそれを止めようとする龍子。

 それを見たリナはめんどくさそうな表情をした。


 「でもそのおばぁさんおかしくない?事件巻き込まれそう。」

 「まぁ、それは私も思ってるけど。一応引き受けたし。もう後には戻れないからね。」

 「履歴とかで危ない人って載ってないの?」

 「載ってなかったからな。出禁リストにも。」


 楓李はそれについては調べたらしく、リナにタブレットで出禁リストと履歴を見せた。


 「確かにいない。……あれ?でも依頼内容が同じ人がいるよ。」

 「それくらいたくさんいるわよ。」


 瑠菜に言われてリナは依頼内容をじっと見た。

 細かく見てもほとんど同じで依頼者の特徴も、おばぁさん、白髪、気品があるなど当てはまるところが多い。


 「瑠菜、やっぱりこの人だよ。名前を変えて来てる。」

 「私一回見た人の顔は忘れないのよ。あの人は見たことないけど。」

 「違う部署に通ってて出禁にされてる。今年の一月までの半年間しか来てないけど。」


 瑠菜と楓李はそれを聞いて顔を見合わせた。

 どちらも同じ、あぁ、そういうことかという表情を浮かべている。

 瑠菜が仕事を休み始めたのは去年の六月で復帰したのは今年の六月。

 見かけていないのも無理はない。

 おばぁさんからすれば新たにできた場所で偽名を使えば騙せると思ったのだろう。


 「お兄に電話してくる。」


 瑠菜はそういって自分のスマホを手に取り雪紀に電話をした。


 「お前よく気付いたな、というかハッカーのほうが向いてんじゃね?あるぞ、ハッカーの部門を専門にしてるところ。」

 「アハハ、僕を瑠菜の近くから追い出したいの?」

 「……まぁな。」


 楓李はリナにそう言った後で少し後悔した。


 「別に、僕の恋愛対象に瑠菜は入んないよ。どんなに優しくされても姉さんとか姉御って感じだし。うらやましいよね、恋ができるって。」

 「俺からしたらお前がうらやましくてたまんねぇけどな。」


 リナはため息交じりに言う楓李を人差し指を銜えながら首をかしげてじっと見た。


 「なんだ?」

 「なんで瑠菜のこと好きなんだろうって。瑠菜って別に好きな人いるし、楓李兄だってモテないわけじゃないでしょ?」

 「別にいいだろ。俺はあいつが好きで、あいつが笑ってるだけでいい。隣で守れるなら何の文句もない。」


 楓李がそう言うとリナは黙った。

 楓李も自分のことについてぺらぺら話すようなことはしないため、リナが次に言う言葉を待った。

 すると。


 「私もう寝るね。おやすみ。」

 「あぁ。」

 「おやすみ。いい夢見てね。」

 「あーい。」


 瑠菜は電話の内容をリナと楓李に言わず、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 楓李もリナも急に声をかけられてびっくりして、瑠菜がいなくなった後に大きく息を吐いた。


 「聞いてなかったみたいだね。」

 「あいつは気になるところがあるといつもの数倍は耳が悪くなるからな。」

 「ねぇ、二人のなれそめとか教えてえよ。」

 「……また今度。」

 「えー。今教えてよ。」


 楓李に文句を言うリナはいつも以上に子供っぽかった。

 楓李はそれを横目にこれ以上騒がれると瑠菜までここに来そうだと思った。

 それで困るのは楓李なので、リナの肩をがっしりとつかんだまま楓李は言う。


 「わかった。わかったから。じゃあ、泊まり込みが終わったらな。」

 「よっしゃ!じゃあ、約束ね。」

 「……そうだな。」


 リナが笑顔で自分の小指を楓李に押し付けると、楓李は指切りをしてあげた。










 次の日の夜。

 六人は泊まり込みのため、一匹の犬とともにいつも仕事をしている小屋に来ていた。

 犬は怠けているのか、はたまた動けないのか、飼い主であるおばぁさんに降ろされた場所から一歩も動こうとしない。

 瑠菜とサクラは小屋の中でも奥の方にある部屋で寝て、ほかの男たちは作業しているスペースで寝ることになった。

 サクラとずっと一緒にいられると思っていた青龍は文句をずっと言っている。


 「ソファー二つと椅子が大量にあるんだから寝れるでしょう?不便なのは強盗に鉢合わせするくらいだし、嫌なら早く帰りなさい。」

 「うっ、でも……わ、わかりました。」


 瑠菜に厳しく言われた青龍は少し悔しくなり言い返そうとしたが、瑠菜の目を見ているうちに速攻でつまみ出されそうな気がして言い返せなかった。

 小屋の外は山を下りることができれば人通りの多いところに出るが、それまでは真っ暗な道が続いていて遭難くらいなら普通にできそうだ。

 その結果、青龍はその場に残ることにした。


 「聞こえねぇ。奥の部屋ってキッチンを挟んだ向こう側のはずなのに。」

 「奥の部屋ってあったけ?」

 「ここの小屋の形的にはこの壁を挟んだところにあってもおかしくない……はず。」

 「行ったことないけど。」

 「もともと瑠菜とコムが使ってた部屋だな。男は絶対入れてもらえねぇし、侵入したらはいどころか空気にされるぞ。」

 「抹殺じゃん!」

 「だからここから……。」


 楓李が言うと、リナも青龍も嘘ではないなと思った。

 瑠菜ならやりかねないというのが本音でもある。


 一方、瑠菜とサクラはというと。


 「うわぁ。こんな部屋あったんですね。」


 サクラはふかふかのカーペットと二つ並んだ机やベッドを見てそう言った。

 いつも作業している部屋と比べると本当に同じ建物なのか疑問に思うくらい、天と地のような差だ。


 「パピちゃんは檻で囲ったし、まぁ、大丈夫でしょう。」

 「瑠菜さん、ここって何するところなんですか?」

 「ん?ここは、私の師匠が泊まり込みの依頼の時に私と一緒に泊まっていた部屋なの。結構すごいでしょ?」

 「すごすぎます。でも、いいんですか?私たちだけこんな。」

 「あぁ、男子たちはここのことは知らないし。入っても来られないから大丈夫よ。」

 「なんで入ってこられないって言いきれるんですか?」

 「ここ、トラップがあって、百六十九センチ以上の身長があると糸に引っかかって転ぶ上にブザーが鳴るの。まぁ、作動してるところは見たことないけど。」


 瑠菜はキッチンの布で隠された入り口から部屋の入り口までのところを指さして言った。

 瑠菜もサクラも身長が低かったため、トラップには引っかからなかったのだ。


 「徹底してますね。」

 「ドアを閉めることさえ気を付ければ中を見られることもないし。服、着替えちゃおうか。」


 瑠菜はそういって服を脱いでワンピースのような真っ白い下着姿になった。

 肌の色が少し透けていてエロい格好にサクラは見えた。


 「見えないからって……本当、楓李兄さんはどこが好きなのか。」

 「さぁ?かわいいとは言ってくれるけど、喧嘩ばっかりだし。好きなのかは微妙ね。」

 「……瑠菜さん、恋バナしましょう。」

 「いいわね。たまには。」


 瑠菜はそう言ってベッドに寝っ転がった。

 蜘蛛の巣やほこりが全く目につかないところを見ると、瑠菜が定期的に掃除をしていたのだろう。

 部屋はよく見ても隅々までピカピカだ。

 掃除をするところから始まると思っていたサクラは少し安心した。


 「瑠菜さんは、楓李兄さんのどんなところが好きなんですか?」

 「うーん、あきらめないところ?」

 「疑問形なんですね……。じゃあ、瑠菜さんは他に好きな人がいたり?初恋の人が忘れられないとか?」


 サクラが冗談のつもりでそう言うと、瑠菜は少し笑った。

 その表情は女の顔に見える。

 今までどんなにナンパされてもそこまで表情を変えたことがなく、楓李と話しているときでさえもここまでの色気のある少女のような瑠菜の表情をサクラは見たことがなかった。


 「うーん、そうだなぁ。気になる?私の初恋。」

 「はいっ!」

 「じゃあ、もう何年前になるかなぁ。まぁいいか。私が小学四年生の頃の話よ。」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 私が小学四年生の時、まだお兄と過去の会社とはそこまでかかわりがなかったの。

 ここの存在すら知らなかったわ。


 「いつも見てるよね。僕のこと気になる?」

 「え?あ、ごめんなさい。」


 ただただベンチに座ってぼーっと眺めていただけでその子のことはまったく気にしていなかったんだけど、その子は私にやさしい口調と声で呼び止めてきたの。


 もともとそこまで人とつるむ方ではなかった私は戸惑った。

 でも毎日のようにその子に声をかけられて、いつの間にかそれだけが私の楽しみになった。

 一か月くらい、その子と夕方ごろ一緒にいるって言うよくわからない時間が過ぎた。

 まぁ、そんな楽しい時間は長くは続かなくてある時からその子は来なくなったんだけどね。

 周りの、その子がよく声をかけていた人たちは病気だって教えてくれたけど、名前も知らないからそれ以上どうしようもなくってそのまま疎遠になっちゃったの。


 そしてその次の年くらいにお兄にここへ連れてこられて楓李やあき、こはくって男の子に会った。

 特にこはくって人が公園に来てたとか病気だったりとか重なる部分が多いと思ったの。


 それから、五年間くらい私もこはくに猛アタックして、半年間付き合った。

 それが私の初恋かな。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 瑠菜がそう言い終わるとサクラはわぁっと歓声を上げた。


 「すごいですね。運命みたいです。でもなんでそんなに時間があって半年だったんですか?」

 「病気で死んじゃったの。付き合ってる間は私が病院に通ってあってたから、デートって言うデートもしたことないしね。ずっと断られててやっと付き合えたから、それでもうれしかったけど。」

 「……すみません。」

 「何謝ってんのよ。」


 瑠菜はニコッと笑ってそう言ってサクラの頭をなでた。

 瑠菜にとってこはくとの恋はよい思いで終わっていてこれ以上どうすることもできないし、今となってはこれでいいと思っている。

 これ以上続かなくてよかったと思う。

 サクラが言ったように運命の出会いで一緒にいられただけでも幸せだった。

 瑠菜の中ではそれが一番安心した答えだ。


 「なんだか、本当にすごいですね。瑠菜さんって。」

 「そう?まぁ、私も話したらスッキリしちゃった。聞いてくれてありがとう。」

 「こういう話は楓李兄さんにはできないですからね。って言うか、しちゃだめですよ!」


 瑠菜はサクラに言われて声を出して笑った。


 「そうなのよ。興味がないとは言われたけど、さすがに言えないわ。」

 「めっちゃ怒り出して大変なことになります。」

 「まぁ、私が好きなのはその時に会った男の子なんだけどね。」

 「?こはくさんって方じゃないんですか?」

 「うーん。こはくはどうも大人っぽい気がしてね。一年じゃそんなに性格は変わらない気がするの。」


 瑠菜はそう言いながら首をかしげて笑った。

 子供っぽい男の子と、自分を子ども扱いするこはくはどうしても同じ人に見えない。

 成長期で、雪紀からいろいろ教わっていたとしても瑠菜は腑に落ちないと思っている。


 「楓李兄さんって瑠菜さんと初めて会ったときどんな感じだったんですか?」

 「え?あー……うん。今と変わらず……いや今よりぶっきらぼうだったわね。しゃべらないし、笑わないし。本当に淡々と仕事をこなしているような人。」

 「想像できますね。」

 「ただ不器用だっただけなんだけどね。」


 サクラは七夕祭りの準備で楓李が真剣に作っていた飾りに瑠菜が手を加えてやっと形になっていたのを思い出した。


 「細かい作業とか苦手ですもんね。」

 「まぁそれもだけど、人付き合いもね。」

 「よくこの仕事をこなせましたね。」

 「お兄がいつも謝ってたわね。」


 瑠菜がそう言うとサクラは吹き出して笑ってしまった。

 雪紀がめんどくさそうに楓李の仕事のやり直しをしているのがたやすく想像できる。


 「サクラはどうなの?彼氏できそう?」

 「うーん……。できそうにはないですね。」


 サクラは瑠菜に聞かれて少し考えてから答えた。


 「でもこの前いい人いたって言ってたじゃない。」

 「振られました。」

 「青龍君とかは?」

 「あの人は私のことがどうしようもない人間だと思って手伝ってくれているだけです。」

 「お花くれたんじゃないの?」

 「元気づけてくれたのであって、たぶん特別な意味はないですよ。」


 瑠菜の中で青龍とサクラは両思いだと思っていたが、そうでもないらしい。

 青龍の方は好意を現しているが、サクラは全く気付いていなようだ。

 すべて善意でしてもらっているボランティアのようなものだと思っていてそこまで深くは考えていないのだ。

 瑠菜は教えようかとも思ったが、やめた。


(自分で気づくのも大切ね。)

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