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資本主義的ファンタ  作者: 通りすがりの初心者A
15/15

第一章第十四話:第一号

更新が遅れて申し訳ありませんでした。祝日の月曜日、パソコンの上で寝落ちするという人生初の経験をいたしまして、その代償として風邪を…

しかもこの第十四話、一度書き上げた14000字を全ボツ(白紙撤回)にするという大変な事がありました。うう…私の一週間…

誰か私に文才をっ!理論力をっ!国語力をっ!



orz



というわけで、第十四話、始まります。


PS.ほんのちょっぴり修正@10.3.30

 緩やかに意識が覚醒する。まるで、夢と現実の境目にいるような不思議な感覚。


 …夢を、みていた。兄とお母さんと戯れる、幸せな夢を。


 まどろみの中、ぼんやりと思考を巡らす。

 自分の置かれている境遇を知ったのは、確か、三年前の今日だっただろうか。

 二人は私に、私の立場をとても柔らかく説明してくれた。話の内容から受けた衝撃もあいまって、今でも鮮明に思い出すことができる。

 大方、恐怖感を与えないようにと気を回していたのだろう。だが、その時私も既に六歳。話の裏を読めないほどの馬鹿ではない。


 私は魔法が苦手だ。

 魔法の練習は小さい頃からずっとさせられていたが、それでも二人のとは比べものにならないくらいに貧弱で、弱かった。

 戦力には決してなりえない…それどころか、二人の足を引っ張ってしまうのは確実だろう。


 私は何の役にも立たない。むしろ、邪魔。


 二人はそんな事は一言たりとも口にしなかったが、それくらいなら私にだってすぐ分かる。彼らは私を子供扱いしすぎなのだ。


 …その事を理解したその日から、出来るだけ二人に負担をかけないようにと頑張った。

 二人に、見捨てられぬように。せめて、私にできる精一杯の事を。


 お母さんに言われたことを素直に聞くようにしたし、明るく振る舞えば二人が喜ぶことも知っていたから、いつも明るく快活に過ごすよう心がけたりもした。自分に関係した数々の疑問もあったが、二人が答えに窮するであろう質問は絶対にしなかったつもりだ。私の立ち位置は、無邪気で可愛げのある妹。それで十分なのだから。

 魔法だって、少しでも上達するように、少しでも二人との差を埋めるためにと一生懸命練習した。魔力の使い過ぎで吐き気を催した事は一度や二度ではない。もちろん、全て抑え込んだが。


 思えば、私は心の底から怯えていたのだろう。二人が私一人を置いて、どこかへいってしまうのではないかと。毎朝の挨拶が出来なくなる日が来るのではないかと。九歳の今でも兄に抱きついて寝ているのは、それの裏返しの行為だと自覚している。


 だが、あの二人にそんな心配は必要なかったようだ。私は捨てられずに今日まで成長することができた。私の努力も無駄ではなかったようだ。


 意識がさらに覚醒してくる。徐々に五感が復帰し、視覚が目蓋ごしに眩しい陽光を捉えた。

 目をうっすらと開けると、そこには天井…ではなく、一対の金色の瞳が。


「おはよう、ウィスティー。」


「…兄ぃ?」


 どうやら、兄は先に起きていたようだ。上から覗きこまれている。


「おはようございます。」


 新しい日々が始まる。今日は、その一日目だ。

 窓から差し込む陽光は真っ赤で、門出にふさわしい爽やかな朝…


 あれ?これって夕日?もしかして、もう夕方?

 わわわ、今日がもう終わっちゃうよ!




 ◆




「ふう…。お前さんがリーザを嫁に貰ってくれれば、わしとしても万々歳なのだがのー。」


 我疑耳。


「…はいっ!?」


 こいつ、いきなり何を言い出すのだろうか?


「さっきから様子を見ておったが、お主もリーザは嫌いではないのじゃろう?リーザはまだ若いが、教養も胸もある。家事雑用だって全てこなせる。いい嫁になること間違いなし!どうじゃ、今なら安くしとくぞい?」


 …やべぇ。突っ込みどころが多すぎて反論できねぇ。

 とりあえず、深呼吸をしてクールダウン。こいつのペースに巻き込まれてはならない。


「却下。俺はまだ10歳だし、だいいちリーザは俺の母親がわりで、姉だ。それに近親婚なんてしたら、子供に障害がでかねないだろ。」


 よし、この調子。ちょっと心が動いたことは、こいつにだけはバレてはならない。

 …いや、ちょっと待て。こんなファンタジーな世界に、親近婚なんていう概念が、


「…リーザはお前に、一体どんな情操教育を施したんじゃろうな。親近婚など一般人は一生口にしない死語じゃのに、なぜお前さんが知っとるんじゃ。」


 あるらしい。ほっ。


「ま、安心せい。十歳といえばもう成人。身体的機能は成熟しとるじゃろ。しかも、確かお主ら三人は互いに腹違いじゃったはず。一代だけならば、遺伝的にもそれほどの問題はでまい。」


「ぶーっ!けほっ!けほっ!」


 飲みかけていた紅茶を噴射してしまった。

 腹違いって何!?半分義理ですか!?今頃になって義理設定っすか!?


「は、腹違いって!?そんな話は聞いてないぞ!?…さては、今でっち上げた嘘じゃないだろうな!?」


「嘘なんかついておらん。考えてみい、一人の女性が二十人も産めるはずかなろう。側室じゃ。側室。」


「…」


 カンガエテミレバ、ソウデスネ。

 今まで考えたこともなかった。


 ん…ってことは、俺は今まで、義理の姉や妹にあんなことやこんなことをしていたってことに…っ!?うぉぉぉぉっ…

 自分でも出処の分からない羞恥に身をよじらせていると、ニヤニヤした族長がさらに追い討ちをかけてきた。


「言っておくがの、領外へ出てしまったら、他のエルフと会う機会はそうそうあるものではないぞい?リーザも行き遅れたら悲しいじゃろうし、お前さんだって独り身の老後は嫌じゃろう?」


「……」


 なんという正論。反駁が思いつきません。


「それに、もしお前さんが他の奴とくっついたなら、リーザとは離れざるをえんじゃろ。きっと嘆き悲しむぞい?」


 もうやめて!私のライフはゼロよ!


「ああ、いっそのこと、リーザとウィスティーの両方を嫁にせんか?一夫多妻は一般的ではないが、族長たる父のわしが許すから無問題じゃ。いや~、まさに両手に花っ。男の浪漫っ。ええのぅ~、羨ましいのぅ~。」


 ぷちっ。


 何故だか分からないが、このエロオヤジに対して無性に腹が立ってきた。


(アドレナリン分泌量の増加を確認。攻撃モードに移行します。目標、正面一メートル。)


 二人が寝ている部屋は、確か俺の後ろに位置していたはず。非常に好都合だ。

 他の人には迷惑をかけないようにしないとな。


(殲滅開始。)


「もし子供ができたらわしに…ちょ、ちょっと待つんじゃ!早まるでない!こんな所で魔法はしゃれにならっ」


「ええぃ五月蝿いっ!一度死んでしまえ!【炎弾】!」


「むぅ!?【封殺】!」




 ◆




「ふぁ…あれー?わたしーのけーきはー?」


 ダメだこいつ。寝ぼけてやがる。

 ちょっと魔法で電流を…


「ふぃひゃっ!?…ぁ、あする?」


「ほら、さっさと起きて。俺もウィスティーも空腹でしかたないんだから。」


「うー…ん~、よく寝た。おはようございます。あれ?何で外が暗いの?」


「おそようございます、リーザ。巷では、今は夜っていう時間帯らしいよ?」


「…もしかして、一日中寝てた…のかな?」


 笑顔で肯定する。といっても、別に寝過ぎた事を責めるつもりは微塵もない。

 今はそれどころではないからだ。腹の空き具合が真剣にヤバイ。情けをかけてリーザが自発的に起きるのを待っていたら、文字通り日が沈んでしまった。ウィスティーなど、床の上でぐったりしている。


「寝起き早々で悪いんだが、食堂かどっかしらないか?ウィスティーがこの通りヘロヘロでさ、なんか食わせないと。」


「ぅぇぇぇぇぇっ。き、気持ち悪い…」


「わっ!大丈夫!?…うーんと、確か城の関係者用の食事処があったはずっ。お金とか要らないし、行けばすぐ食べられるよっ。すぐいく?」


「あ、行きたい行きたい!」


 床で死んでいたウィスティーが、一挙動で跳ね起きる。…十分、元気じゃないか。

 水を得た魚ならぬ、食を得たウィスティー。


「まてまて、流石にお前さんらを一般の食堂に行かせるわけにはいかんぞ。今夕食を用意しとるから、ここで食うんじゃ。」


 唐突に扉の方から、いまや聞き慣れた声が聞こえてきた。

 …ちっ。あのクソジジイめ、まだ生きてやがったか。


「おお、それは有り難い…って、お前、扉を開ける時に気配を消すのはやめようぜ。心臓に悪い。」


「父上ですか…いきなり話しかけないで下さい。ところで、その髪はどうしたんですか?少し焦げているようですが。」


 見ると、族長の長い白髪の一部分が真っ黒に焦げていた。非常に滑稽に見える。


 うん、どう考えても原因は昨晩の俺の暴走です。

 それにしても、よく髪が焦げたくらいで済んだものだ。後で高クラスの魔法を教えてもらおう。


「これかの?これは昨晩アス…」


 言ったらヤる。

 リーザとウィスティーに気取られぬよう、族長にそう殺気をとばす。


「…いや、なんでもないぞい。うむ。ちょっとボヤを起こしただけじゃ。」


「ボヤって…やはり、本格的な老化ですか。老害はさっさと御退場願います。」


 あ、クソジジイが崩れ落ちた。


「リーザ?すこーし言葉が辛辣すぎるぞ?アレでも一応は父親な訳だし…」


「いいんだよ、本当の事を言っただけなんだから。ほら父上、寝てないでさっさと持ってきて下さい。お腹が空きました。」


「うう…わしの苦労は一体…」


 ◇


「それで、お前さんらは外に出たらどうするつもりじゃ?」


 夕食のメインとして出ててきたのは、異常に柔らかい肉のステーキ。こんな高級品、前世でも食べたことがない。…ふぅ、幸せ。至福の一時。


 ちなみに、ウィスティーはもの凄い勢いで肉を貪り食っている。そんな姿まで可愛いので、俺の分を少し切り分けてあげる。もってけ泥棒!

 リーザは注意したくてうずうずしているが、視線で抑えておく。


「んー、今のところ何も決めてないが、定住だけはしたくないな。まったりとぶらつこうと思ってる。リーザとウィスティーは、何かしたい事はあるか?」


「う~ん…私は外に出たことは一度もないから、色々な国を見て廻りたい、かな。アスルのぶらつく案に賛成。幸いお金はいっぱいあるしね。」


 俗に言う世界一周旅行ってやつか。リーザも粋な事言うなぁ。


「やっぱりそうか…定住しても暇だしなぁ。ウィスティーは何かあるか?」


「ふぁ、ふぁたぁひもふぉれでひーと」


 …何やら、調子にのって肉を口に詰め込みすぎたらしい。口を膨らませて悪戦苦闘中だ。

 微笑ましいことこの上ない。


「…わしが言うのもなんじゃが、お主ら、超じじくさいの。」


「ほっとけ。ところで、詳しい段取りを全く聞いてないんだが。いつ出てくことになるんだ?それと、青晶貨は?」


「ああ、金は今渡してしまうぞい。さっき受けとってきたからの。出発は…そうじゃのぅ…できれば今晩かのぉ。」


「今夜ですか…随分と急ですね。といっても、準備するものもありませんが。」


 準備するもの、ねぇ…

 とりあえず、族長を脅して強奪できそうなものを頭の中でリストアップしてみる。直近的に使うであろう少額の金、移動手段、服に食料品、できれば魔法の指南書。地図は…そもそも存在するのかなぁ。

 問題は最初に行く町だ。勝手が分からない。一度町に入れてしまえば、ガイド役を探す事もできるのだろうが。


「引き止めたいのはやまやまじゃなんじゃが。まぁ、アスルがおれば大丈夫じゃろ。…おーい、こっちに来てくれんか~?」


「はい、只今。」


 ん?


「お主らに与えるのが金だけ、というのは少々父として不安なのでな。外の知識があるオマケを付けといてやったぞい。分からん事は、全部彼女に聞けばよい。」


「彼女?」


 猛烈に嫌な予感がする。これは、つまり…


「お申し付けの物をお持ち致しました、御主人様。」


 …やっぱりか。側室がいるくらいなんだから、そりゃ侍女も沢山いるわな。

 気を取り直して女の子を観察する。身長はウィスティーぐらいだろうか。俺たちと同じ白い服を着ている。ぴくぴく動く黒い三角の耳と、ゆらゆら揺れる黒い尻尾がとても可愛い。


 …耳と尻尾!?


「獣耳に尻尾って…まさか、獣人ですか!?」


 リーザが、目をまん丸にして固まっている。ウィスティーも両手がお留守だ。


「いかにも。こいつは、わしがこっそり匿ってきた獣人じゃよ。お前さんらにやる。ほれ、挨拶せんか。」


「あ、はい。御初にお目にかかります、ウィステアリア様、リーザ様、そしてアスル様。獣族のシルファと申します。本日付けでアスル様所有の奴隷となりました。精一杯お仕えしますので、どうぞ宜しくお願い致します。」


 そう言って、深々と頭を下げるシルファ。

 言葉が出ない。奴隷ってどういう…ああ、そういえばここはファンタジーな世界でしたね。奴隷制度だってあってもおかしくないか。


「うむ。お前さん達なら無駄な偏見もないじゃろうし、酷く扱うこともなかろう。なんでも雑用を押し付けて構わんからの、できれば売り飛ばさずに同行させてやってくれ。」


 ぽかーん。


 …ああ。このお節介ジジイめ。これは嬉しい大迷惑。


そうです。やっと始まりました。こんな展開を待ってたんです。(ぇ

一部作者の暴走が入ってます。ごめんなさい。



追記:

先日、とある小説の書き方講座を偶然拝見する機会があり、相当な衝撃を受けました。

真剣にプロットを練り直します。もう、最後までのプロットを作ってしまいます。

そもそも、見切り発車で書き始めた事に問題が…orz



お詫び:

誠に申し訳ないのですが、今週から来週にかけ、作者の生活環境が大きく変化致します。更新が途切れることはないと思われますが、多少の遅延が予想されます。御了承下さい。

といっても、待ってくれている人がいるかはとっても不安ですが…(´・ω・`)



宣伝:

 次の更新までには時間が空くかもしれませんので、電撃文庫から出版されている「ウィザーズ・ブレイン」というライトノベルをお勧めします。個人的な成分分析の結果は、萌え一厘、燃え四割、泣き三割、感動二割、意表を突く脚本一割です。

 え?いきなり何を言い出してるんだって?

 実は先日、引っ越しの準備中に埃を被ったこの第二巻を発見しまして、懐かしいなーと思いつつ読み直したら号泣してしまいました。それで、これは広めるべきだと。

 ああ、お願いですからこっちを変な目で見ないで下さい…


 ちなみに、本小説とは何の関係もありません。(殴


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