婚約破棄からの令嬢逃亡
乙女ゲームだとか悪役令嬢だとかのラノベを嗜んでいる人なら一度どころか数えきれないほど見たことあるだろう冒頭部。
見慣れすぎてて斜め読みどころかさらーっとスクロールで飛ばす人もいるだろう導入部。
タイトルそのままに多少肉付けしただけの文。文章とも言えない程度の文の集合体。
それでもよければどうぞ。
「公爵令嬢という身分を笠に着て下位の者をーーー」
「公爵令嬢の影に隠れ陰湿な行為をーーー」
「醜い嫉妬にかられーーー」
吐く息が白く身を震わす冷気が世界を覆い始めた年納めの月の初旬
王立学園の卒業パーティーが行われるホールで、王太子とその側近達による〈断罪〉が行われていた。
卒業生を見送るための選ばれた在校生、王都に住む主だった貴族や卒業生の家族が本日の主役である卒業生の入場を見守り、あとはパーティーの主催である王族の方々や国の重鎮の入場を待つだけという時にそれは起こった。
絵本から出てきたかのような輝く金髪に意思の強さを窺わせる碧眼の麗しい王太子殿下は、その美貌だけでなく聡明さや勇猛果敢なリーダーシップで貴族からも市井の者からも圧倒的な支持を受けていた。彼を支持しないものは私利私欲に走る愚か者とさえ言われるほどに。
常に笑みを浮かべているその顔に、見たこともないような厳しい表情を浮かべて彼は壇上に立った。
いや、学園に通っていた者や王城で見かけた者からすると、この半年で見慣れたものだったかもしれない。
その表情をさせるのは、王太子殿下とその側近達と共に壇上へと上がり、彼らに護られるように位置しながら王太子殿下の腕に怯えたようにすがり付く少女が絡んだときだけだった。
少女がさせているのではない。
少女が震え、怯え、涙しながらもけなげに堪え忍ぶ姿を見て、彼女にそのような思いをさせている者に対しての怒りや失望、侮蔑の感情がそのような表情を王太子に浮かべさせていた。
王太子達は少女を守るため、将来国を導く立場の者として、今日この日、この晴れの舞台で悪を裁くことに決めた。
そして行われた断罪。
壇上に立った王太子とその側近達は、悪である公爵令嬢とその取り巻きであり側近達の婚約者でもある令嬢達を名指しで呼びつけ、彼らが調べて明らかになった罪を並べ、彼女達が如何に非道で非情な憎むべき者達かを会場に集まった臣民に訴えた。
そして…
「婚約を破棄ーーー」
「貴族籍の剥奪ーー、平民としてーー」
「王太子の名においてーー、国外追放ーーー」
王太子の婚約者である主犯とされる公爵令嬢だけでなく、彼女の共犯とされた少女達も同罪であるとして国外追放の刑を言い渡された。
会場中が声になら無いよう声で引き吊るような音だけが響いた。
ここは王国。
貴族社会であり、王が国を治めている。
王が絶対とまでは言わないが、王の言葉は覆せない。
王でなくとも王族の言葉には重みがあり責任がある。
そして王太子は第一王子であり国王陛下の唯一のお子であり、ただの王子ではなく王太子である。
それは彼が次期国王として不足がないと国王も臣下である貴族達も認めたということ。
王太子の言葉はただの王子の言葉ではない。
私的な場での発言にさえ気を付けなくてはならない。
この場は学園の卒業パーティーで、学生のうちは多少の自由が許されているため勘違いする者も少なくないが、貴族は貴族、王族は王族だ。
卒業パーティーを迎える数日前に学園は卒業しているため、彼ら卒業生は皆、一人前の紳士淑女として扱われる。
王立学園の卒業パーティーのため王族の主催で開かれる。つまりは公的な場である。
卒業パーティーとは、学生としてではなく王族や貴族として社交界に出るための気持ちの切り替えができるかどうかを見る場でもあった。
学園では表向き身分は関係ないとされているが、それは王族や高位貴族による下位の者への横暴を防ぐための方便のようなものだった。
そもそも、学園の運営補助をする学生会が王族や高位貴族の子息子女が入学すれば自動的に在籍する時点で身分は確かに存在する。
言われずとも理解し察し適度な距離で適切に対応できるかを、学園の評価とは別に評価されているのが学園という箱庭だった。
高位貴族は幼い頃から当たり前のように試されているため学園入学以前に自身で察するのは当然のことで、下位貴族は親や教育係だけでなく親戚からもしつこく注意を受けているためまず間違うことはない。
それができなければ出来損ないのレッテルを貼られて未来は明るくないことを皆が知っている。そのまま社交界に出れば言質をとられ家にとって望まない未来が待っているとわかっていて放置する貴族はいない。いたとしても人知れずいなくなっているのが貴族社会だ。
はっきりと試されている等と言えないように卒業の時点で話せないように魔法契約が結ばれているが、教育をする過程で自分で気づけるように誘導しているのだから、気付けないのは無能さを露呈するだけだった。
王太子とその側近達は、自分達が正義であると信じて疑わなかった。
国民がいてこその国であり、国があってこその王であり王族であり貴族であると物心がつくよりも前から教えられてきた。
臣民にへりくだることは許されないが、身分を自分に都合良く悪用する者達を罰し、彼女達に悪意を向けられるか弱い少女を助けるのは自分達の使命であり国のためでもあると信じていた。
「ーー承知しました。婚約は家と家の契約ですので、後は王家と当家で処理なさってくださいませ。御前、失礼いたします。」
碧い目を憎々しげに向けられながらも表情を動かさず、公爵令嬢は長い睫毛を伏せ、一分の隙もない美しいカーテシーをした。
それに倣って後方に控えていた令嬢達も婚約破棄を了承する意を口にすると礼をし、堂々たる姿で会場を出る公爵令嬢の後についていった。
彼女らの後ろ姿は、息を詰めていた卒業生達やその親族から無意識にため息がこぼれるほどに毅然としていて美しかった。
王太子とその側近達は想定していなかった事態に少し口を開いてその後ろ姿を見送った。呆然としていたと言っていいかもしれない。
この後、醜くも反論してきた令嬢達に最後通牒を突きつけるために証人も用意していた。その証言が事実かどうかの確認はとっていないが、彼らの求める真実を語るのだから間違いがなかった。
控えていた証人達も戸惑いの色を隠せず去っていく令嬢達の凛とした後ろ姿と少し間の抜けた表情で固まる王太子と側近達+αをチラチラと見て不安そうにしていた。
彼らが意識を取り戻したのは王太子の腕にすがり付く少女が彼らに話しかけてからだった。
「わたし、あやまってもらってないわ」
場違いにも程がある。
壇上にいる者以外の心は貴族や子息子女だけでなく給仕や警備の騎士、更には令嬢達の悪事の証言をする予定だった者達に至ってまでもひとつだったが、この場で最高位に当たる王太子に物申せる立場の者はその場にはいなかった。
その後、慌てた学園関係者からの懇願で予定を繰り上げて入場した国王陛下、王妃殿下、その側近や国の重鎮が王太子とその側近達による正義の名の下に行われた断罪と悪の追放というふざけた愚行を聞いて血圧を乱高下させ、卒業パーティーどころではなくなったのは誰もが仕方がないことだと納得するしかなかった。
そのままパーティーを続行されても困惑しかなかっただろう。
とはいえ、後日改めて開催された卒業パーティーの出席率は低く、出席した者達も複雑な思いと不安を胸に笑顔を貼り付けていた。
領地持ちの令息は領地に戻り実践教育が始まるし、卒業後すぐに婚家に入る令嬢も多い。
そうでなくとも学園を卒業すれば社会に組み込まれるため即座に動かなくてはならず、そういった場に出席する暇がなかったのだ。
王都に住む者や慌てる必要のない者、王城その他関係機関への就職予定者などは打診という名の強制参加で、嫌々ながらもその必要性も理解していたためとりあえずの形が保たれた。
仮令卒業生よりも臨席する貴族の方が多かったとしても。
仮令卒業パーティーに出席させられた下級文官がいないせいで王城の機能が一部停止したとしても。
誰も参加したくないとわかっていても、形として卒業パーティーの仕切り直しがされたという事実が必要だった。国としての体裁を守るために。
そのために国民が必死で納めた税金を湯水のように使うことになったのは、比較的善良な部類の国王や良識ある貴族の胃を痛めた。
王太子の側近達が再教育の後にその地位を剥奪され本来の地位からは考えられないような部署に配属されたことは皆が呆れつつも妥当と納得した。
お勉強ができても剣の腕がよくても国を動かすのに必要なものを持っていないのがわかっていて重要ポストに就けるわけがないのだ。
諸々のことはもちろん、壇上に上がる立場にない者まで立ち、更に国王陛下が入場したにも関わらず頭も垂れず立ったまま。そもそも国王陛下を見下ろす位置にいることが不敬であり、色々と理解していないのは一目瞭然だった。
王太子が廃嫡も廃籍もされず、王太子の地位を一旦白紙に戻すという処置が取られたことも、不満や不安はあれども仕方がないと受け入れた。
国王には子が元王太子1人しかおらず、王弟の唯一の子は元王太子の側近の1人で、王妹は数人の男児を生んでいるが隣国の元第二王子である公爵に嫁いでいたためだ。
元側近は論外だが、隣国王家の干渉を受けるわけにはいかない。
それだけならば再教育や他の優秀な者達で周囲を固めて次期国王を傀儡にするなり、現国王が長く王位に就いて息子を飛ばして孫に譲位するという手を取るとして有耶無耶にすることが出来た。
あの会場にいた者に箝口令は敷かれたものの、人の口に戸は立てられないのはいつの世もどこの世界でも共通で、大っぴらに広がるかじわじわと水面下で広がるかの違いでしかなかった。
それでも、表向きになかったことにすることはできた。
王太子やその側近のあれこれは隠せないものの、長い目で見れば若気のいたりとして済ませることが出来たはずなのだ。
が、ある事情によりそれができなくなった。
令嬢達の失踪である。
あの前代未聞の珍事の後、国王陛下以下国の重鎮は邸宅へは帰らず、今後の対応や罰をどの範囲まで広げるか等の相談を夜が更けるまで話し合っていた。
会議は限られた者しか立ち入ることが許されない王城の奥まった場所で行われていた。
国王陛下の信ある者は文官であれば会議に参加しており、武官であれば騒ぎの鎮圧に動いていた。
おバカな正義を振りかざした者達の婚約者である令嬢達の父親も当然ながら国の重要な立場にある。
つまり、誰も邸宅に帰っていなかった。
場所が場所なため、彼らの側近や執事の出入りも禁止されていた。
それが全ての明暗を分けたといってもいい。
パーティー開始前の珍事件を受けて颯爽と会場を後にした令嬢達はタウンハウスにも戻らず、忽然と姿を消したのである。
彼女達の乗って来た馬車が残っていたり、令嬢をタウンハウスへ送り届けていれば事態を把握した周囲が動いただろうが、馬車は令嬢を会場へ送り届けた後すぐにタウンハウスへと戻っていた。
それも事前に令嬢達本人からそのように申し付けられていたからだと全ての御者が証言している。その理由も婚約者や友人の馬車に乗るといったそこまでおかしくはない理由だったため御者も疑うことなく従った。婚約者との仲がうまくいっていないことは周知の事実だったため、ほっとしていた者もいたくらいだ。
貴族の令息令嬢にはパーティーの会場などでない限り常に侍女か従者が付き従う。
あのパーティーでも入場前までは連れており、公爵令嬢の従者が離れると同時に他の従者や侍女も離れた。
当たり前のこと過ぎて誰も意識していない。誰もがそのまま待機部屋へと向かったのだと思っている。
しかし、あの日の待機部屋で令嬢達の従者や侍女の顔を見た者が誰一人としていなかったことが後々の調査で判明した。
その後も1人を除いて令嬢と共に姿を消したまま見つかっていない。
何もなかったことにして婚約を継続させ水面下での金銭の授受で有耶無耶にする気でいた上層部は頭を抱えた。
普段は仲が悪いどころではなく殺伐とした仲の王妃と側妃だけはそんな男達を侮蔑した目で見ていた。
生まれたときから王妃になることが決められていた王妃と、権力を欲した父によって無理矢理側妃にねじ込まれた側妃。
どちらも愛だなんだとは無縁で、それなりに権力欲もあり国を動かす歯車であると自負する現実主義者だが、情がないわけでも国のためなら何をしてもいいと思っているわけでもない。
だから、国のために自己を犠牲にし続けた結果、自身を正義と勘違いしたバカ共に酷い扱いを受けた少女達に謝罪するでもなく死体に鞭打つようなことをしようとした国の頭脳達に呆れと侮蔑の感情しか浮かばなかった。
自分達の子や義娘となるはずだった令嬢の失踪を聞いてどいつもこいつも心配する言葉どころか素振りも見せない。彼女達だけではなく長く仕えている忠誠高い侍女や一部侍従達ですら表情をなくし蔑んだ目で見ていたが仕方のないことだ。
子供をただの駒としか認識せず、女という生き物を子を生むためだけの存在として見ている男共に怒りや悔しさもあったが、それは彼らと同様に少女達に苦難を強いた側の自分達が持っていい感情ではないと律した。
王妃も側妃も厳しくしてはいたものの、元王太子の婚約者である公爵令嬢のことも、バカ共から取り巻きと言われた令嬢達のことも何だかんだと気に入っていたし、気にかけていたのだ。
どのような思いでどのようにして姿を消してどこへ行ったのかは知らないが、王妃も側妃も彼女達の味方でいようと静かに心に決めた。彼女達の傍で同じものを見てきた侍女達もだ。
悪人ではないけれど傲慢で他者のことを考えられない雲の上の存在達に悔しい思いをした際に気にかけてくれた令嬢達に味方する男性陣も少なくなかった。
良識ある貴族夫人や令嬢達もその思いを知ってか知らずか口をつぐんだ。
実際、何も知らなかったが、知っていたとしても言わなかっただろうと彼女達は美しく微笑む。
質問には答える。
が、それが望む答えではないことも理解している。嘘は吐かないが重要な証言をする気もない。
失踪した令嬢達の名誉のための証言はするが彼女達の行方を探るようなことには首をかしげるのみ。
王国の女性達は静かにかつての令嬢達を支持した。
心配もせずにと悔し紛れの嫌味を言う男性陣に笑みを崩さず失望の色を隠さない。
失踪した令嬢達が誘拐などされるか弱い存在でないことをよく知っていたからだ。幼くとも淑女然と淑やかに微笑んでいた少女達は、男達が思うようなか弱き生き物ではない。
国王や王太子を護るのは近衛騎士だが、最後の護りは妻である王妃であり王太妃。教育の中に護身術以上のものが組み込まれているのは当然だった。
この世界の王族の女性は物理的にも強くなければならないのが普通なのだ。
問題を起こしたのは言わずと知れた国王のたった1人のお子である元王太子、宰相の嫡男、騎士団長である王弟の一粒種、魔術師団長の三男、王国の中央大神殿の大神官の子息という貴き5名と王家御用商人の三男に、元王太子の婚約者である公爵令嬢付の従者である子爵令息、耳馴染みのない男爵家の最近引き取られた庶子である少女の計8名。
事件直後に捕らえられてそれぞれが軟禁され騎士による事情聴取が行われていた。
現場にいた御用商人と男爵家の者も王城へと連れていかれ、どの程度知っていたか等を聴取された。
御用商人は全てを知っていたわけではないが、王太子やその他の高位貴族の令息との繋がり、更には王太子の未来の寵姫という存在への期待で色々と協力していたことが判明し、御用商人の取り消しと罰金刑を言い渡された。
商会は失わなかったが、信用第一の商人の世界で生きていけるはずがなかった。
結果、問題を起こした息子を置いて夜逃げした。その後の足取りはわかっていない…とされている。平民といえど多くの貴族や元王太子とその周辺と親密な関係にあった者を野に放つほど国は耄碌してはいない。
王都から遠く離れた領地で過ごしている男爵家の者達は何も知らず、庶子の少女が手紙で伝える以上のことを知らなかった。
手紙の内容も男爵家の庶子ならば多少の差別やいじめはあるだろうと話していたためそういうものだと思っていたし、仲良くしてくれている子息というのも常識的に婚約者のいない子爵か男爵家の子息だと思っていた。よくて伯爵家の三男以降だろうと。
まさか全員が婚約者持ちで王太子殿下やその側近達だとは夢にも思っていなかった。
普通の感覚である。
パーティー会場では自分の目に見えるものが現実かわからなくなるほど理解不能で、脳が考えることを放棄していた。
男爵夫人は耐えきれずに意識を飛ばしたため、目が覚めれば王城で尋問紛いが行われる寸前という絶望に痙攣して吐いてしまったくらいだ。
更に言えば、男爵の庶子として引き取りはしたものの実際は男爵の子ではなく出奔した妹の子で、子の父親は誰かもわからないということだった。
子を渡した妹は再び姿を消したため、仕方なく庶子ということにして引き取ったという事情があった。もちろん王城に提出する書類に嘘はつけないため妹の子であるとはっきり明記されている。表向きは男爵の庶子とした方が少女の将来にとってはいいだろうと判断したからだが、まさか後ろ足で砂を掛けられるどころか蹴り倒されるようなことをされるとは思ってもいなかった。
男爵一家は善良だった。
が、何も知らなかったとはいえ正式に男爵の養子となっているのは事実。
男爵は爵位返上、領地返還、更にはその身をもって償うと王に判断を任せた。妻も実家に戻ることはせず夫に準じると沙汰を待った。騎士として国境にいた嫡男も自身にも非はあると首を晒し頭を垂れた。
男爵夫妻は善良すぎた。
息子も実直過ぎた。
結果、これ以上下手に罰を与えると周囲の反感を覚えるという結論となり、平民となったことで手打ちとした。
しかし善良な一家。
令嬢達に申し訳がないと、せめて彼女達が命じられたものと同じ罰をと自主的に国を出ていった。
そこで終わらず、領民想いの領地経営をしていた一家を慕って後を追い国を出る男爵家の家臣や領民がしばらく続いた。
後に、これは英断だったと称賛されることになる。
それと同時に各地の国民が他国へと移住していったが、それも仕方のないことだと細かいことは気にされなかった。対応している暇がなかったともいう。
ある意味で一番の問題である人物、公爵令嬢付従者である子爵子息。
彼の裏切りが公爵令嬢の心を完膚なきまでに壊したと言っても過言ではない。彼は公爵令嬢と恋仲だったのだ。
愛のない政略結婚が当たり前の貴族社会、その最たるものである王太子の婚約者だった公爵令嬢に与えられた自由に愛していい存在で、幸運なことに彼も自発的に彼女を愛した。
そんな従者の裏切り。
それも令嬢の婚約者である王太子にすり寄る男爵の庶子を愛したからという。
そして公爵令嬢に付き従う彼ならば彼女にはできないやっていないとわかることを事実であるかのように補足する姿。
色々と察して頭ではわかっていたものの、公爵令嬢は最後まで彼を信じたかった。
その想いすら踏みにじったのだ。
やらかしたのは王太子をはじめとした8名全員である。
それでも国王や王弟の一粒種や能力的に優れている者を失うのは惜しい。
そのため、全ての元凶である男爵庶子はもちろん、資産家であれども平民である御用商人の息子、そして主家に仕えるためだけに与えられた爵位をもつ子爵子息、全ての罪を彼らに擦り付けるのが最良と国は判断した。
この3名には極刑が言い渡され、怒りを内包する国民の前で公開処刑をすることに決まった。
通告を受けた男爵庶子は「なんでどうして」「おかしい」「わたしはひろいんなのに」「りせっと!」と錯乱状態になった。
御用商人の息子は「あははははは」「あいしていたのに」「きみがいうから」「ごめ
…○○」と涙を流し続けた。
従者は…どこを見ているともわからないまま働く者に対して「ご苦労様です」と落ち着いていた。
ただ、その処刑が行われたのが事件から1年近く経ってからだったのは何故か、市井の者はおろか貴族でさえも知らされなかった。
なんかシリアスっぽく書いてるけど、国がわたわたしている間に件の人物達は「やったぜヒャッホー」「シャバの空気はうめぇなー」「これが、自由だー!」とよくわからんテンションで、着いてきた侍女侍従達と一緒にきゃっきゃしてる。
書いてはいないけどあまりにも鮮やかに行方をくらませている時点で気づいてるだろうけど、準備万端根回し完璧で、来たぜ本番やったぜ追放ってかんじ。
ほとんどの人は何も知らないまま今後の令嬢達を応援してるけど、当然全て知って協力している人間も少なくない。後顧の憂いを残さないように全て片付けてから確実に後を追ってくるはず。白手袋の似合うクールシブメンな執事とか先回りして出迎えそう。
公爵令嬢の従者がとても意味深な感じで終わったけど特になにも考えていない。
プロローグってなんかこう気になるようなことを最後に入れとくイメージあるっていうよくわからない理由。
でもこういうの割とよくあると思います。高位の令嬢に異性の側仕えのみの場合なんか意味がある気がする。
乙女ゲームほぼやったことない民にはわからんけど、ただ単にそういうものなのかもしれん。
公爵令嬢:王太子の婚約者。悪役令嬢筆頭。異世界転生者。前世は2人の子持ち夫とは家庭内別居状態だったバリキャリアラフォー。結婚に夢なんかない。
5才の時に後の王太子との顔合わせで前世を思い出した。乙女ゲームやラノベは存在を知ってるくらい。
7才の時に親友に記憶もちとバレ、自分が悪役令嬢だと教えられる。
最初は信じられなかったというよりも違う人間なんだからそうは進まないはずと笑ってたら、面白いくらいコロコロと婚約者達がヒロインに落ちていったため国外への追放という名の移住を決意。
元バリキャリだが完璧主義のためなんかおしゃれな料理とか作れる人。カレーはスパイスから。石鹸も作れる。素で異世界転生系ラノベの主人公張れちゃう人。
王太子の暴挙なんかも生暖かく見守れる大人な令嬢。でも破滅は嫌だから逃げた。逃げることを恥とは思わないし、王太子とか子供過ぎるしイケメンに興味ないしどっちかというと中肉中背うっすい醤油顔が好み。逃亡に着いてきた親友の護衛の1人(15才年上既婚)が糸目で好みすぎて子供の頃からチラチラ見てるけど伝わってない。彼が既婚と知った時は膝から崩れ落ちた。
従者に関してはそういう目的で与えられたことは知ってるし、向けられる熱視線も気づいてたけど無視。世間からどう言われてるかも知ってるけど否定すればするほど面倒になるとわかってるためスルー。幸せになってほしいと思っていたから残念。
伯爵令嬢:宰相子息の婚約者。悪役令嬢の取り巻き。異世界転生者。前世はギャルからの16才で妊娠シングルマザーで仕事と育児に明け暮れていたが普通に楽しく過ごした。めっちゃ前向き。乙女ゲームもラノベも娘とのコミュニケーションとしてやった。はまりはしないけど普通に楽しんだ。ツッコミながら。
公爵令嬢と出会って前世を思い出し、仲良くなって暴露。信じてもらえなかったけど気にしない。そうならないといいなと思いつつ念のため下準備や根回しをしていた。令嬢達が鮮やかに国外逃亡出来たのはこの人のお陰。
公爵令嬢の恋心には気づいているけど円満家庭を壊す手伝いはしたくないため見守りつつからかっている。楽しい。
令嬢ズ:王太子の取り巻きの婚約者達。まさかの全員が異世界転生者。
年齢はバラバラだが、公爵令嬢と違って乙女ゲームにもラノベにも明るかったため話が早かった。内容は割と重いはずなのにみんなで「卒業旅行どこにするー?」というようなテンションできゃっきゃしていたため深刻にならなかった。
王太子:主要人物なのに蚊帳の外な人。文武両道、美しい容貌、国民思いとなんか嘘みたいな出来すぎくんだったけど初めての恋に溺れてなんか突き進んでしまった。
卒業パーティーの時までは恋に浮かれて興奮状態だったが、謹慎で冷静になり後悔と自己嫌悪と、責任をとるにも立場上出来ないことを理解しているため絶望している。基本的に真っ直ぐで悪い人間ではない。
普段なら言葉の裏も読むし物事の裏付けなんて当たり前だけど初恋の前には塵に同じだった。熱が覚めれば違和感だとか色々と気付いてヒロインには嫌悪だとか憎悪でいっぱい。
たぶん数年後に隣国のしっかりものの王女とかが嫁入りして尻にしかれながら女性の地位向上とか男性の意識改革に貢献しそう。
ヒロイン:たぶん男爵の庶子とか。異世界転生者。前世は中学2年生。
入学時に「これってあのゲームのオープニング?」と気づき、自分の状況がわからないままゲームのように進んでいるうちに怖くなったものの、だからといってもう引き返せないところまで来ていたためどうすることもできなかった。開き直って王妃になっていい男を侍らせようとした結果、破滅した。
前世ではゲームは乙女ゲームや箱庭系、ラノベはハッピーエンドの恋愛系や動物ほのぼの系が好きで、教室の端で仲のいい友人と好きなアイドルの話をするような普通の子だった。ある意味被害者。
国王:おうさま。王としては普通。可もなく不可もない。過去には悩んだけど普通であることがどれだけ難しいことか王妃に諭されてから気にしなくなった。
人間性は悪くない。どちらかというと善良。刑とか罰とか書類上でも気が滅入るし死刑とかほんと無理な人。その割に女性軽視なのはそういう教育を受けてきたから。何がダメなのかわからない。女の幸せは子を生むことと信頼する者から教育を受けているため疑っていない。王妃や側妃はそれを理解しているから何も言わないけど気分はいいものではないため割と辛辣なことも言う。それを許しているあたりいい人。
たぶん王族に生まれたのが不幸という身も蓋もないタイプ。
この後、多少国は荒れるだろうけど婦人連合がいるからきっと大丈夫。
国王も上層部も女性に対して変な教育を受けているから軽視してるけどバカじゃないし人でなしとかではないからいつか理解できるさ。たぶん。
王太子は色々あって大人になったからこれからは慎重ないい王さまになれるよ。知らんけど。
なんか裏がありそうだし従者が本当に死んだのかとか疑問も謎もいっぱいあるけど考えてないから謎は謎のまま。
一時期よくあった感じの冒頭部だから探せばそれっぽいのがあるかも?