表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/14

11、望まぬ再会(1)

 わずかに20日と少しだ。

 久しぶりというほどに期間は空いていない。


 だが、応接間に招いて再会した2人には大きな変化があった。


(ど、どうしたの、これ?)


 セリアは目を丸くすることになった。


 2人共、見るからにに顔色は良くなかった。 

 あまり寝られてはいないのかもしれない。

 クワイフにしてもヨカにしても、顔は青白く目元にはクマが浮かんでいる。


 やはり、だった。

 何かあったのかもしれない。

 それが両親についてかは分からなかったが、セリアは思わず前のめりになる。


「な、何? 一体貴方たちはどうして……」


「セリアっ! この恥晒しめっ! 全ては自業自得だというのに、この蛮行はどうしたことだっ!」


 問いかけを忘れ、セリアは目を丸くすることになる。

 怒声の主はクワイフだった。

 荒々しく立ち上がりながらの罵倒であったが、一体彼は何を言っているのか?


 呆然としていると、隣で動きが起きる。

 隣には、心配だからとケネスが同席してくれていた。

 泰然(たいぜん)と座っている彼は、「ほぉ?」と感心めいた呟きをもらした。


「なんだ? 俺が知らない内に復讐にでも打って出たか? 意外とやるな」


 もちろんのこと冤罪(えんざい)である。

 セリアは慌てて首を横に振る。


「ち、違います違います! ちゃんと職務に専念してましたからっ! まさか復讐だなんてそんな……っ!」


 釈明(しゃくめい)には、クワイフが怒声を返してきた。


「しらばっくれるな!! 気がつけば、金庫は空だった!! ヨカがこれだけがんばっていたのにこれだ!! お前の所業(しょぎょう)以外に考えられるか!!」


 セリアは「はい?」だった。

 唖然とするしかなかった。

 どうやら窃盗(せっとう)の疑いをかけられているらしいが、身に覚えなどはもちろん無い。


「な、なんですかその疑いは!? ひどいですよ!! そんなことするわけが無いじゃないですか!!」


 怒りの思いしかなく、叫び返すことになる。

 だが、クワイフはセリアの犯行を信じ切っているらしい。

 歯ぎしりしてにらみつけてくる。


「ざ、()れ言を……っ! どれだけお前の性根(しょうね)は醜いんだっ!! 投資先からの配当も無くなったっ!! これもお前の所業だろっ!! 分かっているんだぞっ!!」


 セリアは怒りを忘れることになった。

 「へ?」と首をかしげる。


「投資先からの配当が? え、なんで? なんでそんなことに?」


「し、白々しいことを……っ!!」


「い、いや、本当に分からないから。何かあったの? 投資先とか、関係する商家と何か問題でも起こした?」


 クワイフは変わらず歯ぎしりを続けていた。

 やはり彼は、全てが元婚約者によることだと信じ切っているらしい。

 しかし、隣のヨカだ。

 セリアは思わず見つめる。

 彼女はまったく違う反応を示していた。

 どうにも居心地の悪い様子で、視線は明らかに左右に泳いでいる。


「……ふーむ。なんとも分かりやすいな」


 ケネスが呟いたが、おそらくそういうことだった。

 ただ、クワイフばかりは、それを理解していないらしい。


「とにかく来てもらうぞっ!! この償いは必ずしてもらうからなっ!!」


 クワイフが憤怒の表情で迫ってくる。

 セリアは思わずびくりと体をすくませることになった。

 不条理への怒りはあったが、暴力に訴えられるのではと思えば恐怖はどうしようもなかった。


 しかし、セリアの胸中に安堵が広がることになる。

 ケネスだ。

 いつの間にか立ち上がっていた彼が、クワイフの前に立ちふさがってくれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ