ACT1サイドストーリー 一昔前のスマホ
スマホの紋章にもう一度触れると、紋章から出ていたモニターが消えて、青色から待機中を示す緑色に戻った。
「イザホ、スマホの扱いにもなれた?」
カレーの匂いが感じられてきたころにマウと顔を合わせると、マウはワタシの左腕を眺めながらたずねてきた。
うん、ちょっとだけど。その言葉を喉から出せないから、ワタシはマスクで隠れていない目元の表情でマウに伝えた。
「そっか。昔はモニターの閉じ方も慌てていたけど、ずいぶん上達したよね」
昔っていっても、2年前ぐらいだけどね。
それに、まだまだ使いこなせていない機能もいっぱいあるし……車の中でマウに教えてもらって、初めて存在を知ったメモ帳のアプリも使わないと。
「そういえばさ、イザホ、紋章が普及する前からスマホがあったって知ってる?」
……紋章が普及する前に? スマホって、紋章の技術から生まれたんじゃないの?
首をかしげると、マウは鼻をプウプウと鳴らした。
「紋章という技術がないころ、スマホは小型の端末の形をしていたんだ」
あ、そういえば、この紋章はスマホの形をしているって前にマウが説明していたっけ。小型の端末って、こんな形をしていたのかな?
「普段は小型の端末をポケットやバッグに入れて持ち歩いていたみたいだって」
……ポケットやバッグに入れて持ち歩いていた?
ワタシは左手の手のひらに埋め込んでいるスマホの紋章を指さし、次に自分のポケットを指さした。
スマホを使う時に、その都度ポケットの中から取り出さないとダメなの?
「今の人たちは、みんなその反応をすると思うよ。でも、スマホの便利さは小型の時代から変わらないんだって。なんせ、紋章が生まれる前からスマホは体の一部って言う人も出ていたんだから。まさか未来では本当に体の一部になるなんて、彼らは夢にも思わないだろうけど」
ワタシはこのスマホの紋章が、手のひらから離れてポケットに入っている様子を思い浮かべた。
……やっぱり、埋め込んだ方がいいに決まっている。
だって、どこかに置いて忘れていきそうだし、他人に盗まれてしまいそうで怖いから。
いかがでしたか? オロボ46です。
ACT1の最後まで見て頂き、ありがとうございました!
各ACTの最後では、本編の合間で起きていた、物語とはちょっと外れた登場人物の会話が聞ける「サイドストーリー」を用意させていただきますので、息抜きにどうぞ!
さて、次回は……とその前に、ひとつだけ語らせてください。
作者はゲームなどのいろいろな作品から影響を受けがちなのですが、この物語ではSWERY氏がディレクターとして手がけた「Deadly Premonition」シリーズ(別名「レッドシーズプロファイル」)からの影響が、物語のモチーフになるほど特に強いです。
具体的には裏世界で手がかりを探すといった内容に、特徴的な殺人鬼など……特に最初ののプロローグでは1作目のOPを思い浮かべながら執筆しました。
興味のある方はぜひ調べてみてください! どのような共通点や相違点があるのかを比べてみるのも、面白いですよ。
さて、次回ですが……
イザホとマウの鳥羽差市での新生活が始まるようです。
ふたりきりの生活に、住民たちとの交流、探偵のフジマルさんの助手としての仕事……
その一方で、フジマルさんが返信を後回しにするほど忙しいと言っていた依頼が、ふたりの運命を大きく動かすことになるようで……?
裏側の世界で襲いかかった少女に、10年前のバフォメットの都市伝説……
まだまだ謎は尽きないですね。
ちょっと長くなってしまった導入部であるACT1を、最後まで見てくださりありがとうございました!
・イザホの正体にショックを受けた
・常に側にいるウサギのマウに癒やされた
・喫茶店セイラムの店長さん、ちゃんとふたりを覚えているかの方が心配
などといった感想は大歓迎です!
ブックマークを入れて貰えると、続きが投稿された時に通知が来るので、そちらもご検討ください。
この物語が、誰かの紋章となりますように。
それでは、次回もお楽しみに!!