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ACT5サイドストーリー イメージの裏側

 第47話より。

 10年前の事件の現場で、後から来るフジマルを待っている間のこと……

「ねえ……イザホ……」


 缶コーヒーを飲み終わったころ、隣でマウがもじもじしていた……

 どうしたの?


「ボク……トイレに行きたいけど……この辺りにあるかな……」


 たしかに、この辺りにはトイレが見当たらない。

 ワタシは何かを食べてもトイレに行く必要はないけど、マウの場合は定期的にトイレに行かなきゃ病気になっちゃう。


 ワタシはベンチから立ち上がり、スイホさんの背中をつつく。

 スイホさんが振り返ると、ワタシはもじもじしているマウを指さして知らせる。


「もしかしてトイレ? トイレなら、下のぱなら広場のコテージの横に……」

「わかった!」


 あ、マウが猛ダッシュで階段を下り始めた!

 急いで後を追いかけよう。


 ワタシはトイレに行く必要はないけど……

 マウが漏らしてしまわないか、心配だった。












 階段を下りて、ぱなら広場に降り立つ。


 マウはコテージの横に設置された公衆トイレに飛び込み、鍵を閉めた。

 とりあえず、これて一安心かな。




 ……?


 マウを待っていると、楽しい音楽が聞こえてきた。


 音楽が聞こえてくる大樹の後ろ側に回り込んでみよう……




 ――“埋め込めさせてよ君の恋を。ただ私はその紋章に触れたいだけなの”


「埋め込めさせてよ君の恋を。ただ私はその紋章に触れたいだけな――」




 一瞬だけ風が強くなったとともに、「ハッ!!」と驚く大樹のパナラさんの声が響き渡った。




 大樹の裏側には切り株があり、そこに小型のモニター。

 そのモニターの中では、かわいらしい服を着たオオカミのぬいぐるみが歌って踊っていた。


「……イザホ、おまえ、どうして」


 周りがなんだかポカポカしている上に、パナラさんの言葉も途切れ途切れになってる。そんなにビックリしたのかな?


「ねえイザホ、そこでなにしてるの?」

「なっ!!」


 大樹のパナラさんの表側から、ひょこっとマウが顔を出した。

 マウはモニターを目にすると不思議そうに鼻を動かしていた。


「……パナラさんも、ウンルン見てるの?」

「……わ、悪いか」


 威圧感で恥ずかしさを隠しているパナラさんに、マウは自然に「全然」と首を振る。

 ……ウンルンって、なに?


「あ、イザホ。ウンルンっていうのは、オオカミのぬいぐるみに人格や知能を埋め込んで生まれたアイドル……今、もっとも注目されていると言っても過言ではないアイドルだよ」


 へえ……アイドルって、人間や動画のキャラクターだけがなるものだって思ってた。ちょっと偏見だったかも。




 ホッと安心したような息が、風となってワタシの頬を通っていく。


「それにしてもパナラさん、どうしてそんなに慌てていたの?」

「まあ、ワシにも他人から見られるイメージというものがあってな……どうしてもそれを壊されてしまうんじゃないかと心配していたんじゃ」


 なんか不思議。

 さっきまで堂々としていたパナラさんが、他の人からの視線を気にするなんて。


「なあ……ひとついいか?」


 ワタシはマウと一緒にうなずく。


「おまえたちの用事が済んだ後でいい。今夜21時に……ワシと一緒にウンルンの曲を聴かないか? フジマルに誘っても、なかなか乗ってくれなかったからのう」


 真夜中にウンルンの曲……

 昨日、この辺りでバフォメットの目撃証言があったばかりだけど……


「イザホ、肝試しっぽいノリだけど、いいんじゃない?」


 ……マウにそんな言葉で例えられると、断れなくなっちゃった。ウンルンについても、興味がわいたし。

 ワタシがうなずくと、喜ぶような枝の揺れる音が響き渡った。




「よし! それじゃあ21時から5時まで、ともにウンルンについて語り合おうぞ!」




 え? 「は?」




 21時から5時まで……

 つまり……日にちをまたいで8時間も起き続けること!?


「ちょ、聞いてないよ!? そんなことしたら、寝不足になっちゃうよ!!」

「楽しみじゃなー、ウンルン仲間とともにウンルンについて語り合うの。まず手始めにライブ映像で3時間じゃろ? 次にウンルンの歴史について……」


 ……話を聞いてくれないことよりも、あんなに楽しそうにスケジュールを組み立てているのを聞いて、ワタシの中のパナラさんのイメージが崩れ落ちた。




 仕方がないので、パナラさんが上の空のうちにスイホさんたちのところまで逃げ帰ることにした。




 いかがでしたか? オロボ46です。


 今回はリズさんの失踪と取り残されたイビルさんを始め、10年前の事件の呪縛に囚われていたクライさんとホウリさん、そして以前から断片的に出てきていたイザホのトラウマである火の存在……と、ちょっぴり重くなっちゃいましたね。

 その一方で、少し厳しめなパナラさんの言葉に、10年前の事件の新たな情報など、物語が大きく動きました。

 そして、最後のあいつは……本当に敵なのでしょうか……?


 さて、次回ですが……


 全身の骨を折ったイザホが目覚めた場所で、10年前の被害者と関わりのある人物のひとりと出会います。

 その場所から立ち去ろうとするイザホたちは、ある人物がいないことに気がつきますが……


 そしてイザホの前に現れたのは、今まで顔を隠してきた人物の正体……!?


 2月11日(金)公開予定です!





 ACT5を、最後まで見てくださりありがとうございました!


 ・最後のあいつの謎がさらに深まった。

 ・クライの過去が頭から離れない。

 ・イザホの缶コーヒーブレイクとマウの存在だけが救い。


 どれかに当てはまれば、★を入れてくださると励みになります。

 コメントによる感想やご指摘も大歓迎です!

 ブックマークを入れて貰えると、続きが投稿された時に通知が来るので、そちらもご検討ください。


 この物語が、誰かの紋章となりますように。

 それでは、次回もお楽しみに!!

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