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14-1, 一月一日 一

空桜は張り切っていた。

かばんについているのは、クリスマス会でのプレゼント交換で手に入れたストラップ。

そしてその服装は、初めて着る赤い着物。

行き先はもちろん神社。そう、初詣。


あの夜から一週間がたち、今は冬休み真っ最中。

次は元日に神社で、という約束を交わしてわかれた。

新年早々友達に会える。

それは、張り切っている理由の一つでもあった。


「空桜ちゃん!」

神社が見えてきたころ、声がかけられた。

可愛い着物の歌波だった。

「初夢どうだった?」

「え?初夢?初夢って、今日見るものじゃないの?」

「え?そうなの?」


「そこは解釈の違いじゃないのかしら?」

空桜でも歌波でもない声が混じった。

その声は、そのまま二人の横を通り過ぎていく。

「委員長…?」

「うん、春日崎先輩…だね」

顔を見合わす二人。


そこに、しぐれが飛び込んできた。

「おっはよー!」

「うわあ、おはようしぐー」

「着物可愛いねー」

「えへへーありがとう 二人も可愛いよ」

「そうかな?」

さっきより楽しくなった。


「あとはうららんだけかな?」

「そうだねー!まだ集合時間10分前だし」

腕時計を見るしぐれ。

あたりを見回す空桜。

歌波はというと…


「どうかしたの?」

「えっ」

神社の石段を見つめて、上の空。

声をかけてようやく我に返る。

「別になんでもない」

歌波は笑って誤魔化した。


「それにしても、校内で見たことある人ばっか。やっぱ近所の神社だもん、乙時雨生多いんだね」

鳥居の前までついたところで、一旦立ち止まり、境内にいる女子高生たちをみて、つぶやく。

「刃流生も多いよー」

「私全然わかんないや。家族連れも多いみたいだけど」

何故か人間観察がはじまる。

「女子高生、家族連れ、と来たら、あとはー?」

「カップルっ?!あ!」

絶妙なタイミングで、一組のカップルが三人の目に留まった。

向こうもこちらに気付いたようで、手をふってくる。

それは言うまでもなく、あの二人だ。


「先輩たちいいなー しぐもリア充したーい」

「えっ意外!」

「なんで?!恋愛に興味ないようにみえる?!」

そこからまた会話が展開する。

歌波が時計を確認する。時刻は待ち合わせ時間ちょうど。

それでも麗はまだこない。


しばらくすると、待ち人に瓜二つな人がやって来た。

「渉くんとお兄さん!おはようございます!」

元気よく挨拶する空桜。

しぐれと歌波は、二人が来ていて麗が来ないことに対して疑問を抱く。

「ああ、おはよう。って、あれ、麗は一緒じゃないのか」

「え?ああ、もう待ち合わせの時間すぎてるんですけどねー」

「え?姉ちゃん、俺たちが起きた頃にはもう家出てたけど」

クエスチョンマークがそれぞれの頭上に展開する。

発される言葉もなく、沈黙がその場を埋め尽くす。


つまり…

麗は朝はやくに家をでて、それで今、ここではないどこかにいる ということになる。

それが何を意味するのか、誰にもわからない。

「あ、あれじゃない、初日の出見に行ったとか」

しぐれの考えは、妥当に思えた。

だが、真意を知る者は勿論いない。空気は濁ったままである。

「うららんて…意外とロマンチストなのかな」

「どうだろう」

場の流れをかえようと空桜が発言するが、それは兄弟にもわからないことだった。


「どうする?しばらく待ってみる?」

お互いに顔を見合わす。

「私、待とうかな」

歌波が遠慮がちにいった。

「じゃああたしも。」

「そうだね、じゃーしぐも!お兄ちゃんたちどうする?」

一瞬間があいてから、

「じゃあ、待つよ。いいよな、渉」

全員で待つことになった。


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