13-4, 四人のクリスマス
「結局この四人か~」
しぐれの家に集まったのは、空桜と歌波、そして麗。
いつもの光景、に加えて歌波といったところだろうか。
歌波が先ほどから何度も麗の顔をのぞきこんでいる。
いつみても無表情、もしくは薄い笑みを浮かべているだけだが、
その内に秘めた感情をよみとろうとしている。
普段そばにいる空桜やしぐれは決してしない行動。
比較的まじめで論理的な歌波だからこそ、できる行動である。
「どうする?プレゼント交換いっちゃう?」
「いっちゃういっちゃう?」
しぐれと空桜がはしゃいでいる。
ふと、麗が歌波のほうをみた。
目があうが、すぐにそらしてしまう。
・・・・気まずい。
何が気まずいって、よくわかんないけど、
やっぱりまだ・・・あんまりよく・・・
「あ!」
突然、しぐれが大声をあげた。
「え?」
きょとんとする三人。
「うららん・・しぐんち、大丈夫だった?」
「え?」
「その・・・・」
麗の家は、元お金持ち。
だが、両親が他界したのちは、その遺産を生活費に暮らしていた。
今は兄が少しは稼いできているけれど、
お金は減り続ける一方だ。
そんな麗が、しぐれの豪邸にくると、どうも落ち着かないらしい。
しぐれは、それを把握していながら麗を誘った。
勿論、本人も自覚して。
「・・・なんか、もう過去のことなんてどうでもいいなって思ったんですよね」
嬉しそうに微笑んだ。
美人だから笑えばいいのに、と いつも勿体なく感じている
しぐれと空桜が、それを見て喜んだ。お互いを見合わせて。
「今は今で、なんだかんだいって幸せなんですよね・・・。
だって、みんながいるでしょ?」
「あ!今タメ語だったあー!」
「は?」
再度、顔を見合わせて喜ぶ二人。
その状況についていけない歌波に、自嘲気味に微笑みかける麗。
「ほーら!そういう神妙な話はまた今度ね!
せっかくのクリスマスなんだし、さわいでこー!」
「はい!」
とにかく、嬉しそうだった。
それをみて、歌波も、だんだんと気分がはれてきた。
心の奥底、どこかにのこっているもやもや。
今日だけは、忘れよう。そう思うとすっきりして、微笑みかけてみた。
「どしたの歌波?ニヤニヤして」
「えー?ニヤニヤしてないよ~?」
クスクス、クスクスと・・・。
その笑い声は、廊下にまで響いていた。