13-3, 二人のクリスマス
「泊まってくの?」
夜11時半
その部屋にいるのは、立雲と八代だけ。
「もうこんな時間だし、帰るの危ないし・・・、泊まってって?」
異性を誘うその光景、あと少しで日付がかわる。
「もうクリスマスだね。去年は何してたんだっけ?」
床に隣り合って座っている二人。
もたれかかっているのは立雲のベッド。
「八代?寝てる?」
反応がないので顔を覗き込むと、案の定目があった。
無表情で見つめ返してくる。
思わず赤面してしまう、立雲。
「夜の街ほっつきまわって説教くらってた」
「あー・・ そういえばそうだねぇ~ 今となってはいい思い出」
微笑む立雲。
珍しく、八代も笑った。
「・・・・高校、どうするの?
もう12月だから、今更受験勉強はじめるっていうのも大変でしょ
それに、初浦もエスカレーターだったよね?」
「俺はいいよ。受験勉強ならしてあるから」
「えっ」
意外なこたえがかえってきた。
私・・・何もしてないよ?!
「八代って勉強しないイメージがある」
「そう?」
小学校で塾いってたころだって、毎日のように遅刻して
授業中も寝てたし・・・・。
あっ、提出物は忘れるところみたことないけど。
「じゃあ、華音高校・・・かなあ」
「立にあわせるよ」
「八代・・・・」
優しすぎると、逆に不安になる。
私だって、どうでもいいんだよ?八代と一緒なら、何でもいい。
「親は大丈夫?」
「なにが?」
「今更共学うけたいって言って」
「ああ、大丈夫だよ」
ちゃんと相談してある。
だって、未来がいたころから、みんなで華音っていってたもの。
で、でも
八代君と同じ学校いって卒業したら結婚すればいいんじゃない?ってにやにやされたってことは
しんでも言えません・・・。
「八代こそ、いいの?」
「俺は別に」
八代の家族のはなし、あまりきいたことがないなあ。
家族だけじゃなくて、八代自身のこともそんな話さないし。
気まずい雰囲気だけど、隣が八代だから安心できる。
そのとき、メールの着信音がなった。
クラスメイトからだ。
メリークリスマスと、一言だけ。
時計を見る。
「日付変わったね・・・
・・・メリークリスマス」
携帯をとじ、八代の手の上に自らの手をかさねる。
「ジュワイユー ノエル」
八代がぼそっとつぶやいた。
「何それフランス語?」
「華音って国際化にすると第二外国語があるんだろ?」
「あっ、そうだっけ?」
そういえばそんなこと、未来が昔いってたような・・・。
八代、ちゃんと調べてあるんだね。
私、やっぱり八代のこと好きだよ。
ずっとずっと、一緒にいたい。
だから、私 頑張るから
未来のぶんも頑張るって、あのとき決めたから
だから・・・・
だから。
メリークリスマス、もういちど。