13-1, クリスマス・イヴ1
「かっなみ~ おはよー!」
「あ、空桜ちゃん」
駆けてくる友達に 園部歌波は戸惑った。
私たちってこんな風で・・・いいのかな。
「いよいよ明日から冬休みーっ いえーいっ
でも私、まだ校歌あんまり覚えてないんだよね」
「あ、そっか そういえば来たばっかだったもんね」
なんだ、そんなことかと胸をなでおろすと、空桜が首をかしげた。
笑ってごまかす。
「あっしたーはー クリスマスパーティィィィ!
あれっ、歌波もくるんだっけ?」
え?
「確か参加するのはうららんとしぐれと・・・・あれれっ
そういえば全然誘えてないし~~」
あの二人とパーティですか
「あ~私・・・あいてるよ」
「本当っ?!やったー!じゃあこれで4人だぁっ」
「うん」
・・・心配することなかったかな。
前、曖昧にこたえたのには戸惑いがあったから・・・・
いまも・・・正直、あるけれど。
「でも・・・ 私、その・・・先輩やしぐれ・・・ちゃん?のこと
あまりよくしらなくて」
「あっ大丈夫大丈夫っ!二人ともそんなの気にしないと思うよ~?」
・・・・私が気にするんだけど。
いつも以上にテンションの高い空桜をみる。
屈託ない笑み。
いいなあ、幸せそう・・・・・。
と、不意にチャイムがなる。
「あっ やばい!!終業式はじまっちゃうじゃん!いこ!」
・・・うん。
私、空桜ちゃんのこと嫌いじゃないよ?
・・・裏切っちゃおうかなって思ってたけど
でも・・・・ やっぱり迷っちゃうな。
会って間もない子なのに、なぜかひきよせられるから・・・・。
・・・空桜ちゃん、気を付けて・・・・
それだけしかいえないけど・・・。
放課後、商店街
「いいの、断って」
「何で?だって私、八代と二人きりで過ごしたいなって・・・・」
普段無表情の八代が、珍しく微笑む。
その彼女、立雲も幸せそうにしている。
視線を前方にむけたまま、八代の手をとった。
腕をくむ。
「八代 私のこと・・・好き?」
「は?」
「よく不安になる ・・・八代、モテるから」
沈黙が流れる。
ただ無言で歩くだけで どちらも口をひらこうとしない。
さきにそれを打ち破ったのは
先ほどからそわそわしていた立雲だった。
「高校、どうするの?」
消え入りそうな声で尋ねる。
「・・・・立は?」
「・・・・刃流はエスカレーターだからそれでもいいかなって思ってたけど
やっぱり共学いって八代とすごしたい・・・・
未来と一緒にさ、中一のころから目指してた高校 前に言ったでしょ?
八代も一緒にいこうっていってたけど・・・・ でも未来いなくなって・・・」
「まだ目指してるって この間いってたじゃねーか」
感情のない声。
「うん・・・ でも不安なの
八代はどうするのかって・・・・ 八代、本当は私のことどう思ってるのかって」
「らしくない」
「え?」
今度は沈黙のために立ち止まった。
目があう。
どちらも若干顔が赤いが、視線をそらすことはない。
まわりから見れば、今にもキスしそうな雰囲気だ。
「明日クリスマスだろ?」
「うん・・・・ バレンタインではないよ?」
冗談まじりに言う立雲。
それを、抱きしめた。
「ゆっくり話そう
・・・・二人で」