12-5, 英語の本
同時刻、生徒会室
「え~?!立雲ちゃんたちこれないの~?!」
麗にすがる空桜。
「やっぱり二人きりで過ごしたいんでしょうね」
「あ・・・そっかぁ残念」
苦笑する麗。
いつもと変わらず、本を読みながら。
ただ、普段と違う点が一つあった。
「あ、それ英語」
麗の本の指差す空桜。
「えっ 普通に読めるの?」
のぞきみる。
中身まで英語だった。
明らかに中学レベルをこしている。
「これ・・・春日崎さんが借りてたやつなんです」
よくみると、図書室の貸出用バーコードがはってある。
麗の話によると、その本は春日崎真夜が図書室から借り、
千景の入院先へもっていった際に貸してほしいといわれ、かしたものなんだそうだ。
そのまま図書室へ返却してほしいとのことで、偶然見舞いにいった麗が頼まれた、というわけだ。
「春日崎先輩って、そんなの読んでるんだ」
「ぺらぺらめくっていたら、案外面白くて」
珍しく麗が笑顔を見せる。
空桜も自然と嬉しくなる。
「ねえ、クリスマス・・・さあ」
「あ・・・・・」
沈黙が流れる。
続きはいわなくてもわかっていた。
二人を誘うかどうか。
前にも一度迷ったのだが、結局誘えていない。
千景は事故にあってしまったし・・・ 難しいだろうと諦めていた。
だが・・・・
どうする。
と、そのとき不意に扉がひらかれた。
待ち人来る。
「春日崎先輩?」
無言で入ってくる、真夜。
そして、机の上に一冊の本をおく。
「これ、あの子に渡しておいてもらえる?」
それだけいって 立ち去ろうとする。
「え、ちょっと待って」
とめたのは空桜だ。
無表情でふりむく真夜。
「これ、続刊・・・ですよね?何で直接渡さないんですか?」
麗がよんでいるのと同じ題名。
その本には、2と大きく書かれていた。
麗と真夜の目があうことはない。
間には本という名の壁がある。
「あなたと違って暇じゃないの」
麗のページをめくる動きが、とまる。
「勉強しなきゃぁ~」
わざとらしい笑みを浮かべる真夜。
ガラッっと大きな音をたてて、扉があき そしてしまる。
顔を見合わせる空桜と麗。
「クリスマス、誘わないほうが良さそうかな?」
でてきた言葉は、それだけだった。