12-3, しぐれの誕生日
やっぱうららん覚えてないのか・・・な
学校が終わり帰宅する今、しぐれはそんなことを思う。
昨日誕生日いつってきかれたけど
偶然だったのかな?
そりゃ、そうだよね。いってないもんね。
知ってる・・・っていうか知ってたの、うららんくらいだよなー・・・。
祝ってほしい わけじゃない。
でも覚えてて ほしかった。
「しっぐれ~っ!」
不意に名を呼ぶ声を耳にした。
驚いてふりかえる。
「空桜・・・・っ」
駆ける。
うれ・・・しい。
「ごめんね!昨日まで誕生日知らなくて、即席でっ・・・」
差し出す小包。
可愛らしい包装紙。
うれしい・・・っ
「わざわざきてくれたの・・・」
「うんっ」
嬉しい 嬉しいっ
友達からの誕生日プレゼントなんて・・・何年ぶりだろう?
「あっ、今ひらかないで!恥ずかしいから・・・」
照れ隠しに笑う、空桜。
可愛いな 友達って・・・やっぱ可愛いって感じるものなんだなっ
「じゃあっ・・・!」
そういって、空桜は元来た道をかけていった。
あけるのは、家に帰ってからにしよう。
そうきめてカバンにいれる。
カバンを開いたついでに、携帯を取り出す。
メールが来てる・・・ 神近先輩?
そういえば・・・
この間部活で仲良くなって、アドレス交換したんだった。
内容はお祝いだった。
あれ・・・あたし先輩に今日誕生日だって、いったっけ・・?
でも嬉しい・・・。
プレゼント贈れなくてごめんって・・・
全然・・・メールだけでうれしいし
返信しながら歩いていると、
気付けば家が見えていた。
玄関先に人影がみえる。
え
あれってもしかして・・・
「うららんっ?!」
再び走る。
それは間違いなく、麗だった。
珍しく、私服姿で。
「何で」
「何でって・・・渡したかったからですよ」
え・・・これ、もしかしてお菓子?
手作り?!
微笑む麗。
うららん料理なんてできたのっ?!
「味は保障できませんが・・・・」
苦笑する。
「大丈夫だよ!見た目すっごく綺麗だしっ
うららん料理もできたなんて本当完璧だねっ
しぐ、うららんが覚えてないっておもってたから!
すっごくうれしいの!だからねっ、それで それで」
でてしまった。
興奮しすぎて我慢していたこと全部
だしてしまった。
けれど反省も後悔もしていない。
麗は笑って全部きいてくれて。
今日は最高の一日だなって・・・・
この数分で・・・思ったんだ。
やっぱり大好きだって、思ったんだ。
そしてまた、着信音が、鳴る。