12-2, 麗の料理
同時刻、
麗は一人で商店街を歩いていた。
すれ違う乙時雨生に何度も避けられながら、店を探していた。
生徒会室のカレンダーを見て、思い出したのだ。
今日が何の日か、ということを。
今日部活ないらしいからもう帰ってるだろうけど・・・とため息をつく。
すると、どこかから甲高い声がした。
「どーこ見てるの?こっち」
飛び込んできたのは、
えっと・・・あれ?
・・・・ああ、渉の
「彩葉ちゃん」
「・・・ちょっと忘れてましたっ?今から家いきますねー」
この子は、渉と昔から仲の良い子。
小学生だから、付き合ってるって言葉をあてはめるのはまだはやいけど・・・
実質的にはそんな感じ。
昔よく家に遊びに来ていた。
男の子の友達はあまり連れてこないのになんて 不思議に思っていたけれど
最近はどうなんだろう?
麗自身が家にかえっていないのでわからない。
帰ってみても・・・・ いいかも
彩葉を呼び止めた。
一緒にいかないかと誘うと、彼女は笑顔をつくった。
麗の家は、商店街からそう遠くない。
小学生一人で暮らしているわりには広い。
まあ、渉しか住んでないことを公にされたら、ちょっとまずいけど。
それは麗は当然として、客である彩葉にもなんとなくわかることだった。
多分、というより絶対 啓もわかっているはず。
なのに何故かあの人は一人で暮らす。
どーでもいいんですかねえ・・・・
鍵は常備していた。
扉をあける音がきこえたのか、渉がでてくる。
そして、唖然とする。
「姉・・・ちゃん・・・何で」
抱きつこうとしたところで、彩葉の存在に気づきやめる。
「あ、別にいいよ・・・ 見てないから」
彼女もどきが遠慮する。
シスコンって思った・・・ と彩葉の言動をみてショックをうける。
「だって渉がシスコンだってこと、ずっと前から知ってるし」
そして赤面。
知ってる・・・か やっぱ知ってるか、そうだよな・・・・
「・・・あっ 買い物忘れてました」
「え、あたし見て忘れて帰ってきちゃったんですか?」
彩葉が嘲笑う。
渉も色々ごまかすようにして笑う。
・・・でも
何買うか決まらなくて
「プレゼント?なら、料理でもしたらいいんじゃないですか~
家だし?」
料理?
「うーんクッキーとか。麗ちゃん見た感じで上手そう」
・・・考えたことなかったですね
料理って、小学生のころの調理実習でしかしたことないんですよねー
いつも兄がつくってましたから。
だから・・・
できないかも・・・
「えー?嘘ぉ じゃああたしおしえてあげよっか」
さすが小学生、お気楽。
時間とかも・・・ありますから・・・。
でもそういうテンションって嫌いじゃないですよ。
「・・・・店でクッキー買った方がはやいですよね」
「えー?まじでー それはないですよーないない
渉だって見たいでしょ?麗ちゃんのお料理」
いきなり話をふられて動揺する渉。
麗の見たくないって言えよオーラと彩葉の見たいって言えよオーラ。
「教えて・・・もらったら?材料多分あるから」
勝ったのは彩葉のようだ。
覚えてろよ的な黒い笑みを浮かべる麗。
背筋がぞっとする。
けれど、ここで前言撤回すると今度は彩葉に責められそうなので、できない。
蛇に睨まれた蛙ってこういうこと?・・違う?
・・まあ、興味あるし いいよね?
ため息をつく麗。
家庭的に見えなくもないんだろうけど、実際何もやってないからねぇ。
苦笑する渉を、キモーイと彩葉。
彼女の料理の腕前はなかなかのもので、よくお菓子をもってきてくれている。
もっと言動が女らしければ、なんて考える。
実際自分も、朝夕自分でつくっているわけだから
自己満足に至る程度の腕はもっている。
多分だけど、姉ちゃんの辞書に不可能なんて言葉ない・・・・はずだから
きっと初めてでもうまくいくよ・・・ね?
それは期待なのか希望なのか