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12-1, 病院にて

目が覚めると、そこは白い空間だった。

起き上がって、ようやく病院だということに気付く。

「なんや、たいしたことないやん」

そんな声が、耳にとどく。


「え、ちよ・・・?」

驚きだった。

ずっと会っていなかった幼馴染の姿が、うつる。

これは夢?現実?


そして思い出す。

意識がなくなる少し前、道路を渡っていたことを。


あ、はねられたんだ、あたし。

全身少しずつ痛いのは、きっと骨折とか打撲とか。

でも何とか起き上がれるっぽいし、大したことないんじゃないの?


「やっぱ千景すごいなー 車ひかれてそんな元気なん、初めてみたわ」

幼馴染、ちよがケラケラと笑っている。

制服姿だ。

「・・・なんでいるの?」

会いたいとは思っていたけれど、機会がなく会えなかった、友達。

会えたのは嬉しいけれど、もしかして・・・といろいろ考えてしまう。


「ん?んー、昨日は結構いろんな人きとったらしいねんけど、あんた寝てたからさー。うち今日偶然きたら起きたってわけや」

昨日・・・ もしかしてあたし、結構眠ってた?

いろんな人って誰だろう?真夜先輩とか・・・ それは希望だよね・・・

でもちよがきた日に起きたって・・・ それは・・ちょっと運命感じるけど・・・さ


「そうじゃなくて・・・・ なんでちよがあたしに会いに来たのって・・・

 ていうか今日何月何日?」

「うっわ大げさ!何月とか。12月にきまっとるやん!今日は12日やで。

 一晩寝てただけっちゅーことやな」

「え、学校」

昔と全然変わらない。

温かい笑顔も、中性的な外見も、方言も、何も変わっていない。

それだけで、元気になれる気がする。


「終わったわ。期末初日やったから、部活ないしな」

窓の方へ歩いていくちよ。それを目で追う。

「・・・明日も期末あるんじゃ」

「あるで?」

そっけない返事。

やっぱちよはちよだなあ。


「勉強しなくていいの」

「めんどいやんー!やりたないー」

「あたしのために?」

「えー?何ゆーてるん!うちが勉強嫌いなだけやし!」

そういうって、ほとんどわかってたよ。

何年たっても友達って変わらないものなんだなあ・・・・。


ちよもそう、思ってくれてたら嬉しいな。

いつか会いに行こうって、思ってた。

クリスマスとか・・・・なんてちょっと思ってた。


ていうかクリスマス前に怪我するとか不運すぎ・・・。

なんだろう、うかれすぎてたのかなー。

真夜先輩のこととか、雨宮せん・・・・

・・・・・真夜先輩の気持ちを・・・・理解しなかった・・・雨宮先輩の・・・・

・・・・・・ことを


「何くらい顔してんの?」


っ!

・・・そう・・・だよね

過去のこと考えたって前には進めないよね

あたしが真夜先輩を支えられればそれでいいんじゃん

人を恨んだりとか・・・する必要ないんじゃん


「ありがとう、ちよ」

「ん?何が?」

「なんでもない」

満面の笑みを、千景はうかべた。

ちよはすこし不思議に思ったが、とくに気にしなかった。


人を嫌いになったら

少しずつ自分も嫌いになっていく


人を恨んだら

その分自分もだれかに恨まれる


人を傷つけたら

すべて自分にもどってくる


前にすすみたいのなら 今を大切にするべきであって

後ろを振り返る必要なんてどこにもないし

むしろ後ろを振り返るのは 自分を弱さを認めることだから


あたしは 真夜先輩には 前にすすんでほしい

あたし自身もきっと 前にすすみたい

だから だから もっと楽に生きてみたい


そのために必要なのは 友達なんだよね

会いに来てくれて とってもうれしいよ ちよ


ありがとう ちよ


「ねえ、また・・・ 遊んだりしようよ。昔みたいにさ」

「もちろん」


隔たりもなにも 存在しないからこそ


「不思議・・・じゃない?何で住んでるところは近いのに、学校違うってだけで会わなかったんだろうって、すごく思うんだけど」

「うちもちょっと思ってたわー 

 まあ、他校の子と仲良いですってのは自慢になってええんちゃうかな?」

「そうだよねー」


友情が絆へと変わり あたしたちをむすぶ


「文化祭で会えるかもって思ったけど、いなかったよね?この間」

「学園祭っていおうやー もしくは刃流祭

 ・・・千景が来てることには気付いとったねん

 ・・・声かけれんかったけど。 ごめんな」

「えっ 何で謝るの・・・

 ・・・・ ちよ何してたの?出し物とか」

「あー 運動部やからとくに発表とかはなかってんけど、クラスの出し物ちゃんとでとったで?もしかしたら、うちがおらん時間帯にきたんとちゃう?」

「あ、そうかも」


会えるかもって、二年生のところは全部まわったつもりだったから。

・・・・クラスも部活もしらないから。

小学生のころはあたしソフトやってて、ちよは確か、ハンドメイドだっけ?

家庭的な女の子だもん、こうみえて。

あ、習い事で新体操やってたっけ。


楽しく話した。

しばらくして、あたしが看護師に呼ばれたため、ちよは帰ることとなった。

また来るわと、かるく手をふって、でていく。

ちよの制服、刃流の制服 似合ってた。

何でも似合う子なんだけど、他校の制服って違和感あったり可愛いって思ったりするけど

ちよのを見てちょっとイメージかわったかな。


あ、そうだ・・・

昨日きてくれた人・・・ってわからないけど、もしまたきてくれたら、きちんとお礼しなきゃだよね。

心配かけちゃってるのも悪いし。だってこんな元気だもん。


検査が終わってすぐ、ちよが見ていた窓をながめる。

さすがに歩けないので近くからは見れなかったが、夕焼けで赤く染った空ならベッドからも見える。

美しい、空だった。

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