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11-7, 乙時雨の日曜日 前

「え?クリスマス?」

歌波も誘ってみた。

彼女はこまったような顔をして、しばらく考え込んでいた。


「私はいけるかもしれないし・・いけないかもしれないかなあ」

なんて曖昧な返事をされる。

歌波にしては珍しい。


吹部は日曜が休みということで、二人でぶらぶらしている。

歌波の私服が可愛いすぎて、私・・・って感じだけどまあ、気にしない。


「あれっ、刃流って期末があるんじゃなかったっけ?」

「え?あれっ?そっか、12月だっけ?

 ・・・この間実テっていってたんだけどなー」

「大変だよねー」


じゃあしぐれとか、しばらく遊ばないほうがいいのかな?

冬休みはじまるまできっと勉強するだろうし。

しぐれもうららんみたく頭良かったらどうしよう?


「何ニヨニヨしてるのー?」

・・顔にでていたらしい。

歌波がくすくすと笑う。


「あー、そーだ!ちょっと雑貨屋いかない?」

え、いいけど、と怪訝な表情な歌波。


クリスマスの交換用、結局買えてないんだった。

気持ちがこもってれば・・みたいなことを教えられたけど

やっぱちょっとわかんないし。


「気持ちっていったら、マフラーあんだりとか、クッキーやいたりとか、でもいいんじゃない?」

手作り?

あー、手作りだよね 気持ちって。

でも裁縫とか料理とかそんないかにも女の子って感じのことほとんどやったことないし。

歌波はもう外見からしてそういうの得意そうだけど。


「まあ、雑貨っていうのはいい考えだよね~」

なんて笑顔で言いながら、商店街の方へ二人は向かう。


十二月、そろそろ息も白い。

去年は外で遊びまくって風邪ひいたんだよなーと空桜は考えながら、前開きの上着をしめる。

寒さには強いつもりなんだけど。


一人で苦笑しているとなりで、歌波はマフラーを巻きなおす。

可愛いなーと再びニヨニヨ。

それに気付いた歌波がぷっと吹き出す。

笑顔でごまかす空桜。


ふと、歌波の視線が斜め前へ向けられてとまった。

空桜でも知ってる、高級ブランド店。

そこから出てきた一人の少年。


「刃流の隣のとこの制服だよねー 知り合い?」

ずっと見つめている歌波に問う。

我に返る歌波。

「あ、いや、いとこ」

焦っている。

顔がかすかに赤い。

あー、好きなんだ・・と直感する空桜。


確かに、結構いい感じかもだけど。

「あっ、空桜ちゃん、あの男子校、初浦っていうんだけど知ってた?!」

空桜がその少年を遠目で眺めているところを、歌波が妨害する。

「きいたことある~!」今度は空桜が微笑む。


やっぱ可愛いもんなー歌波。好きな人くらいいるよねー、うん。

最近いろいろありすぎてそういうこと鈍感になってきてるなー私。

まあ、そんな1,2か月で人好きになったりするほどさみしい女じゃないけどさあ。


赤面する歌波をみていると、

「いつでも相談のるよ!」「応援してるよ!」と、いいそうになる。

それを避けるため空桜は黙っていた。


そのせいか、雑貨屋につくまで沈黙が流れ続けた。


毎日のように通う商店街の片隅にある、和やかな雰囲気のお店。

空桜は暇をつぶしに何度かきたことがある程度だったが、歌波は常連だったらしい。

店の人は歌波の名前を覚えていて、挨拶をかわしたあとこちらに微笑みかけた。

かるく一礼し、店の奥へと入る。


商品はどれも可愛く使いやすそうで、なおかつ安価なので空桜や歌波の好みに合っている。

だが、やはり麗やしぐれのことはわからない。

似合いそうで似合わなそうで、なかなか決められず歌波に意見をもとめようと思ったのだが、

考えてみると歌波が二人のことを詳しくしっているはずがなかったので、あきらめる。


すると、先ほどカウンターにいた店員が話しかけてきた。

事情を説明すると、店員はかわいらしい笑みをうかべ、

「おそろいの文具とか・・どうかな?」と、いくつかもってきてくれた。

可愛いーと、歌波もはしゃいでいる。


「文具・・・いいかも。やっぱ実用品っていっても、よく使うのって文具だよね」

と、気まずいながらも歌波に話しかけると、

「ねえ見てみて!これ、星座がかいてあるっ!よくない?可愛くなあい?」

歌波は至って普通にハイテンションだった。


普通、というのは 買い物をするときの歌波はいつもこんな感じ ということである。

普段はおひとやかなのに、こういうときはかなりはじけている。

逆に空桜は、真剣にえらびすぎ、スタティックになる。


「空桜ちゃん何座?」

「あ、かに座」

「かに・・・あった~!キャンサーだよキャンサーッ」

ついていけない・・・。

楽しいは楽しいけれど、よくもまあ、そこまではっちゃけられるよねぇ、歌波・・。

普段とのギャップがうけるかも。


お揃い、色違い・・・いいかも。

星座も可愛くていい。

でも・・・あたし、うららんたちの誕生日とか、知らないし・・・。

何で知らないんだろうと疑問に思うくらい、仲良いつもりなのに。


「きいてみたら?」

え?

「メアドとか知ってたら今きけるし~」

あ、そっか。

うららんのはきいたことないけど、しぐれなら。


携帯を取り出す。

「さりげなくだよ!」

とりあえず、誕生日いつだっけ~?とかでいいよね。

いろいろと頭の中で自問自答しながら、送信した。

「何かいろいろ考えてたでしょ?」

あ、ばれてる・・・。


返信を待っている間、歌波としばらく話した。

歌波が天秤座ということで、それも手に取ってみる。

可愛いよね~と、やはりうるさい歌波。


しばらくして、着信音がなった。

しぐれ今何してるんだろう、などといったことを考えながらひらくと、

─明日!

本文は一語だけだった。


唖然として、一瞬二人で凍る。

「あ、ああ明日アアア?!」と叫んだのは、数秒たってからだった。


「どどどどうしよう?!全然知らなかったし・・・プレゼントとかどうしよう~?!」

あわてる空桜。直接的にはあまり関係のない歌波も、一緒にあたふたしている。


「う、うん とりあえず何かてて適当に買って・・・ね!」

「そうだよねいきなりだもんね?!」

何故歌波まであわてているのかという疑問は出てこず、ただ何を贈るか迷うのみだった。


しばらく店員も合わせた三人で選び、そして無事買い終えるときができたときは

ほとんど何もしていない空桜にも達成感があった。

だが、それに気をとられてクリスマス用の買い物を忘れてしまった。

ひきかえそうとも思ったのだが、歌波の提案で違う店を探すことにした。今度は文具屋を。


商店街から広い道にでる。

少し歩けばショッピングセンターがある。

文具屋はそこか、もしくは学校の近く。

どちらへいくか相談していると、一台の車が二人のそばにとまった。


二人が驚いて後退りすると、後部座席の窓が開いた。

「乗りますか?!峰岡さんが!!」

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