11-5, 麗と紗優の金曜日
廊下を歩いていると、進路指導の先生にとめられた。
「雨宮さん・・・いつになったら志望校調査だすの?」
眉間にしわをよせ、せまってくる。
「いきたい高校、ないの?ほら・・・刃流とか、すぐ近くにあるけど。」
「ないです」
事実。
乙時雨は刃流と違って、高校がない。
そのため三年生は受験勉強に励んでいる真っ只中であった。
ため息をつく先生。
「あのね、みんなもう願書とかかいてるの。どうするつもり・・?」
「どうするといわれましても」
本当、どうしようもない。
高校なんて自分のなかでは みんながいくからいかなきゃってだけだし
とくに目指したいものもないし。
「・・・あなた頭良いんだから、どこでもいけると思うけど・・
・・・この地域の進学校っていったら
華音とか、神代とか・・・ どう?」
「じゃあそれでいいです」
「ちょ・・・っと、ちゃんと自分の意思で決めなさいよ。
もう・・・ 昨日、二年生の子が先輩を留学させてください!なんてきたのよねぇ 先輩おもいよね。」
え?二年生?
「春日崎さん知ってるでしょ?あなたみたいに毎回五教科満点、とまではいかないけれど
英語がいつもすごいの。最近知ったんだけど、母国語だったらしいのよね~」
・・はあ
それは初耳・・・・ え?あれ?
「・・・興味ないか」
再びため息をつき、あきれた、とでも言いたげに
その場を去ろうとした。
・・・きいたことがあった気がする
よく思い出せないけれど ・・・・
呼び止めようとして、やめた。
呼んだところでききたいこともないし
春日崎さんとこれ以上関われる気もしない。
そして何よりあの人のことを気にしていると
なんだか嫌なことまで思い出してしまいそうで、こわい。
興味ないってことに・・しておきますか。
「先輩」
不意に声がした。
「あ、紗優さん」
「・・・あのぅ、普通に紗優ってよんでください
なんか・・堅苦しいっていうか・・・ 見下ろされてる・・っていうか・・・」
「・・すいません」
前から思っていたけれど、紗優って妙に正直。
真っ直ぐなのはいいことだけど。
「さっき華音って・・いってましたよね」
ええっと・・・
「それ、お姉ちゃんの志望校だったんです」
・・はあ
本当に、耳がいたいことばかり。
間接的にせめられてる。
だから今はそういう系の話、ききたくない。
「先輩は頭良いから、いけると思います。
でも・・・ 少しだけ下だけど、刃流の方が良いんじゃないですか?」
刃流?
「なんか、学祭とか参加してて・・・ なんか・・似合うっていうか輝けそうっていうか・・
あ、あくまで個人的な意見です」
「ありがとうございます」
予想外、麗の笑顔に紗優は驚く。
そして赤面する。
刃流ね。
そう、ですよね・・・。
深く考えすぎず 目の前にあるところへいくのが一番はやい・・・
春日崎さんには きっと夢があるんだと思う。
考えたくはないけど きっと彼女なりに頑張ってる。
ならば自分だって
自分なりに努力してみれば・・・ 何かが見えるかもしれない。
・・・刃流か。
しばらく無言で廊下を歩いていた。
窓の外を見る。
冬の風景。
冬が過ぎたら 春がくるんですね・・・。
白い空に微笑んだ。