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10-2, 歴史の本

「何で驚くんですか?私、図書委員なので・・・」

机の上に、大量の本をおく。

歴史に関する本ばかりだった。


「な、なんかお邪魔しちゃいましたか?すいません」

急に消極的になる園部歌波。

どこかわざとらしかった。


「あ、いえお気になさらず」

「はい」

歌波の様子がおかしいことに、麗は気付いていた。

紗優も不思議そうにみつめている。


「それでこれ、何なんですか?」

「委員長からです」


図書委員の委員長?

紗優は考える。


・・・春日崎先輩?


「いまどきこういう本読んでるの会長くらいしかいないからって、いってましたけど・・」

机の端においてあった日本史の本に目をやる歌波。


「あと、謝罪とも」


麗の表情を、歌波は確認しない。

対する紗優は、麗に微笑みかけていた。


麗は──










廊下を歩いていた。


「マヤ」

唐突に 英語科の先生に呼び止められる。


振り向くと彼女は満面の笑みをうかべていた。

どうやら刃流祭の件ではないらしい。


「第一志望、英語面接が必要だっていってたわよね?」

「はい」

なんだ、そんなことか。


「練習とか、した方が良いわよね? 来週あたりの放課後にどうかしら」

「助かります。私はいつでも構いません」

「わかった。 マヤはいつでも礼儀正しいわね!」

・・・・。


礼儀正しい、お世辞でもそうでなくとも

私にとってそれは、いわれて嬉しい言葉ではない。

自分の辞書には、当然 と記されているのだから。


「マヤだったら内申書、なんでもかけるから、担任の先生もきっと楽ね!

 でも、みんなにやさしくね。」


笑顔のまま、彼女は去っていった。


みんなにやさしく?

・・・やはりやさしさを演じるのは難しかった・・・のか

それとも演じているからこそ やさしくないのか・・・


やっぱり・・・ やさしくないんだ私って


別に・・・・

やさしくないって・・・・ 嬉しい気もするけど


不適な笑みがこぼれた。








「じゃあ私、失礼しますねぇ・・・」

深く一礼して、歌波は再び扉をあける。


紗優が呼び止めようとする。

だが、とくにはなしたいことがあったわけではない。

気付いたときにはもう、歌波の姿はなかった。


そんな歌波を、麗はじっとみつめていた。

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