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9-14, 刃流祭エピローグ

吹部の発表は無事行われた。

「本日はお忙しい中ありがとうございました」

と、立雲に続いて礼をするしぐれの姿は

とても初々しく、見ていて楽しかった。


始まる直前、観客席で空桜と麗たちは合流した。

事情を説明している間に、真夜はどこかへ姿を消していたのだが。


千景と紗優と、麗と空桜と、偶然近くにいた八代と。

表情の硬いしぐれや楽しそうな立雲を見て、くすくすと笑い合った。


後ろの方で、啓と渉も楽しんでいた。

空桜たちがようやく彼らの存在に気付いたのは、しぐれが最後に 舞台から手をふったときだった。


やわらかくなった麗の表情をみて、啓も渉も幸せそうだった。


しばらくすると彼らはもうすでに帰っていた。

舞台からおりてくる立雲にしぐれ。


八代のほうへ駆ける立雲をみて、紗優はかつてのことを思い出し、憫笑する。

きっと二人とも、あたしのこと、覚えてないよね・・・

そう考えていると、不意に立雲がこちらに微笑みかけてきて、あせる。

それをさらに笑われ、赤面する。


しぐれのほうも、麗や空桜と、楽しそうに話していた。

麗に啓のことをきき、冷たくかえされるしぐれ。

「うららんはお兄さんのことあんまり好きじゃないんだよね」

「何でー?いい人じゃん!」

笑顔の空桜に対して、しぐれは真顔。


「のんびりまわってから 帰りましょうか」

話題を逸らしたことに対するツッコミもなく、三人は歩き出した。


立雲と八代もあとを追う。

「あの二人はいいの?」

よく理解していないしぐれが問う。

「仲良くなってみたいから二人でまわるって。どういうことだろう・・?」

「青春だあ!」

空桜と麗が顔を見合す。そして微笑む。


真面目そうにみえて不真面目で

どことなくミステリアスな彼女は

人をやさしくする。


思いつきで行動してしまうくらい

純粋で誰よりもやさしく正直な彼女は

人を明るくする。


思考や言動が多少幼稚だからこそ

そこにいるだけで雰囲気を明るくする彼女は

人を笑顔にする。


失ってから気付いても

時間は戻らないけれど


経験も成長も きっと伴ってくれる。


失った悲しみは

いまある喜びで打ち消せばいい。


いまを思いっきり楽しめばいい。


そのために友達がいる。

個性豊かな友達がいる。


友達がいるからこそ 自分でいられる。


「うららん笑ってると可愛いよね。いつでも可愛いか」

率直な気持ちも、伝えられる。


「うん!空桜もかわいーよーお」

笑顔があふれる。

「そんなことないよ!しぐれのほうが可愛いって」

かすかに赤面している麗、楽しげな二人。

そしていつものことながら、仲のよすぎるカップル。


「まわりみんな可愛い女の子たちばっかだから、八代ちょっと意識しちゃったりとかする?」

「しない」

「本当に?」

「なんでするの?」

「あ、ちょっとみんなにひどい」


会話も、いつも通り。 

ほんの一時ながらも、平穏が戻った気がした。







──屋上


休憩する人々でにぎわう屋上の片隅に、まどかを見つけた。


声をかけようと一瞬思ったものの、戸惑ってしまった。

その結果、相手がさきに気付いた。


「春日崎さん・・・ 珍しい来客だこと」

「私にとっても意外だけど?」

表情の硬いまどかを、悲しげに見つめる真夜。


「・・・何か用かしら」

いつもと雰囲気の違う真夜を見て、まどかは怪訝な顔をみせる。

それに感づいた真夜、あわてて普段の口調に戻す。

「ううん~ 偶然ここにきただけ~

 まあ、ちょうどいいわ・・・ さっきのはなし、なかったことにして?

 じゃあ、それだけ」

「ちょっ 待ちなさいよ」

理解しきれず、立ち去ろうとする真夜をとめた。


「まったくあなたって人は どこまでが本心なのかわからないわね・・・

 詳しい話はあえてきかないでおいてあげるけれど。

 でもまあ、今度会うときは敵同士よ」


真夜はふりむかない。きいてはいるが、歩き続けている。

どんな表情でいるのか、まどかからは見えない。

けれどまどかは、微笑み、続けた。


「次の定期試験は私が勝つから」


結局、姿が見えなくなるまで ふりむくことはなかった。

けれど彼女はきちんと 笑っていた。

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