9-12, 新しい味方
「何が目的なんですか?春日崎さん」
しずかに、無表情で。
「目的?うーん 退屈しのぎ?みたいな?」
対する真夜は笑顔である。
「ですよね」
「わかってたと?でも硝子わっちゃったのは峰岡ちゃんだよ?
私にとっても予想外だったものぉ~」
隣で微笑する峰岡。
麗は目をあわさぬよう、ひそかに努力している。
「あなたはもしものときのことを考えて できなかった」
その眼光は鋭かった。
一瞬沈黙したのち、真夜は不適な笑みを浮かべた。
「へぇ・・・」 が、目は笑っていない。
峰岡も一瞬凍った。
冷や汗をたらしながら、真夜の顔をのぞきこむ。
そして、体をふるわせた。
「やっぱ頭はいいのね。
けれど、ちょっと違う。
やろうと思えばできたわ。
内申を気にしてるとでも思ったの? 関係ないわねぇそんなの」
「内申というより 自身の株ですよね先輩?」
不意に声がした。
峰岡が知っていた。
彼女のクラスメイトのひとり、
「紗優・・・さん?」
「なんだかわかった気がするんです・・・
自分間違ってたんだと思うんです・・・
春日崎先輩って最低な人ですね」
驚いていたのは一瞬だけだった。
「雨宮さん疑った次は私ですか~?」
わざとらしく笑ってみせる。
が、紗優は真夜をにらみつづける。
「悪かったって思ってますよ
だからこそわかるんです、あなたは最低です」
麗と峰岡の表情はいまにも崩れそうだった。
二人とも頑張ってたもっている。
「紗優さん、あの」
「てゆーか、峰岡さんって楽器上手いらしいし、もっと良い人だと思ってたけど・・・
ま、ろくにはなしたことないからわかんなかったけど
・・・・もうやめにしませんか?先輩
傷つく人がふえてそれで嬉しいんですか?
雨宮先輩別に悪くないじゃないんですか?
何かされたわけでもないのに、そんな」
「されたわけでもないのに?されたあなたはどうなのよ?」
真夜のほうが、はるかにするどかった。
もともと目つきの悪い真夜が 本気になっていた。
「もう、解決しました。自分で」
紗優も負けていない。
「だまされてるんじゃない、この女に」
「それは」
だが不安になる。
「そういう人だって知ってるじゃない?あなたのお姉さん、ほら」
一瞬目の前が真っ白になった。
「違うっ!!!!ちがうっ・・・・・!ちがう・・・・・・・・違うよ!」
言い返す言葉ならたくさんある。
けれど その言葉が本当に正しいのかどうか
まだあまりよくわからない。
「確かにうらんでたっ・・・ 確かに、雨宮先輩のせいだって思ってた・・・・
でもっでもでもでもでも、そんなことないのっ・・・・
ううん、そうかもしれない。まだ憎いかもしれない。でも、違うの・・・
お姉ちゃんなら・・・こんなこと望まないって思ったのよ!」
何がわかったのだろう。
それがわからない。
考えたくもない。
涙があふれだしそうだった。
まばたきをこらえる。
「紗優さん、自分自身を信じてあげてください・・・・」
・・・え?
「無理しているように見えるんです、どこか・・・
紗優さんは僕と違って」
「違って?」
真夜が反応した。
表情は暗かった。
先ほどまでの余裕はどこにもない。
「あなた・・・ 自分だけ不幸だとか思ってるでしょ?」