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9-9, 笑ってそして始まって

日がさしていた


少し向こうで大勢の人が動き回っているが、そこは平和だった



「気持ちいいよね、芝生とか」

不意に声がした。


振り向くと悲しそうに笑うしぐれがいた。


「あ、れ、準備してなくて良いんですか?」

「別に、いい 何か今軽音が大変だし」



「うららん、何で一人?」


答える気力はなかった。

だが、答える必要はもとからなかった。


こちらに手を振り駆けてくるは、先ほどまで一緒にいた空桜。

しぐれの表情も、少し柔らかくなっていた。


「すいません、場所をかえてしまって」

「いや・・・ あたしこそ、全然わかってなくて・・・本当にごめん」


心なしかしぐれの瞳孔が一瞬、開いていたように見えた。


「もうすぐお昼だね!しぐれも一緒に食べようよ」

「うん」


やはり気のせい・・・だったのだろうか


「うららんどうするー?」

「あまりお腹がすいていないのですが」


「いいじゃん!食べたら吹部なんだし」

「そうですね・・・」


なんとなく、気まずかった。

それはきっと空桜もしぐれも、薄々感づいてはいる。


「あの、しぐ」

「ね! せっかく刃流祭なんだからさっ 楽しもうよ、ね?」


言葉を遮るように、しぐれが顔を明るくして見せた。


「さっきいったところとは別に喫茶あるっぽいし、いこうよ!」

空桜もあわせていた。



深く考えるだけ、無駄なようだ。

どうせ、表に出さぬよう、しているのだから。


きいてもきっと答えない。

だから無理に探ろうとするのは、やめる。 

それがいちばん、いい。


「いきましょうか」

作り笑いだったのかもしれない。

でも、たしかに微笑んでいた。


「うららんは笑ってた方が可愛いーよー」

空桜としぐれもまた、笑顔だった。










「あんたも馬鹿だよね」


少し離れたところで、春日崎真夜は薄笑いを浮かべていた。


「あんなことなったけどそう混乱しなかったね 

 ていうかあの子は勘がよすぎるよ ばれてるもの~」


「何いってるんすか先輩? そんなこと百も承知だったんじゃないんですか」

ドラムスティックを片手で器用に回している少女、 名を峰岡。


「どうかしら~

 でも私はあくまで見てただけだし、責任は負わない」


「本当に悪魔です」


「よくいわれる」


くすくす、くすくすと

真夜はしばらく微笑していた。



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