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1-4, 麗の兄

麗は生徒会室へと向かっていた。

屋上で寛いでいるつもりだったのに。

他にいくところもなく、仕方がなく。


ドアのぶに手をのばし、扉をひくと中に寛いだ青年の姿があった。

麗は一瞬かたまるもすぐに冷静さを取り戻し、

中へはいっていつもはかけていない鍵に手をやった。


そして此方を薄笑いで見上げている青年の向かい側の椅子に座り、

机を両手でたたく。

「何の用ですか」

目をじっとみて尋ねる麗。

青年は憫笑して、

「お前まだ此処にいたんだな? もう半年くらい・・・か?」

と麗にかえした。


麗は一度あきれたような顔をし、そして目を瞑る。

「ここは生徒会室です」

「やりたくてやってんのか?」

まるで、目の前の人物を見たくないかのように目を閉じている麗を真剣にみつめる青年。

「当たり前です」

「そっか」

またも憫笑する。


「それで何故此処へ?今日は授業参観日でもなんでもありません」

目をあけ、麗は感情のない声で言葉を発す。


「お前にあいにきたんだろ?家にも滅多に帰ってきてないってきいたぞ」

「あなたが一人暮らしをやめて(わたる)の元へ帰ればどうですか?そんな職場遠くないでしょう?」

今度は麗が、青年を真剣に見詰め返す。


「お前・・・ そんなに俺のこと嫌いか?」

「あなたが兄である限りは」

「・・・・・・まぁそうなんだろうな」


青年はひとつため息を漏らし、無表情の麗を哀れんだ瞳にうつす。

麗は表情ひとつかえず、真直ぐ年の離れた兄の姿を見つめている。

瞳が微かに揺らぐ。


ドアにかけられた鍵の方へと目をやる青年。

「何で鍵かけたんだ?」

「此処は女子校ですよ 見つかったら騒がれます」

それをきいて青年はからかうように

「えろいな 麗」

と頬杖をついて微笑する。


麗が少しでも怒りの感情を抱いてくれるかとでも思ってやったのだろうが

とくに反応されず、逆に沈黙が流れた。


(わたる)もお前のこと気にかけてたぞ? 

 電話するたびに  "姉ちゃんまたかえってこないんだけどー" ってね」

「"兄ちゃんもいつになったらかえってくるのさー" とは?」

「・・・・・」

雰囲気をかえようと話を持ちかけようとして負ける兄。


その後の沈黙も、しばらく続いた。


それをうちきったのは、ドアをノックする音だった。

「生徒会長ー?いますか・・・・??」

甲高い声が麗をよんでいる。

麗はハッとなり、青年を睨む。

「隠れてください 今すぐどこかに」


無理やり掃除用具入れの中にはいろうとしている青年を余所目に、麗は鍵をあけた。

ドアをあけたさきにいたのは、二人の少女だった。

一人はもう片方の後ろで震えている。

「真岸辺さんに園部さん・・・」

「話、きかせてください!」


「・・・はい?」

「あたし・・・、会長の味方になりたくて・・・、だって会長何もやってないでしょ?

 だから・・・その・・・教えてほしいの!あたしなにもしらないから・・・

 でも信じたいから!」

麗は必死な彼女を薄笑いで見つめていた。

「ごめんなさい・・・  お引取り願えますか」

「え・・・っ 」


薄笑いを憫笑にかえ、黙ってドアを閉めようとする麗。

「あなたは!!!!それでいいわけ???!いいの?!!!!」

叫ぶ彼女を無視し、

ドアはそのまま閉められた。


「本当にいいのかよ、それで」

ドアの鍵がかかると同時に開く掃除用具入れ。


麗はうつむいていた。

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