9-6, 病みに闇を
売店のそばで、不適な笑みをこぼす人物がいた。
「何がそんなに面白いのよ」
隣の冷静沈着な少女が、顔も合わせずつぶやく。
「わからない?」
腕をくんで壁によりかかる、春日崎真夜。
「わからないわよ、あなたみたいな病んだ人の考えなんて」
それに対してとなり─、新まどかは傍で違う方向を見つめている。
その間無表情。
「ひっどい表現ねぇ?だって、あれおちてるの軽音部のやつなんだろうけどさぁ
あんな軽いので窓ガラス割れるわけないじゃーん。どんだけもろいのってかんじじゃない」
微笑む。
そばで硝子を見つめていた人でも振り向いてしまうような、そんな恐ろしい笑みを、浮かべる。
「なんか外と中の温度差でパリーンっていくことってあるんでしょぅ?夏の冷房とかで!」
「今11月だし、廊下に冷房なんてきいてないわよ」
冷静なる態度をたもっていたまどかだったが、
「あれ、真夜がなんかしたわけ?」
不意にそんな声が耳に入り、衝動的に真夜の方を向いてしまった。
そしてすぐに気が付く。自分の焦りに。
「え~~?そんなこと」
その言葉の続きを、祈るようにまっていた。
誰かのためではない。決して違う。断じて違う。
だが、自分のためかといえばそれも肯定できない。
わからない。
なぜ、
なにゆえに、
私は・・・・・
「私が黒幕ですみたいなこといったら、新さんどんな顔するかなーってのは
すごい気になるんだけどねぇー、
残念ながら違うのよね。これはそう、偶然。偶然よ?私には関係なーいの」
くすくすと笑いながら、そしてどこにも焦点をあわせず、
ただ・・・・。
まるで、地獄か何かを妄想し ・・・・、 目の前にみているかのように。
「それで・・・楽しんでるのね 最低よね」
「だって! 暇でしょう?あなたも。
ただふつうに現実に、日常にひたっているだけじゃつまらないって、そう思わない?あなたはそーいう人でしょ?ねぇ新さん?」
否定 できない。
けれど私は
「だったら!楽しみたいじゃない!そのために人が犠牲になったってね、
私には私の生き方があるんだから関係ないんだよね!最低?別にうざいとか思わないよ?そーいう言葉。むしろ褒め言葉だわ!」
アハハハと、笑いながら話す真夜。
「アニメのみすぎじゃなくて?」
真剣な表情をしてはいるが、冷や汗が たれる。
「アニメなんてみないよ?テレビとかあんなのきどってるだけじゃんつまんない!所詮やらせよ。
さっき私のこと病んでるっていったけど、別に否定しないわ!
普段は優等生を演じて、実は~って・・・中々非日常的で楽しいとおもわない
だって
あなたもそうでしょ?」
私は
私は
確かにすべてがどうでもよくて
だけどまわりからちやほやされて
ちょっといい子ぶってみたくて
だけど私は
「でもねぇ
惑わされてちゃいけないのよ?あくまでここは現実なんだから…
すべてがすべて思い通りになるわけじゃないー?
雨宮麗は実に面白い子だと思う。今まであってきた人の中で最も非現実的!
だから近づいてみたかったのかもね」
何の為に
自分の退屈しのぎのために?
「私」
ここは勇気をだすしか、ない。
勇気なんて言葉は妥当ではないかもしれない。
でも、一言でいうならそうだと・・・・思った。
私は
「私は、別に雨宮麗の味方につくわけじゃないけれど。
でもね、私、あなたの味方にはなれそうにない。協力なんて無理だわ。
少しの間だったけど、とりあえずまぁ一緒にまわってくれてありがとう」
そして、立ち去る。
立ち去れば、すべてが元通りに、なる。
春日崎真夜との関係はもう、これ以上・・・・
「新さんは客観的に見ていたいってことなのね」
・・・・。
「・・・フッ
別に構いませんよ、あなたの力なんて元から必要ない」
表向きの表情、口調に戻した真夜の声はもう、まどかの耳に届いていなかった。