9-3, 刃流祭にて
「あ、渉くんたち」
遠くの方に見つけた知り合い。
隣の八代はみようともしない。
「何みにきたんだろう?遊びに来ただけかな?」
「暇なんだよ」
「そんなもの?」
「あの人基本的に何も考えてないから」
苦笑する立雲。すでに直前練習を終え、合流を済ませている。
対して八代は無表情。
「間違った方向にいってるってか方向性ないし」
真顔でおっしゃいますか──・・・・・
「でも悪い人じゃあないじゃん?」
「教育に悪い大人だよ」
「いやあ・・・・・」
立雲の苦笑いは終わりそうもなく。
*
快晴は続く。
「しぐれちゃん達まだかなー ンフフ」
「ロリコン」
「ロリッ?!いや、確かにしぐれちゃんは可愛いけどな?!
決してそういう・・・・・」
そこでやっと、雨宮啓は周囲の視線に気がついた。
やれやれと肩をすくめるツッコミ役、渉。
何も考えていないわけではなかった。
だが間違った方向にいっているのは事実。
流石に立ち止まって苦笑い。
そしてすぐにまた歩き出した。
「いやあ、でも渉と外出なんて久しぶりで兄ちゃん嬉しいわー」
「そう」
「なんだよーお前は嬉しくないのか?」
「いや・・・なんで刃流なのさ。姉ちゃんは乙時雨でしょ?」
「だから!しぐれちゃんがいるだろ?」
「やっぱロリコン」
くだらない会話。
くだらないけれど それはとっても有意義なものでもあり──・・・
「お、やっぱラブラブだなーあの二人は」
視線の先には立雲と八代。
渉も一応知ってはいるが、スルー。
「そういやりっちゃんも吹部だったな」
「"りっちゃん"はやめよ?」
「いーじゃねーかーまったくお前かたいなぁ」
「兄ちゃんて絶対頭悪いよね? ・・・姉ちゃんと違って」
「なっ・・・ 確かに麗は頭いいよ?!いいけどなぁ?!
俺だってちゃんと・・・・」
「そういうところが」
「なあっ?!」
「・・・・・姉ちゃんもきてると思うよ」
「は?え?刃流祭?」
「うん」
「・・・・・・え ああ、しぐれちゃん」
「それだけじゃないと思う」
それだけじゃ─── ない?
「きっと・・・・・・・
多分だけどさ・・・・・・ 」