9-2, 表裏のはじまり
音楽室──
そこでは最終確認が行われていた。
本来吹部でない人も混じって奏でたそのメロディーは
もうすでに100%をこす美しい音色となっていた。
「おつかれさま。 わざわざ集まってもらっちゃってごめんね、みんな。
でも、覚えてて。
限界に挑戦するのは練習でだけ。 本番は限界よりさらに上を目指すものなの。
緊張なんてしなくていいのよ?ただこれまでにつくってきたものをこそうと思ってやればいいの。
失敗したってかまわない。気持ちが成功すればいいのよ。良い?精一杯、やりましょう」
「はい!!」
文化部とは思えないくらい盛大に
その返事はかえってきた。
部長は笑顔でうなずいた。
しぐれもまた── さわやかな笑みを浮かべていた。
だが心中───・・・・
二人に不安、心配・・・の気持ちがある。
──八代待たせることになっちゃったけど・・・・ 何してるんだろう?
──うららんは空桜ちゃんと一緒にいるから大丈夫なんだろうけど・・・・・
────もしかしたら さっきの・・・・つづきが・・・・・
同じことを考えて、目が合う二人。
その視線だけで・・・ やはり通じていた。
練習は終わった あとは本番前はやくいくだけ・・・・
早く・・・・ なるべくはやく 合流しないと・・・・
二人ともがそう、考えた。
*
雨宮麗はきていないの・・・・かしら
さっきから姿がみあたらないけれど。
私もあの人が気にしているここの子について知りたいからね
きてしまったけれど・・・ ういてないわよね、大丈夫だいじょうぶ。
──と、
「新さんひとりー?」
話しかけてきたその女
うわあ・・・ 私と同じ優等生ぶってるだけの人種の・・・。
苦手なのよね この人。
いわゆる同属嫌悪ってやつ?
「一緒にまわる?」
「え、いいです」
「でも一人なんでしょ?」
「でも」
「わかってるって。雨宮なんでしょ?だいじょーぶー 私らもだしね?」
微笑を浮かべたその女
なんで知ってる・・・? もしかしてこいつも・・・・。
春日崎真夜といったか・・・・ よくわからない人だわ・・・・ねえ。
「私にはわかるのぉー どーせあなたのことだしねぇ?
私とこない理由なんてほかにないじゃない?
ね、きなさいよ?」
・・・・・こいつ
前々からいやなやつだと思ってはいたが・・・ まさかここまで過激だったとは。
思考がもろ人間をこしているじゃないか。
本当に意識された二面性なのか・・?
「春日崎さんは何をしたくて?」
「何って・・・・ そうねぇー 興味?というかあー嫌いだからかな」
それは 私だって嫌いよ。
「あの素っ気無さがむかつくでしょー?まず」
まず・・・?
「それから・・・まあたくさんあるから。もう正直あんたうるさい。
いいから黙ってついてきて。 ね?」
病んでいる・・・・・・。
その表情は小悪魔の笑み。
「妨害でもしにいくんじゃないでしょうね」
「あれ、それ、駄目なの?」
なっ・・・
「いちいち説明させないでほしいなー。
まあでも、安心したらいいんじゃない?
別に直接的に妨害とかするつもりはないのねー」
「なら間接的に・・・」
「うーん・・・ まあ気分次第かな、あは」
無邪気なのにどこか気味が悪くて・・・・・・。
私より点数が高いなんて思えないし・・・ 思いたくもなさすぎる。
「早く」
・・・ならば
とりあえずは様子見といきますか。
面白みがなかったらそのときは こちら側が仕掛ければ良いのだから・・・・
試験結果はともかく
負けるはずはきっと ──ない