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8-1, 人に好かれる人間

人間は 実に不思議な生き物である


例えば 優等生を演じるこの自分


人間は 人の心をみぬけぬ者ばかり


だからみな 騙される


このわたしにたいしてお世辞ともいえないようなほめ言葉をかけてくる同級生や後輩

このわたしをいとも簡単に志望校へと推薦してくれた教師

そのまえに、このわたしにどうでも良いような高校を志望させた両親



実に不思議だ


刃向かえば堕とされる そんな妙な噂を耳にしたときは 半信半疑だったけれど


実に不思議だ


まさか本当にそのようなことがありえたとは


わかっている


その噂が どのようにしてなりたったのかなど、考えなくてもわかる

簡単すぎるトリック

なのにまわりは気付いていない

噂を信じきっている たかが噂なのに


実に不思議だ


噂をしんじているくせに 事実をみぬけていなかったくせに

彼女に近づき笑顔でふるまっていたあの一年生


すれ違いざまに私を怪訝な表情で見、見て見ぬふりをしてくれたあの一年生

あのときはとくに何もかんじなかったけれど


何故そこまでこだわる


最近耳にはいってくる噂は 数ヶ月前とは異なり

あの一年生のことばかりではないか


実に不思議だ


こうもわかるものなのか

こうもかわった人間がいるものなのか


わからない


何故あのような接し方ができるのだろうか


わからない


彼女は一体何を考えているのだろうか


わからない


自分も一人の人間でありながら わからないこと わかること

どちらもたくさんありすぎて

なんだかんだいって わかっているのにわからない


人間は実に不思議で興味深くて 

わたしの感情をくすぐり 


兎に角 楽しいものである。



「あったらっしちゃーん♪」


と、そうこう考えているうちに授業が終わっていたようだ。


「さっきの時間、なんかずっとぼーっとしてたけどどうしたの?」

「うん 考え事してた ちょっとね」

つくり笑いを見せる。

こいつはわたしの友達を名乗る奴。


「そっか 体調でもわるいのかなっておもっちゃったよ」


「まさか」


「うん よかった♪ 」

微笑みながら、彼女は隣の席に視線をやった。


「気になるの?」


「・・・気にならなくはないかな~ 頭いいみたいだったし・・・」


ほとんど毎日、あいている席。

学校にはきちんといるのに 何故か授業にでてこない──

テストはきちんとうけていたのに。

あんな点数をとって。


はあ・・・・・・

信じられない。


「雨宮さんと話してみたい・・・私」


話してみたいって・・・・・ 何故


「だって・・・・ 可愛いじゃん・・・・」


はあ・・・・・・・

ばかばかしい。


「可愛い子と友達になるのが夢だったからねっ だから新ちゃんとも友達なわけで」


わたしはあなたのこと 友達だとおもっていませんよ クラスメイトさん

そういう理由でわたしをえらばないでくださるかしら・・・

結構繊細なの 可愛いなんていわれても嬉しくないです


「新ちゃんは、ある?話した事」


・・・・・・ある

3年前・・・ 入学式の日に

わたしに一番最初に声をかけてくれた人


まさかあんな人になるとはおもっていなかったから

友達になろうなんておもってみたけれど 人気な人って苦手

わたし ひいたもの

あの子のあの姿みて


まあ

きっと彼女は私のこと 覚えてはいないだろうけど


時の流れも残酷よね

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