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6-6, 涙の理由

しぐれの家──────



そこに、珍しい客が来ていた。


広い部屋の真ん中あたりにある、ふかふかのソファー。

そこで優雅に紅茶を注ぐメイド。


そして注がれた紅茶を美味しそうにのんでいるしぐれ。

そんな彼女を、じっとみつめる客。


「あれ?うららん、もしかしてコーヒー派だった?」

「いえ・・・・」

「えっと・・・ 緊張してる?まさか・・っ 大丈夫だよ~美味しいから飲んで飲んで!」

「・・・・・・・」


もぞもぞとしている客、麗。

それを不思議な笑顔でしぐれは見つめながらも、優雅にティータイムを楽しむ。

何故なら彼女は一流のお嬢様だから。


「うららん、うちくるの初めてだっけ?」

「はい・・・」

「もしかしてこういうの苦手?」

「いえ・・・」


赤面しているわけではないのだが、口数が普段より少ない麗。

しぐれも段々と、気にし始める。


「もしかして・・・ しぐ、強引にさそっちゃったかなあ?

 さっき偶然あったから、きてほしいなって思ったんだけど・・・・」

「大丈夫です」

「そうー?うららん顔色悪くない?学校の外にでると調子悪いとか~??」

「まさか」

「え~ ほんと~??」


からかってみても、反応が変わらない麗。


「ねえっ 本当にさぁ・・・ どうかしちゃったの?」

「・・・・・」

一瞬だけ、麗の瞳が揺らいだ。

しぐれはその瞬間を見逃しはしなかった。


「正直にこたえてね?うららん、こういう家は苦手なのね?」

「・・・・・ ・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・  ・・・・・・・すいません・・・」

「だよねぇ・・・・ やっぱり」


「・・・・・・・・・・・・・」


沈黙が流れる。


「・・・・・あれっ?うららん家ってお金持ちじゃなかったっけ?」

しぐれがふと、きりだした。


きょとんとする麗。


「確かに・・・、そうよべたのかもしれません・・・ でもそれは昔の話ですよ」

「昔?」


「弟が生まれて間も無く、両親が事故で他界したことは知ってますよね?」

「あっ・・・ そっか・・・・ ごめん・・・」


「いえ・・・ そこで、僕の8歳上の・・・ 当時13歳だったでしょうか・・・?

 兄が弟の面倒をみてたんですけど・・・」

「それぞれ成長したあと別々になった」

「はい」


「そっか・・・・ 両親のお金をそれぞれの生活費にってことなんだ・・・

 ごめんね・・・ 見せ付けるようなことしちゃって・・・ 本当にごめんっっ!

 しぐ・・ うららんのことまだまだ全然しらなかったんだなって思うと、本当くやしいっ・・・・」


「気にしないでください、 しぐれは悪くないですよ・・・?僕も・・・ なれたいとおもってますから」


うららん・・・・・ 本当に自分はなにもしらなかった

うららんの気持ちなんて全然考えていなかった・・・・・・・・っ

慣れる? なにに? しぐの環境になれたら、両親おもいだすでしょ?

やめてっ・・・・ 悪いのはしぐなの・・・・ やめてっ もうそれ以上・・・・・っ


「つくづく思いますよ  

 自分は本当に不幸な人間なんだと」


「そんなことないっ!!!!」


思わず叫んでしまうしぐれ、麗は目をまるくする。


「確かに!!うららんの周り、色んな人が不幸なことになってる!!でもっ・・・でも

 うららんは不幸なんかじゃないっ!!! 」


今にも泣き出しそうな表情で、しぐれは大きく息をすいこんだ。


「うららんはどうおもってるのかしらない!しらないけど・・・ いまここにしぐがいるじゃないっ!

 空桜ちゃんだっているんだよ!しぐたちはうららんのこと友達だっておもってるんだよ!!!

 あきらめてちゃ前になんか進めないよ! 何も見えてこないっ!!!


 前に進めばっ・・・・ 今まで見えなかったこともきっとみえてくるっ!!

 自分を信じないで・・・ ほかにだれをしんじるの? だれの力をかりて生きていくの?

 ひとりじゃ人は生きていけないんだよっ 誰かに愛されてるからこそここにいきていられるんだよっ??!」


ハァ ハァ ・・・・・


唖然とする麗。

かすかにふるえている。


「しぐたちはうららんのことずっと支えたいって思ってる

 そしてずっとうららんに支えてほしいって思ってる


 だから 涙、ふいてよ」


はっとする麗。

本人も、気付いていなかったようだ。


涙が流れでていたことに。


うららんきっと・・・・

さみしかったんだよね

いつもつよがってばかりいて・・・・

誰にも素顔をみせないようにしてる・・・・・


でも本当は・・・・・

本当はさみしかったんだよね・・・・・


周りの人がどんどん消えていく

そして自分は悪者扱い

無理もないことだが うけいれられない


夢を・・・・

夢をみていたはずなんだ


何か希望が・・・・ あったはずなんだ


かなえてあげたい・・・・・・

まず、まず自分が・・・・・・・ 支えてあげなきゃっ・・・・!


しぐれは強く、心にちかった。

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