1-2, かつての自分
彼女が廊下を歩くと、 周りは皆、恐れて教室へと逃げ込んでいく。
ほら、一人をのぞいては。
「うららーんっ!交流試合おわったよおおおお!」
バタバタとかけてくるのは、しぐれ。
はぁはぁと息をきらし、目を大きくして麗を見上げる。
20cmの身長差。
「おつかれさまです」
微笑む麗。
「それでねっ!!!刃流がかったんだよっ!!」
「そうですか おめでとう御座います」
それをきいて、しぐれは首をかしげた。
「うららんは、どっちを応援してたの?」
控えめにいうしぐれに、麗はにこっと笑いかけた。
「・・・・?」
きょとん、としているしぐれのほどれかけた制服のリボンを、
麗は無言で結びなおした。 薄い・・・・ 笑みをうかべながら。
しぐれにはそれが気味悪かったらしい。
「ひっ」と声をあげ、一歩後退り。
そのせいで、逆にほどけてしまった黄色いリボン。
反動で床に落ちたそれを、麗は拾い、しぐれに差し出す。
「どうかしました?」
「ごめん・・・・・・」
しぐれが渡されたリボンを受け取ると、麗は何もいわずに去っていった。
「うららん・・・・・?」
麗はただ一人、歩いていた。
───・・・・
「春田未来がしんだってきいた?」
「え?!あの・・・選挙管理委員長やってた人?」
「そう 自殺したとか・・・ っていう噂なんだけど・・・」
「選挙管理委員ってことは、 ・・・・もしかしてまた生徒会長関係?」
「かも・・・・しれないよね・・・。」
陰からそんなことをきいて、ただ呆然と立ち尽くしていた、半年前。
そんな・・・ かつての自分に見えた。 先ほどの、 しぐれが。
─ポーカーフェイス?
本当は・・・ 違ったんです・・・・ よ・・・。
両方の手の平を前にだすと、彼女は何か・・・ 恐怖を感じた。