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5-2, 麗の弟

その日の放課後もまた、生徒会室へと空桜は出向いた。

ノックをし、返事がきこえたらドアを動かす。


いつものように、よくわからない難しい本をよんでいる麗。

「うららん、テストいったんだよね?」

「は?」

「あ、うん」

何故第一声にそんな疑問を発したのだろう。自分がわからなくなる。


「どうだった?」

「どうって」

いつも以上に無口な麗。どうやら本に集中しているらしい。

「とけた?試験勉強してなかったじゃん」

「どうでしょう」

どうでしょうって・・・・

こういう返事されてしまうと、ノリが悪いのかって思っちゃうよ、ねえ。


「真岸辺さん」

麗が唐突に、空桜の名を口にした。

「だからあ、空桜ってよんでって!」

「・・・」

空桜が訂正をすると黙り込む麗。

これで何度めだろうか。

そんなに下の名でよぶのがいやなの?


「部活の入部届、まだ提出してないんですよね」

「え?あ!忘れてた!そういえばこの前もらったんだったぁ」

今度は、すっと微笑んでくれた。

「え、えっとうららんって帰宅部?」

「そうですね、部活動には参加していません」

麗が本のページをめくりながらかえしてくる。


「じゃあ、あたしも帰宅部にして毎日ここきちゃだめ?」

思いつきで、いってみた。

軽い気持ちで、麗の笑顔を見ようと思って、いってみた。

それだけなんだけど。


バタッ


彼女の手から、厚いその本は落ちた。 

「うららん・・・・?」

空桜がつぶやくと、麗は頬を赤らめる。

・・・・・・え?


「今日はもう・・・ 帰って頂けますか」

・・・・・え?

落としたモノを拾い、彼女はうつむいて言った。

「どうして」

「・・・」

無言なところをみると、あたしのことが嫌いになったとかそういうのじゃない・・

ってことがわかってなんだか安心したけれど

追い返されるなんて、嫌だ。


口実・・・・ いや、口実じゃない・・・

何とか・・・ 何を・・ 何とかするの?

わからない でも


「うららんこそ家にはかえらないの?」

少しでも、話をかえてとどまろうとした空桜の言葉に、

麗は一瞬固まった。

そして、怪訝な目をして此方を向いた。


「親心配しないの?」

「いませんよ」

即答だった。

「いない?」

「数年前に事故で」


え?

・・・・・・うそ

じゃあもしかしてしぐれのいってたお兄さんが・・・

家族を・・・・


でていってください、そんな鋭い目で見つめられる。

でも 負けない!

真実をしる!


「お兄さんとか、渉くんとかは?」

そう問うと、彼女は目を丸くした。

「何故知ってるんですか」

「え・・・お兄さんのことはしぐれにきいたし・・ 渉くんにはこの前会ったから・・」

少し時計のほうに目をやってから、再び麗のほうをむくと

「あ・・・った?」

彼女は死神のような・・・ 強張った表情をしていた。

ポーカーフェイスが台無しすぎるその綺麗な顔。

どうしてそこまで。


「会ったって・・・ いつどこで?」

「え?先々週くらい?に商店街で会ったよ?」

彼女は口に手をあててから、表情をもとにもどした。

普段の・・・ そう "無表情"に

そして彼女は本を投げ捨てあたしを押し退け部屋からでていった。

一瞬の出来事だった。

それを呆然とみつめるしか、空桜にはできなかった。

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