3-5, 部活帰り
ほとんどの部活動はすでに終了していた。
部活帰り、同じ道を歩く女子生徒たちが生徒会長を話題にはなしている。
「生徒会長なんであんな人になっちゃったんだろうね」
「どういうこと?」
「前はあんなに優しくて、人気だったじゃん。例えば、誰かが会長のこと嫌いだっていったら、
みんなその人のこと恨んでたじゃない?それだけ人気だったのに、恐ろしい人になっちゃったねって」
「ああ、それはなんとなくわかるな。 でもどうしてあんな評判よかった人が
あんなことしちゃったんだろうっておもったらさ、元々裏で何かしてたんじゃないのかとか、さ」
「うーん、どうなんだろうね」
そんな会話で、哀しげな表情をみせる者なんてとくにいない。
どうでもいいようにただ、退屈しのぎにはなしている そういった感じであった。
少しはなれた商店街。
「でさぁ、キミの学校の近く、右側に文具店がありますね、っていわれたのよ。
あたってるとおもわない?あの子の占いまじあたるのよー わかる?」
歌波は部活の先輩に、鬱陶しい話をきかされていた。
本来はもっとはやく家にかえって明日返却日の本を読みたかったのだが、
部活がえりに特に親しいわけでもない先輩に不意にワックドナルドに誘われた。
何かおごってあげるからお願い、とまでいわれては断れない。
「あの先輩、学校の近くに文具店があるのは当たり前です」
「えー、そう?じゃあ右側ってのはどうなのよー?」
歌波はため息をつく。
「それはどっちから見たかによるのでは?」
「え!あ!そういうことか!って、それってインチキじゃん!危うくだまされるとこだった!」
無駄にはしゃいでいる先輩。
もうすでに騙されてたじゃん。その言葉をおさえた。
「歌波ちゃんって才能あるよねー。楽器も上手いしさー。」
「そんなことないです。」
よく知らない、ただの先輩にほめられても別にうれしくない。
「今度刃流とコラボするかもって話きいたー?」
それはきいた。
部長と刃流の人が話しているところ、見たから。
「向こうそろそろ文化祭でしょー?いそがしくなーい?」
顔をのりだしてくる先輩。
「そうですね」
歌波は迷惑そうにこたえる。相手は後輩の態度なんて、まったく気にしていない様子。
「しかも人数不足で別の部の子巻き込んじゃうとかさー やばすぎっ。うちには無理だぁ~」
「はい・・・・」
もうしばらくは、続きそうだ。
「未来の妹が飛び降りようとしたって、きいた?」
立雲はぼーっと空を眺めていた。
「興味すらない」
横の八代があくびする。
「また雨宮さん絡みなのかな?っていっても、興味ないんじゃわからないか」
ため息をついて哀しげに言葉を表現する立雲の横顔を、八代は盗み見た。
一瞬、此方を向きかけた立雲と視線がぶつかった。
赤面する立雲。
「私、今日雨宮さんにあって、はなせたの。全然親切な方だった。
でも、悪い噂が広がってるんだもんね。こんなこといえるのは私が他校の生徒だからなんだろうな」
「でも それだけの魅力があるってことじゃないの?」
「へ?」
八代の発言には驚いた。
そんな人をほめるようなこというなんて、珍しい。
私だって、この皮肉屋にまともにほめてもらったこととか滅多にないし。
でも好きなんだよねぇ・・・。本当はやさしいんだって。私は知ってる。
「そうだよね。何かオーラもってるって感じだったかな。
あのね、私彼女と似てるっていわれたことがあるんだけどさ、どうしてだか分からないんだよ」
「その何かのオーラって奴だろ」
即答だった。
「そうなの?」
即答できた理由自体がわからない。内容なんてもっとだ。
「俺にきくな」
「無責任・・・」
そう立雲はつぶやいたが、彼女から哀しげな表情は消えていた。