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3-4, 春田紗優

自分は、あの優秀な春田未来の妹だから・・・・

私だって、優秀にみられてるんだから・・・・

完璧じゃなきゃいけないとか、おもってた。


春田(はるた)紗優(さゆ)

人に好かれもせず、嫌われもせず。

平々凡々でありながらも、苦痛にたえる日々をおくっていた。


でももう無理だった。

姉はもうそばにはいない・・・。

もう、味方なんて・・・ きっと、いないのかもしれない。


このまま孤独に生きるなんて、無理だ。

もう精一杯生きてきたじゃないか。

いい、もういいんだ。


私はもう、死んだって良いのではないか。

ほら、お姉ちゃんのもとへ、いけるんだから。

楽になれるよ・・・。

そう思い、手をかけた屋上のフェンス。

まさか、ただの通りすがりの、はじめてみた顔の子にとめられるなんて・・・

おもってもみなかった。


思えば人生最悪だった。

中ニまで、私は生きてきたけれど・・。

このさき受験も嫌。 だって、支えてくれる人がいない。

目指す場所もない。


そういえば・・・・

生きたくないとか、そういうの思い始めたのは去年の冬だったかな。

好きな人がいると女の子は可愛くなれる、ときいたことはあるけれど

私にとって"好きな人"というのは、ある意味生きがいでもあったのかもしれない。










去年の、バレンタインデー・・・・。


私は彼に告白しようと思っていた。

すぐ近くの男子校に通う、彼に。

この町の女子校、乙時雨/刃流  とその学校。

姉妹校に近い関係にあたっていたため、その間での"恋愛"も少なくはなかった。


できれば人目の少ないところで渡したかったチョコレート。

でも、ストーカーじゃないんだから、通学路なんて知るわけないじゃん。無理。

だから・・・ 思い切って、向こうの校門のそばで、私は彼がくるのをまってた。


運がよかったからなのかどうかは定かではないが、彼は一人で出てきた。

「しっ、椎名君っ!」

赤面していたかな。

私は呼びかけて、何もいえずに頑張ってラッピングした箱を差し出した。

彼は表情一つかえずにそれに視線をやった。

「有難う 気持ちだけ貰うよ」

彼はチョコレートを受け取ってはくれなかった。

このまま去られては・・・・ せっかくここまできた意味がない。


「まって!」勇気をだして、呼び止めた。

無表情のまま、彼は足をとめ振り向く。

「私、その、椎名君のこと、その、、、」

いえない。 難しい。

たった二文字の言葉なのに、どうしてこんなにも難しいのだろうか。

戸惑っていたときだった。


「椎名くん~~~っ♪」

前方から、大勢の女子たちがかけてきた。

もしかして・・・・ ファンクラブ?

彼女等はすぐさま彼を囲むと、次々にチョコをさしだした。

きもい・・・ どうしよう。

私はそれを眺めていた。

彼はやはりチョコを受け取らない。

気持ちだけ、といっては返品する。


やっぱりもてるんだ・・・・。

何故だろう。 なきそうになった。

負けたくない。

彼の笑顔がみたくて・・・・

女子ばっかの学校から抜けたら、こんなまぶしい笑顔があった。

だから生きてこれた、ともいえるんだ。


私は・・・ 負けたくないんだ。

だからといって・・・ できることは何もなくて。

弱気になってしまう。


ふと、向こうの方にショートカットの女子がみえた。

此方、いや彼を見つめている。小さなショルダーバッグをさげて。

あれは、刃流の制服。

あの子も、彼の・・・・?

ついため息をもらしてしまう。


彼女も戸惑ってるみたい。

理由は・・・私と同じ?

嫌なのに、ライバルが多いことは悪いことなのに、何故か安心してしまう。

取り残されているのは私だけじゃない、ということを実感できるんだ。


それなら、もういい。

かえったら、きっと泣こう。

そうしたらすっきりするかもしれない。

私はそうしてあきらめようとした。


でも・・・ やっぱり辛い。

家にかえって・・・ かえって何ができる?

お姉ちゃんに相談・・・ したら単純だっていわれるかな?


夕方、ひとりトボトボと、裏道をあるいていた。

曲がり角をまがろうとしたとき、向こうに彼の姿がみえた。

曲がれない・・・・。 どうしよう。

考えているとふと、そちらのほうから彼の声がした。

「遅いね」

「だって八代・・・・ さっき囲まれてたから」

こたえたのは、女子の声?


驚いてちらっと盗み見してみると、彼とはなしていたのは

先ほどの短髪の彼女だった。

嘘・・・、なんで・・・。

「いたんだ」

「いた。ファンクラブか何かしらないけど、ふりはらってるのみて、興奮してました。

 ほかからみたら、私ストーカーみたいだったのかも。」

ストーカーじゃないの・・・・。


私、震えてた。

彼女だったんだ・・・。

盗み聞きなんて本当はしたくなかったけど、どうしても・・・・。

まさか・・・ だってまさか、彼女がいたなんて・・・・・。

しかもそれがあの子で・・・・。


「でも、ただ見てたわけじゃないよ。ちゃんと用意くらいしてあるんだから」

「用意もせずに呼び出してたんならお前女じゃないだろ」

「はいはい」

彼は平気で皮肉いってるし、彼女の声あきれてた。

どうしてそんなに仲がいいの?


「男子っていいなあ チョコもらえるから」

「何で?」

「だってホワイトデーって、お返しじゃない?好きだからあげる、とかないから」

「欲しいの?」

「どうせ貴方にもらったって、お返しにしかなりませんけど。」

「誰?」

突然目線を変える八代。

「え?」

・・・・・え?

「誰かそこにいる よな」


嘘、きづかれてる?

「ごめんなさい、あの、此処近道で」

震える声で・・ ごまかすと、

「ああ、すいません。」

彼女は道をあけてくれた。


でもごまかせたのは女のほうだけ。

だって彼、私のこと覚えてるだろうから。

そしてなにより、此方を睨んでいた。


睨まれて・・・・

私は、 私は死にたいとおもった。







──・・・、





お姉ちゃんは私のこと、単純だなんていわなかった・・・・。

私のこと支えてくれていた。なのに。

あんなやつに・・・ ころされて・・・・ 許せるわけがないでしょう。

私はあの人をゆるさない。

現乙時雨中生徒会長・・・・・。 ゆるせない。


あの時の彼の、彼女であった子だって、恨んでいないといえば嘘になるけれど。

誰より・・・ 私は。

私はあなたをゆるさない!

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