3-3, 従兄弟のような
乙時雨に転入して、もうはやくも2週間ほどたっている。
そろそろ入る部活を決めたい。
部活の資料などを読みながら、空桜は6時限目終了後、家へと歩いた。
運動場や体育館から、さまざまな声、音がきこえてくる。
どれも楽しそうだけど。
空桜は小さくみえる校舎の音楽室のあたりを眺めていた。
歌波のところにしようかなぁ・・・?
そして資料に視線を戻した。
しばらく歩いていると、後ろから肩をポンと叩かれた。
驚いて振り向くと、小柄なしぐれがいつも以上にニコニコとして此方を見ていた。
「しぐれ」
微笑み返してよんでみると、今度は腕をつかまれた。
「今日部活休みなの」
「へ、へえ」
苦笑いを漏らす空桜。
あいかわらず微笑んでいるしぐれを、よくわからず見つめ返す。
「空桜ちゃんちにいきたい」
次に口を開いたとおもえば、唐突にそんなこと。
「え?」流石に驚いた。
「だめ?」
かよわい小動物のような、そんな真剣な眼差しを向けてくる。
断るに断れない。
「いいけど・・・ なんで、あたしの?」
「ほかみんな、部活があるでしょっ
それに、乙時雨にくれば、もしかしたら・・・っ!!!」
行き成り赤面しだすしぐれ。
よくわからない。誰かにあえる、とかそういうのだろうか?
「制服可愛いよね」
話が続かなさそうだったので、思い切って話題を変えてみた。
「うん!だからずっと着てるよ~」
「ずっと?」
「うん。家にいるときもずっと制服!」
「・・・?」
無表情に応えられ、なんと返せばよいのかわからなくなった。
「うららんも同じだよ!」
え・・・・?
常に制服を着ているってこと?
うららんも同じって・・・。 確かに、会長に私服、なんて想像すらできないけど・・。
それって大丈夫なの?
日曜日に制服で出歩くって、なんか嫌じゃないのかな?
不思議だ・・・・。
「空桜ちゃん好きな人できた~?」
「え?!」
いきなりそんなことをきかれ、焦ってしまう。
しぐれがにやける。
「本当?」
「できてるわけないでしょ!!」
しぐれが此方をじろじろ見てくるが、嘘をついているつもりはない。
こんなはやく、できるはずもないし、
今まで恋らしい恋だってしたことがない。
何をいきなり。そっか、わかった。
「何?しぐれこそ、好きな人いるの?」
恋の相談にでものってほしいんじゃないのかな?
素っ気無くきいたつもりが・・・ ビンゴ。
赤面するしぐれ。
「で、でもねっ。 付き合いたいとかぁ、そんなのはないんだよっ。
友達として好きだなとか、この人いいなとか、そんなのだけなの!」
何をそんなあせっている。
せめたわけでもないのに。
かわいいなあなんて、おもってしまう。
「で、どんな人なの?」
「えっとね、うららんのお兄ちゃん!」
・・・・・え?
会長兄弟いたの? そりゃ、知らなくても不思議ではないけれど・・・・
なんか意外だなっ。そういう家族がいるのって。
「しぐが小学生だったときにー、大学生だったんだよー。
どこぞの従兄弟のお兄ちゃんみたいにやさしくしてくれてねー。だから、好きなんだけどねっ、
恋愛面では考えてないからね!!!」
じゃあもう社会人なのかな?
「乙時雨にくればあえるかもって、その会長の兄さん?」
「うんっ!!最近遊びに来ないんだぁ」
そりゃあ、社会人なんでしょ、忙しいんだよきっと。
いいなあ、従兄弟みたいな優しいお兄ちゃん。
私一人っ子だから、兄弟欲しいっておもってたからなおさら、
友達の兄弟がそうやさしくしてくれるって羨ましいよ。
でもよくわかった。
恋愛面では考えていないけど、という気持ち。
どこかの知り合いのおじちゃんでも、
おいちゃんあそびにきてほしいな~とか、そういうの考えたりすることあるよね。
それと同じ、ってことだ。
どうこうしてる間に、空桜の家についた。
「おじゃましま~すっ」