3-1, 捜索
「ね、もうすぐ刃流は文化祭なんだよねっ!」
「そうなんだ・・・」
朝から元気一杯すぎる空桜は、
登校中にみかけた歌波におはようの挨拶もせず、呼びかけた。
何故か、気まずそうな歌波。
「どうしたの?歌波、元気なくない??」
空桜が歌波の様子を察し、顔を覗き込む。
「いや・・・ 別になんでも。空桜ちゃん元気だね」
「当たり前じゃん!!毎日元気にいかなきゃっ!人生エンジョイエンジョイ!」
体をのりだす空桜に、歌波はそっか、と苦笑した。
それで印象もさがってしまう。
嫌そうな表情をはじめる空桜。
歌波おかしくないか、と考え込む。
そしてさすがは細かいことを気にせない空桜、
まあいっか、と済ませ、またもルンルン気分で歌波をおいて歩いていった。
その後歌波が哀しそうな表情を浮かべていたことを、空桜は知るはずも無かった。
普段は校舎内を放浪している時刻、生徒会長が見当たらない。
やはり詳しく、話をききたい。
そんなおもいが空桜には残っていた。
善は急げ、だ。 何か違うかもしれないが、気にしない。 それが空桜。
しかし、 HRまで、あと15分もない。
仕方がない、走ろう。
校舎中を探し回った。
廊下を走るなと教職員に注意されながらも、空桜は必死に探した。
だが、会長の姿をみつけることはできなかった。勿論、生徒会室にもいない。
どこへ・・・?屋上にもいなかった、だとすると、欠席・・・?
一刻もはやく・・・ あの人に本当のことききたいのに、さ。
あきらめて教室へ戻ろうとしたときだった。
「空桜ちゃん」不意に誰かに呼び止められた。
一瞬ビクッとなり、ふりむく。
心配そうな顔で立っていたのは、歌波だった。
「授業もうすぐだから教室戻ろうっていおうとしたんだけど・・・、どうかしたの?」
「え?!いやっ!なんでもないよ!そうだね、もどろっか!」
「はぁ・・」
歌波は空桜が冷や汗をながしたのを見逃してはいなかった。
「歌波はどこへいってたの?」
歩きながら、歌波に問う。
「え、トイレだけど?」
歌波はきょとんとした顔で応える。
「あ、あ、あそうなんだ」
「やっぱりおかしくない?」
「歌波こそさっ!今朝おかしかったよ!!」
不思議がられては・・・ いけない。
歌波はあたしが会長探してること、絶対反対する。
空桜は話をそらす。
「え?あぁ、ごめん、私朝苦手なの」
「へぇ・・・」
でもなんだか、それで安心した。
せめて、 せめてだけれど、
歌波には嫌われたくない・・。
できれば会長と友達になりたいとかおもってる。
そうだ、会長ってよぶのはやめよう。
もっと、しぐれみたく、なれなれしく。
会長きっと驚く。
うん、驚いてほしい。
普段無表情だとか、薄笑いだとか、そんなばっかりの人って
驚くとどんな表情するのだろうか。
楽しみ、 気になる。
だから、だから今すぐ会いたいよ・・
──キーンコーン カーンコーン
「やばっ!!!いそごっ!!」
鐘の音が響き終わると同時に、二人はかけだした。