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終末の蝶  作者: 五月七日 外
終末の蝶と抗う者たち。
2/4

ランクD

 人類は滅亡した。

 ユイの言葉の意味がよく分からず、ルーの方を見てみるも特に変わった様子もない。後頭部しか見えないのでその表情はよく分からないが、フーも「そーなんだよなー」などと特に何か言及する様子もなかった。

 本当に人類は滅亡したのだろうか?

 だとしたら、今いる自分たちはいったい……?

 いくつも浮かび上がる疑問に頭を悩ましていると、変な顔でもしていたのだろうか。ユイが吹き出していた。


「ま、記憶がないんじゃ無理もないわよね。でも今言ったことは紛れもない事実よ。もう百年以上前になるかしら……さっき倒した怪物──ノヴァが突然、世界に現れたの。七体の神体に七種の獣……たったそれだけで人類はあっという間に殺されていったわ。私のパパもママも、みんなね……」

「でもユイはさっき……」

「あー、アレはタイプC。ノヴァの中でも弱い方なのよ。たぶん、タイプBには私たちが束になっても勝てないし、獣なんてもっての他ね。たぶん……まだ誰も勝てないんじゃないかしら」

「ノヴァは大きさでタイプが分かれてる」

「あと、ベースとなる生物の種類でもな」


 ルーとフーが次いで説明を付け足す。

 ノヴァは、大本体である神体の七体と七種の獣は別として。大きさやベースの数でタイプが区別されている。

 小型のノヴァであればタイプD。先のノヴァのようにサイズは大きくてもベースが一種類であればタイプC。

 複数種のベースであればタイプBとなる。

 タイプAに関してはユイたちも詳しくは知らないようだった。

 未知数の怪物が支配する世界。

 それが、シーの今いる世界だった。

 だが、今の世界は絶望ばかりでは無かったらしい。


「でもね。国内に入れば私たちよりずっと強い人たちがたくさんいるのよ。それこそタイプAとも一人で戦えるような人たちがね」

「そこで大事なのがランク」

「左手に書いてるやつな。お前のランクは分かんないけどさ……。ま、気にすんな」


 これまたルーとフーが説明を付け足す。

 ユイたち三人の左手には『D』の文字。それと数字が並んでいた。

 シーには、左手がない。

 肘辺りから先が何かに喰われたみたいにすっぽりと無くなっているのだ。

 微妙な感覚だけが残り、今でもそこに在る気がするが、ないものは仕方ない……。

 だから、シーのランクはフーが言うように分からなかった。


「私たちは、ノヴァを倒せるように進化した人類なのよ。シーもコフィンで眠っていたでしょ? アレは、ノヴァを倒すための計画の一つで人を進化させる機械。私たちは長い年月をかけてノヴァを倒せるまで進化した……はずなんだけどね。まあ、私たちはその中でも失敗しちゃった方なのよ」

「わたしたちもランク分けされている」

「それこそノヴァのタイプみたいにな」

「そういうこと。で、私たちは最弱のランクDってわけ」


 ユイは軽い調子のままそう言って笑う。

 それにつられてフーもルーも笑っていた。

 シーだけはよく分からずポカンとしていた。まだ三人のノリというやつにはついていけないみたいだ。


「しかも二人一組でようやく戦力になるんだから、話にならないわよねー。ま……そのあたりは追々教えてあげる」


 言って、ユイはピーンとシーの額を指で弾いた。

 なんだか子供扱いされているみたいで癪だったが、見た目ユイたちは14,5才くらい。シーよりも2,3才は年上だろうか。

 子供扱いされても少し仕方なかった。


「さてと」


 何もない砂の上。あるのは大小いくつかの鉄屑のみ。

 そして、一つの鉄屑の前でピタリと三人は止まった。

 何もない砂の上。

 ユイが鉄屑に触れると、それが何かの合図になったのか。

 蠢くように鉄屑がその位置をズラし……地下への道が開けた。


「落ち着いたらシーの新しい手を作るね」

「しゃあねえ。ルーがそう言うなら俺もやるしかねっか」

「ここって……」

「アジト」

「五個あるうちの一つだけどな」


 ぽつり。ルーがシーの疑問に答えた。それにフーが付け足す。

 そこは、ユイたち戦線メンバーのアジト。

 階段を下って着いたのは、地下とは思えないほどの大きなフロア。

 そして、そこにいたのは年端もいかない、色とりどりの髪をした少年少女十数名。中にはシーより幼い者も数人いた。

 彼ら彼女らの共通項は薄暗がりの中でさえ淡く光って見えている左手の文字……『D』。

 そこにいるのは、ユイたちのようにランクDという最弱の烙印を押された子供たちだ。


「我が戦線のアジトへようこそ、シー。今日からここが、あなたの新しい家と家族のみんなよ」



 その日、シーは戦線のメンバーになった。








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