38.顔合わせ
「明後日は予定空いてる?」
青騎士団詰所の団長室。
次回の懇親会の打ち合わせが終わり筆記用具をバックに入れているとヨルンさんが近付いてきた。
仕事の話?
新たなビジネスチャンス?
手帳を取り出して素早くスケジュールを確認する。
明後日は・・ランチの配達以外は何もなし。
「午後遅い時間ならなら大丈夫ですよ。」
ヨルンさんに笑顔で頷きながら仕舞いかけていた筆記用具をまたテーブルに出す。
「仕事の話じゃないんだ。僕とデレクとで白騎士団詰所に行くんだけど、できればユミちゃんにも一緒に来てほしいと思って。今後いろいろと顔を合わせることになるだろうからね。」
あーそゆこと。
討伐遠征から戻って1週間。
デレクさんからボスと各騎士団団長に野営地襲撃の報告をして。
やっぱりそうなるかー。
予想はしてたけど。
魔力量の多い水魔法使いとして騎士団のお仕事増えちゃうよね。
まぁ今のまま自由にお仕事させてもらえるのであれば全然OKですけど。
単純にお仕事の契約が増えるってことだから有り難い話ですもの。
出来る限り協力しようって決めたしね。
あ、ボスって総帥のこと。
三つの騎士団を統括してる軍部の最高責任者。
王弟で白騎士団団長の叔父にあたる人。
かなり切れ者らしいよ。
「わかりました。」
まさか白騎士団団長とまで会うことになるとはね~。
しばらく前のあたし。どーんと来い!なんて思ったことあったっけ。
100%冗談だったんだけどねぇ。
見事に引き寄せちゃったよ。とほほ。
そんなわけで。白騎士団詰所にやってまいりました。
白騎士団は王族や貴族の警護や王城の警備を担っている騎士団。
そんな華やかな仕事柄、所属する騎士さんは見た目も華やかな人が多いんだとか。
青騎士団と黒騎士団もめっちゃイケメン揃いなのにそれ以上って何それ怖い。
パレードとかあると地獄絵図らしいです。女性陣の白熱した場所取り合戦が。
ええ。予想通りのお話ですね。パレードに行く機会があったら遠巻きに見学しようと思います。
白騎士団の詰所は街中と王城の2箇所にあるんだけど今日来ているのは街中の詰所。
一般人がそうそう王城には行けないからね。
普段は団長様が王城の詰所、副団長様が街中の詰所にいるんだけど、今日は顔合わせのために団長様も街中の詰所に来てくれてるんだって。
いつもは王族の警護してる人、しかも王弟の甥&筆頭公爵家という由緒正しきお宅の嫡男様にわざわざご足労いただき大変申し訳ない。
会ったときに心の中でスライディング土下座しとこう。
コンコン。
「青騎士団団長ヨルン・ハイネス、黒騎士団団長デレク・ヒース、水魔術使いユミ・シトーです。」
3人を代表してヨルンさんが名を伝えると中から「どうぞ。」と少年っぽいアルトの声が。
団長さんは20代前半だったはずだから副団長さんかな?
だいぶ若そう。
20歳そこそこくらいかも。
重厚な扉を開けて中に入ると落ち着いたアンティーク調の高級感あふれる応接セットが目に入る。
さすがだわ~。めっちゃ趣味がいい。
キンキラキンの成金っぽさ皆無。
相手は名門の大貴族様だし声がかかるまではおとなしくしといたほうがいいよね。
白騎士団の団長&副団長と挨拶を交わすヨルンさんとデレクさんの後ろに隠れるようにして室内を観察していると。
「ユミ。こちらへ。」
振り返ったデレクさんに優しく背を押され2人の前に出された。
「お初にお目にかかります。ユミ・シ」
「シュト!!」
ガタガタッ!ドンッ!
重いものが倒れた音と。ほぼ同時に抱きしめられた。




