37.やっかいだと思ってたけど
ここ最近の野営地でよく見かける凸凹赤黒コンビ。
はい。ナリスさんとあたしです。
あたしの魔術に対する考え方や使い方に興味があるみたいで少しでも時間ができると来るのよ~。
日本でファンタジー小説読んだりファンタジー映画見たりして知ってたことだから普通のことだと思ってたんだけど。
こちらの世界ではめっちゃ斬新らしい。
芋虫化した日から3日。
完全回復したあたしはすぐさま重傷の騎士さんたちの元へ。
お見舞いという名の休憩にたびたび訪れてくれたデレクさんの話によると。
もう少し容態が安定してから一番近い街に搬送する予定だけど該当の街まで馬車で3日。
馬車の揺れさえ辛い道中なのに途中でまた危険生物に遭遇するかもしれないリスクも高い。
少しでも安全な状態で向かってほしいなと。
そう思って水魔法での回復を試みてみたら。
結果、大成功。
身体の70%は水だから何かできるだろうとは思ってたけど予想以上だった。
砕けてた骨や断裂してた筋肉とか筋がくっついちゃってすっかり元通りに。
リンパとかの循環が良くなって自然治癒力が高まるイメージをしながら魔力を送ってみたんだ。
あ、もちろん事前に魔術の権威であるナリスさんに相談したよ。
人の身体に直接魔力を送るからね。
そしたら今までにも魔術で回復力を上げたりしていたんだとか。
そういう使い方ができる人があまりいないから事例が少ないだけで。
魔術はイメージが大切なんだろうなぁ。
妄想力がめっちゃ大事だと思う。
あくまであたしの見解だけど。
まぁそんなこともあって。魔術の権威であるナリスさんはもう子供みたいに興味津々。
それ以来凸凹赤黒コンビが誕生したってわけ。
まぁでもこれはなんの問題もない。
逆にありがたいことだと思ってる。
タダで魔術の権威から学べる機会なんてそうそうないだろうし。
ただ今回の一連の出来事によって。
いわゆる二つ名とかいうものを頂戴してしまいまして。
それが想像以上にこっ恥ずかしい…!!
だって『水神の乙女』だよ?
アラフォーに乙女ってどんな羞恥プレイなんだっていう(涙)
この世界の神様信仰は日本と似ていて八百万の神々がいるって考え方なのよ。
太陽の神様、土の神様、風の神様、水の神様、火の神様。
小麦の神様、岩の神様、綿の神様などなど。
そういう信仰や考え方からきた二つ名みたいなんだけど。
いやホントに。マジでキツイ。
面と向かって呼ばれるたびに全力疾走でその場から逃げ出したくなるんだけど。必死に耐えてる。
呼ばれるたびにダッシュで逃走してたらまたトンデモナイ二つ名もらっちゃいそうだもん(冷汗)
まぁやったことに関しては後悔は全くないんだけどね。
ターニャさん、あたしに抱きついて泣きながら何度も何度も「ありがとう…!!」って言ってた。
怪我した騎士さんの1人がなんとターニャさんの旦那さんだったの。
粉砕骨折に筋肉断裂。
治っても騎士を続けるどころか歩けるようになるかもわからないって言われてたんですって。
それが前と同じ状態に完全回復。
治せてホントに良かったよ。
魔術士なんて面倒なことに巻き込まれやすくなるしやっかいな力だと思ってたけど。
今は感謝しかないや。
日本にいた頃はなにも出来ない自分に歯がゆい思いをすることもあったからね~。
みんなの笑顔を守れたことが嬉しいし誇らしい。
攻撃魔術は抵抗あるし使いたくないけど。みんなを幸せにできるようなことに使うのは大賛成です。




