31.魔力持ちの平民女性
「衛生班ねぇ。僕は詰所勤務をオススメするけど。」
デレクさんを視線だけでちらりと見やって苦笑するヨルンさん。
下心を察知したようだ。
「まぁ何らかの形で騎士団に関わっておくことには僕も賛成だね。」
そして少し厳しい表情であたしを見た。
「そうですね。俺もそう思います。」
エリスさんも深く頷いている。
魔力持ちの女性は大変モテる。
貴族とかやり手の商人とかの権力者たちに。
魔力持ちな子供が生まれてくる可能性大だからね。
愛とか恋とか関係なくただ子供産ませるためだけの道具としてモテまくるのである。
男性からの遺伝はほとんどないらしいから必然的にそういった被害は女性に集中する。
貴族女性は家に守ってもらえるけど平民女性は後ろ盾もなにもないから鴨がネギ背負ってる状態なわけで。
本人の意思には関係なくお妾さんとか養女にされちゃった例がたくさんあって昔から問題になってるそうなの。
ほんとムカつくわ。
弱い立場の人たちを食い物にする連中って世界共通というか。
どこにでもわいて出てくるよね。
そういう背景があるから平民女性は魔力をもってることがわかっても隠してる。
権力者たちはどこからか情報を仕入れて見つけ出し攫っていく。
国もなかなか取り締まることができない。
っていう悪循環がいまの状況。
いまはとにかく魔力持ちの平民女性を把握しようと動いてて見つかりしだい騎士団で保護しているんだとか。
ネリアさんもお休みの日とか仕事の合間に個人的に探してるって言ってた。
たしかに相手は警戒してるだろうし女性同士のほうが話しやすいもんね。
そして把握&保護された魔力持ち女性は今のとこ全員が騎士団関係で働いているのだ。
有難い話だよね~。
後ろ盾のない魔力持ち平民女性が騎士団に守ってもらえて職も得られる。
女性たちは安心して生活できるようになるし騎士団は人手不足を解消できるしでWin-Win。
あたしもやっぱりそうなる…よねぇ。
開店の見通しもついたしお弁当屋さんやってみたいんだけどダメかしら。
「今まで隠して生活していたのだろう?」
デレクさんの言葉にうなずく。
「亡くなった両親も魔力持ちでした。その2人の血のせいかあたしはかなり魔力量が多いみたいで。なので人里離れた山奥で暮らしていました。」
なんちゃって設定がまた増えてしまった。
覚えていられるだろうか。
「そうだったんだね。もう不安に思わなくて大丈夫だよ。騎士団が君を守るから。もちろん僕もね。」
そう言って微笑むヨルンさんの背後には黒く輝く堕天使の羽。
バレたときが怖ろしすぎる(冷汗)
「そうだよ。もう大丈夫。俺たちを頼って?」
心配そうに眉を寄せるエリスさんの後ろには後光が。
なんちゃって設定なんです。ほんとごめんなさい。
「俺の家に住めばいい。食事を作ってもらえれば家賃はいらない。」
デレクさん。下心がほんのりからだだ漏れになってるよ?
ヨルンさんとエリスさんの視線がめっちゃ冷ややか〜。




