24.青騎士団詰所にて 2
ピーチチチチ。
名前も知らない鳥の可愛らしい鳴き声。
青々と広がる芝生。
その芝生に影を落とす木々。
のどかだわぁ。
ほんとにここ騎士団の詰所?
パタンと背後で扉が閉まる音がしてからしばし。
やわらかな芝生の上を歩いていると公園を散歩してる錯覚におちいってしまう。
人影はまばらだし騎士団の詰所らしき物音が一切ない。
時間的にお昼休憩中なのかしら。
ん?だだっ広い芝生広場(勝手に命名)の向こうに見える建物の入口に人が立ってる。
男性か女性かもわからない距離だけどスカイブルーを身にまとってるってことは騎士団員さんだよね。
あれが受付かな。
よいしょ!と気合を入れてバスケットを反対側の手に持ち直して。ふわふわ芝生の上を再び歩き始める。
あ、バスケットは宿の部屋を出る前にマジックバックに入れて馬車を降りたあと路地裏でこっそり出しました。
乗り合い馬車に大きな荷物を持ち込むと別料金がかかるのよ。
マジックバックのおかげで経費削減。助かります。
「団長たちにランチ持ってきてくれた人?」
えっちらおっちら歩くあたしに気付いた騎士団員さんが走り寄ってきてくれた。
「こんにちは! ユミ・シトーと申します。団長さんと副団長さんにランチをお持ちしました!」
うるさくならない程度に元気よく挨拶してペコリ。
「やぁ。ご苦労様。話は聞いてるよ。重かっただろ?ここからは俺が持つよ。」
この人もいい人~。
青騎士団いい人しかいない説浮上。
門番さんも前に市場であったエリスさんもめっちゃいい人だったし。
きっとここの入団試験すんごい難関なんだろうなぁ。
アイドルなみの人気だからね〜。
身体健全なのはもちろん天狗にならない謙虚な人じゃないと。
この人の少なさってお昼どきだからって理由だけじゃないのかも。
「人が少なくてびっくりしたでしょ? まぁいろいろあってね。どこの騎士団も万年人手不足なんだ。」
斜め前方を歩く騎士さんがそう言って苦笑した。
うわ。やっぱりそうなんだ。
人となりをきっちり見極める入団試験。つまり少数精鋭にならざるをえない。
大変ですよね~。いろいろと。
お察しします。
騎士さんと世間話をしながら歩くこと数分。
「ここだよ。」
団長室に到着したようだ。
「ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げるとアラサーくらいの体育会系爽やか騎士さんがニカッと笑う。
「今度のお休みにお店行くね。お弁当屋さんもオープンが決まったら教えて。」
世間話で職場の話をしたら興味をもってくれたらしい。
ルエンカ料理食べてみたかったんだって。
「はい!お待ちしてますね。」
しっかりちゃっかりお弁当屋さんの宣伝もしました。
スマホみたいなツールがないから口コミめっちゃ大事!
コンコンコン。
「団長、副団長。食事の配達の方がいらっしゃいました。」
持ってくれてたバスケットをあたしに渡しつつ重厚な扉をノックする騎士さんのちょい後ろに控える。
「ありがとう。入ってもらって。」
予想より全然若そうな声。
もしかして30・・いや20代かも。
しかも聞いたことのあるようなないような・・




