13.こういうこともあります
カララン♪
店内に優しく響く木製ベルの素朴な音色。
「いらっしゃいませ~♪」
お客さまを席に案内してテーブルに冷えた麦茶とメニューを置いてにっこり微笑む。
「ご注文はお決まりですか?」
「豚の生姜焼き定食ひとつ。あ、あと単品で卵焼きもつけてくれ。甘いやつね。」
「はい!いつもありがとうございます♪」
厨房にオーダーを伝えて空いた席の片付けをして。
ここは市場にあるルエンカ料理のお店。
そう、私がとんかつと感動の再会をはたしたお店です。
なぜここで働いてるかって?
青騎士団での仕事はどうしたって?
ですよねー。
そう思いますよねー。
実はトンカツ食べた翌日に事件がありまして。
侯爵令嬢だか伯爵令嬢だか忘れちゃったんですけどね。
そのお嬢様がどこからか今回の話を入手したらしく。自分ちの料理人数名(もちろん全員男)をかなり強引にねじ込んできたんですよ。
女の料理人がくることだけは阻止したかったみたいだね~。
お父さんが大臣だかなんだかのお偉いさんで、権力をたてに団長さんの留守中に勝手にささっと全てを終わらせちゃったんだとか。
それら全てあたしが話を聞いた翌日1日の出来事。
その情報網と権力と行動力をもっと世の中の役に立つことに使ったら喜ばれるのにねぇ。
ってか急に何人も料理人いなくなった侯爵家の台所事情は大丈夫なのかしら?
不幸中の幸いなことに真面目に働いてくれる人たちだったから人手不足はなんとか免れたみたいで良かったよ。
街の治安を守ってくれてる騎士さんたちが腹ペコ状態なんて悲しすぎるもん。
それよりなにより。黒い炎を背負ったネリアさんを宥めるほうが大変でした。
そのご令嬢がいまも健やかに暮らしていることを願うばかりです。(遠い目)
まぁそんなことがありまして。青騎士団の就職話はキレイさっぱりなくなったというわけ。
で、ネリアさんがめちゃくちゃ責任感じちゃって条件のいい今の仕事を探してくれたの。
終わりよければすべて良し。
ほんと昔の人っていいこというなぁ。
あたしが異世界来ちゃった件もそうだけど人生って理不尽なことも多々あるじゃない?
でもそのおかげでこうやって素敵な職場で働けることになったりもするわけですよ。
ご縁ってホント不思議だよね~。
青騎士団に近寄らなくてすんで良かったかもって思うし。
騎士さんたちの人気っぷりが想像以上で。
お目当ての騎士さん見つけたお嬢様方は周りを気にせずキャーキャー。
プレゼント攻撃もあちこちで見かけたっけ。
もうあれはね。アイドルですよ。
日本にも漢字ちょっと違うのがいたけど騎士団っていうアイドルグループと言っても過言じゃない。
たしかに皆さん紳士だし顔面偏差値も背も高いしで気持ちはわかるけど。
騒がれてる本人と周りの迷惑を考えないとね~。
彼らは勤務中なわけですよ。
仕事に差し障り出まくりでしょ。
市場であたしの荷物を持ってくれたエリスさん。
完全なる親切心からだと思ってたけど、アイドル人気を知ったいまは逃げる口実に使われたのかなと思っている。
あたしも助かったからWin-Winだったしお役に立てたなら何よりですけどね。




